
株式会社ピー・アール・オーは、創業から35年目を迎えるシステム開発会社だ。同社は大手企業のシステムからブロックチェーン技術を活用したサービス、さらにスマートフォン向けのアプリまで幅広い開発を手がけ、常に最先端の技術を提供し続けている。「あったらいいな。」の実現にこだわり、生成AI時代の新たな挑戦に取り組む代表取締役社長、大高潤氏に話をうかがった。
難しい開発への挑戦がコンピュータへの深い理解をもたらした
ーー大高社長のご経歴を教えてください。
大高潤:
私の社会人としてのキャリアは、日本電信電話公社(現:NTT)から始まりました。回線関係の設計部門で働いていたときに、通信量を監視するためのコンピュータに触れる機会がありました。そして、仕事でコンピュータを扱う中で、それが非常に高価であることを知り、「IT業界は成長するのではないか」と考え、IT業界への転職を考えるようになりました。
その後転職したのは、当時世界でも数社しかなかった3次元CADを扱う企業でした。私はほとんどプログラムの知識がない状態で入社しましたが、すぐに設計を任され、大手新聞社のシステムなどを手がけていました。
その後、3次元CADを自社開発する会社に転職し、現在のスマートフォンと比較して、10分の1ほどのパワーしかないコンピュータで開発するという難題に取り組みました。これらの経験を通じて、コンピュータの基本原理を深く理解することができたと感じています。
ーー貴社を設立した経緯についてお聞かせください。
大高潤:
30歳ぐらいまでは、先ほど申し上げた3次元CADの開発企業で経験を積み、その後、何人かの仲間とともに小さな会社を立ち上げました。そこから紆余曲折あり、弊社の前身となる有限会社システックを設立。最初は大手電機メーカーのシステム開発が中心でしたが、インターネットの普及とともにWeb関連の開発も手がけるようになりました。
上流工程に価値を見出す、これからのシステム開発

ーー貴社の事業内容について教えてください。
大高潤:
弊社の事業は大きく分けて3つあります。1つ目はシステム開発を行うSI事業で、大手企業のB2C、B2B向けサービスの構築や課題解決のためのシステムを0から構築しています。2つ目は、ソリューション事業です。新しいテクノロジーを駆使しマーケットニーズに対し自社ソリューションを提供しています。そして3つ目が、デジタルコンテンツ事業。スマートフォン向けゲームアプリを開発し広告収益モデルを展開しています。現在運営しているアプリは累計1,600万ダウンロードを達成しており、毎月数十万人のユニークユーザーに利用いただいています。
弊社は、数多くの大手企業と取引させていただいております。皆さんが普段利用しているサービスを、弊社が裏側でサポートしていたというケースはたくさんあります。しかし、私たちの仕事は黒子のように表に出るものではないので、「あれは私たちの仕事です」とお伝えできるものが少ないのが残念ですが、1990年の創業から地道に技術を磨き続けてきたことが、大手企業からの信頼獲得につながっていると考えています。
ーー昨今のAI技術の進化は、貴社の事業にどのような影響を与えていますか?
大高潤:
生成AIは、これまでのシステム開発の流れを大きく変えつつあります。従来はプログラマーが多くの時間をかけて行っていたコーディングが、AIによって大幅に効率化されるようになりました。
しかし、この変化は私たちの仕事をなくすものではなく、仕事の質を向上させるものだと捉えています。コーディングの時間が減ることによって、お客様の課題を理解し、最適な解決策を設計する「上流工程」と呼ばれる部分により多くの時間とリソースを投入できるようになるからです。これはシステムの品質向上に直結する大きな変化だと言えるでしょう。
AIを味方につけることで、より付加価値の高いサービスを提供できると確信しています。
技術者から提案者へ、変化する時代に求める人材像
ーーどのような人材を求めていますか?
大高潤:
新卒採用も継続的に行い、会社の規模を少しずつ拡大してきた結果、今ではグループ全体で120名を超える組織となっています。
弊社ではお客様のビジネスを理解し、その課題解決に向けた提案ができる人材を求めています。近年は生成AIが目覚ましい発展を遂げていますが、お客様の課題を深く理解して要件定義するといった上流工程は依然として人間の知恵とスキルが必要な領域です。
そのため、技術的な専門知識よりも、相手の話をしっかり聞き、論理的に考え、適切な解決策を提案できる能力が重要だと考えています。弊社では「お客様のあったらいいなを実現する」という理念のもと、文系理系を問わず、コミュニケーション能力とロジカルシンキング(論理的思考力)を持った方を歓迎します。
ARIグループとの連携で目指す、新たなIT企業のカタチ
ーー今後の展望についてお聞かせください。
大高潤:
2024年11月にARIグループの一員となったことで、弊社の事業は大きな転換点を迎えました。これからは、ARIグループの強みであるクラウド技術やデータ・AI活用における顧客基盤に、弊社がこれまで培ってきたシステム開発の技術力を融合させることで、グループ一体となった価値提供が可能になります。単独では実現できなかったソリューションも提供できるようになるでしょう。
弊社単体としては、従来の開発リソースを提供するというビジネスモデルから脱却し、お客様と一緒にビジネスそのものを構築していくパートナーへと進化したいと考えています。最終的な目標は、お客様の情報システム部門としての機能を果たすことです。グループシナジーを活かして、デジタル化が加速する社会において、企業の成長を内側から支える新しい形のIT企業を創造していきます。
編集後記
常に次の展開を模索する大高社長の飽くなき挑戦心が印象的だった。技術の進化に振り回されるのではなく、その本質を見極め、人間にしかできない価値創造に焦点を当てる。この姿勢こそがピー・アール・オーの真の強みであり、未来を切り拓く力なのだと実感した。

大高潤/1960年、神奈川県横浜市生まれ。日本電信電話公社(現:NTT)に入社。4年ほど経験を積み、IT業界に転職して、SEとして原子力CADシステム開発などに約8年間従事。その後、有限会社システック(現:株式会社ピー・アール・オー)を設立し、代表取締役社長へ就任。中国や韓国の会社の設立や役員も歴任し、PROのグループ各社の設立、経営を指揮している。