※本ページ内の情報は2025年6月時点のものです。

1913年の設立以来、100年以上にわたり日本の貿易の円滑化に貢献してきた日本海事検定協会。

日本の貿易検査のパイオニアとして、食の安全検査や石油製品の品質証明、貿易商品のトラブル対応等を長年の歴史の中で培ってきた技術、知識の活用だけでなく最新の化学分析装置を用いて行っている。

あらゆる貿易取引の場面で活躍してきた、一般社団法人 日本海事検定協会。同法人は商社やメーカーが扱う貨物の検査や分析を行い、その結果を証明書として発行することで、国際物流の円滑な流れを実現している。「物流の潤滑油」として、幅広い企業から信頼を獲得している同法人の代表理事会長、石田正明氏に話をうかがった。

海を身近に感じた子ども時代が今の仕事の原点に

ーー現在の仕事に興味を持ったきっかけを教えてください。

石田正明:
きっかけは、幼いころから身近に海があったことです。私の母方の祖父は島根県隠岐の島で漁師を営んでおり、海や船は生活の一部でした。夏になると祖父母のところに帰省し、海と自然を親しむ時間を過ごしていましたね。そうした環境の中で、自分も海に関する仕事がしたいという思いが芽生え、高校時代には外国を行き来する船に乗りたいと考えるようになりました。当時通っていた高校では珍しい進路でしたが、自分の志を貫いて東京商船大学を目指したことが今につながっています。

ーー入職後の歩みについてお聞かせください。

石田正明:
入職後は九州支部に配属され、早朝・深夜・休日を問わず現場を走り回っていました。当時はその仕事の意義について自問自答することもありましたが、今振り返ると、その経験が今日の基礎をつくってくれたと感じています。

その後1992年には、設立間もない欧州事務所(アムステルダム)へ赴任し、欧州へ輸入される自動車の損害検査業務を担当することになりました。さらに2009年にはタイで、鋼材や空調家電の損害検査や積付検査業務などを行いました。こうした海外での経験は、物流における検査の重要性を学んだり、各企業の駐在員との交流を深める貴重な機会となりました。

「証明」を通じて国際物流を円滑にする重要な役割

ーー貴法人の事業内容について詳しく教えてください。

石田正明:
弊法人は「物流の潤滑油」として、物流が円滑に流れるよう各種の検査や分析を行い、証明書を発行しています。事業内容を一言で表すのは難しいのですが、弊法人の商品は紙の「証明書」と言っても良いでしょう。

具体的には、国内外へ輸出入される貨物の検査や品質分析を行い、その結果を証明書として発行します。たとえば、海外から輸入される玩具に有害物質が含まれていないかの検査や、石油タンカーに積まれた原油の量や品質の確認なども私たちの業務です。さまざまな検査や分析を通じて、あらゆる商社やメーカーの海外貿易に携わる皆様の物流を支える重要な役割を担っています。

ーー貴法人が長年にわたって支持されている理由は何だとお考えですか?

石田正明:
何よりも「公正中立な第三者証明機関」としての立場を守り続けてきたことが大きいと思います。100年以上の歴史の中で培った信頼というブランドは、私たちの最大の財産です。

検査や証明書発行という仕事は、少しでも誤りがあれば貿易取引全体に影響を及ぼしかねません。そのため弊法人では教育に力を入れ、高い倫理観と専門技術を持った人材を育成してきました。こうした姿勢があったからこそ、長きにわたり信用と信頼を獲得し続けることができたのだと考えています。

部門を超えた連携と新規事業開発で組織の未来を描く

ーーどのような人材を求めていますか?

石田正明:
弊法人では、元気で明るく、やる気のある人材を求めています。専門的な知識やスキルは入社後の研修で十分身につけられますので、何事にも積極的に取り組む姿勢や、チームの一員として協調できる人柄を重視しています。温かい家族的な雰囲気の中で、自分を成長させながら長く働きたいという方にはぴったりの職場だといえるでしょう。

ーー今後の展望をお聞かせください。

石田正明:
私が最も恐れているのは、少子高齢化が進み、近い将来「仕事の需要はあるのに人材を配置できない」という状況になることです。こうした状況を回避するために、採用活動と並行して、社内において部門の垣根を越えた協力体制の構築に取り組んでいます。部門間で人材を融通しながら、職員が同じベクトル(危機感)を持って仕事に取り組める環境づくりを進めているところです。

加えて、お客様のさまざまなニーズに合わせた新規事業の開発にも力を入れていきます。すでに船会社への海務監督の代行派遣をスタートさせていますが、今後も弊法人の持つ技術やノウハウを活かした新しいサービスを模索していくつもりです。

これらの取り組みを通じて、国際物流を支える「潤滑油」としての役割を果たし続けていきたいと思います。

編集後記

取材を通して実感したのは、見えないところで社会を支える仕事の重要さだ。日々何気なく手にする輸入品の裏側には、その安全性や品質を確かめる検査という重要な工程がある。長きにわたり国際物流を支え続けてきた同法人は、これからも縁の下の力持ちとして私たちの暮らしの安全を守ってくれるに違いない。

石田正明/1962年、大阪府生まれ。東京商船大学卒業。1984年、一般社団法人日本海事検定協会に入職し、九州支部へ配属される。1992年に欧州事務所へ赴任し、2009年にタイへの駐在も経験。2017年、執行役員に就任。その後、理事や常務理事を歴任し、2023年に第14代代表理事会長に就任。