※本ページ内の情報は2025年7月時点のものです。

「一流の技術者集団」という理念を胸に、IT業界で独自の道を切り拓いている株式会社プラス。同社は東京都に本社を構え、システム開発やSES事業を展開している。新卒採用を高卒者に特化。未経験者でも一年で一人前のプログラマーへと育成する独自の教育制度が強みだ。20代前半で経営者を志し、社員の成長と人間性を何よりも重視する代表取締役、花島千春氏に、その経営哲学と100年企業への展望を聞いた。

30歳で下した「私が会社を変える」という決断

ーーこれまでのご経歴をお聞かせください。

花島千春:
高校で情報処理を学び、卒業後はシステム開発会社で6年間エンジニアとして勤務しました。コンピュータが世の中を便利にしていく未来を確信していたので、プログラマーとしてキャリアをスタートさせました。高校時代はCOBOLの授業に苦戦しましたが、社会人になってからはJavaを扱う業務に従事し、実践の中で技術を磨いていきました。

ーー社長に就任された経緯をおうかがいできますか。

花島千春:
実は、20歳くらいの頃には「30代で経営者になろう」と決めていました。そのためにIT業界で頂点を目指そうと、プログラマーからシステムエンジニア、そしてプロジェクトリーダーへとステップアップしました。30歳になり、そろそろ独立を……と考えていた頃、「株式会社プラスを引き継がないか」と話が持ち上がりました。

話をいただいた当初は会社を引き継ぐつもりはありませんでした。しかし、当時入社したばかりの若い社員たちが将来に不安を感じている姿を目の当たりにして、考えが変わりました。会社の体質が保守的で、新しい技術に触れる機会も少ない彼らを見て、「私が彼らを引き上げ、新しい分野で活躍できる環境を作らなければ」と強く感じたのです。そして、彼らの成長が会社の成長に繋がると信じ、社長になることを決意しました。彼らの可能性を信じ、新しい未来を創造するという強い使命感から、当社の社長に就任いたしました。

技術より「人間性」で顧客と繋がるプラスの流儀

ーー貴社の経営理念について教えてください。

花島千春:
私たちの経営理念はいくつかありますが、その中でも特に大切にしているのが「一流の技術者集団であること」です。これは単に、最先端技術を追い求めるという意味ではありません。お客様が本当に困っていることを見抜き、それを的確に解決するために必要な技術を提供できること。それが「一流」だと考えています。

この理念を実践するために、最も大事なのは「人間性」です。特に「誠実さ」をもって業務を遂行することを重視しています。技術力が高くても、人間性が伴わなければお客様やチームメンバーからの信頼は得られません。プログラムの知識を忘れても、人間性を忘れてはいけない、それくらい人間性を大切にしています。お客様も私たちも人間ですから、心と心の繋がりが仕事の基本だと信じています。

ーーその「人間性」はどのように評価に繋がるのですか。

花島千春:
経営理念の各項目は、具体的な行動指針と共に評価制度に組み込まれています。例えば「誠実さ」であれば、真面目に業務に取り組む、人の話をしっかり聞くといった具体的な行動で評価されます。技術力ももちろん大切ですが、それ以上に人間性が成長や次のチャンスに繋がると考えています。実際に、お客様からは「プラスの社員は人柄がいいから、またお願いしたい」という声を多くいただいています。

未経験でも最短でプロになる「一年育成」カリキュラム

ーー高卒者の採用にこだわっているのは、なぜですか。

花島千春:
私自身が高卒で社会に出た経験から、高卒でもしっかりと鍛えれば立派な技術者になれるという確信があります。また、高校生は社会経験が少ない分、純粋で素直な子が多いと感じています。そのピュアな向上心を受け止め、成長を後押ししたいと強く思っています。

ですので、学校で専門知識を学んでいなくても問題ありません。大切なのは本人のやる気です。そのために、当社では教育に最も力を入れています。「100年企業」を目指す上で、教育こそがその土台になると考えているからです。

ーー貴社の教育カリキュラムについて教えてください。

花島千春:
「一年で一人前にする」をコンセプトにした研修カリキュラムを自社で開発しました。入社後一年で、設計書を渡せばきちんとしたプログラムを書けるレベルまで育成します。このカリキュラムでは、1〜2年上の先輩社員が指導員となり、実務と並行して徹底的に教育を行います。その結果、2年目にはプログラマーとしてチームに配属され、即戦力として活躍しています。

ーー他社とはどのような点が違うのでしょうか。

花島千春:
多くの会社では、新入社員はまずテスター業務(※)から入ることが一般的です。しかし、それではプログラムを書きたいという本人の思いに応えられませんし、成長にも時間がかかります。私たちは、最短距離でプログラマーとして活躍できるカリキュラムを用意しています。これにより、本人のモチベーションを高め、会社の成長にも繋げているのです。

(※)テスター業務:主にソフトウェアやシステムが仕様書通りに動作するかどうかをテストし、品質を保証すること

人を育て、世界とつながる未来への挑戦

ーー今後のビジョンについてお聞かせください。

花島千春:
高卒者がIT業界で輝ける「最強最高の高卒集団」を目指しています。そのためにも、社員教育にさらに力を入れ、お客様の課題解決に貢献できる場を広げていきたいです。売上や利益の拡大よりも、社員一人ひとりが仕事を通じて自己成長できる会社でありたいと考えています。その結果として、企業は成長していくものだと信じています。

ーー現在の課題は何でしょうか。

花島千春:
若手だけでなく、中堅社員の育成も課題の一つです。エンジニアとしてのキャリアが長くなると、管理職への意識が薄れたり、思考が凝り固まったりすることがあります。そのため、陽明学を取り入れた研修などを実施し、マネジメント能力や人間性を高める取り組みを始めています。また、現在は採用人数を年間4名に絞っていますが、これは教育体制のキャパシティによるものです。この土台を強化し、より多くの高校生を受け入れられるようにしたいと考えています。

ーー今後の事業展開について、おうかがいできますか。

花島千春:
コロナ禍以前からベトナムの企業と提携し、オフショア開発を進めています。日本の労働人口が減少する中、IT業界への期待に応え続けるには、海外の優秀な人材との協業が不可欠です。国や場所に依存せず、多様な文化を理解し、外国人と共にビジネスを成功に導く。そのようなグローバルなエンジニア人材の育成も、今後の重要なテーマの一つです。

編集後記

「プログラムの知識を忘れても、人間性を忘れてはいけない」。花島社長のこの言葉に、株式会社プラスの哲学が集約されている。同社は単に技術を教えるのではない。誠実さを土台とした「人間性」を育み、顧客から信頼される一流のエンジニアを育てることに尽力しているのだ。「100年企業」という壮大な目標に向かう同社の挑戦の先に、きっと輝かしい未来が待っているのだろう。

花島千春/1980年埼玉県生まれ、鳩ヶ谷高等学校卒。都内のシステム開発会社で6年間エンジニアとして経験を積んだ後、2004年3月に株式会社プラスを設立。2012年6月に同社代表取締役に就任。新卒は原則として経験問わず高卒にこだわり、IT業界で一流の技術者集団、100年企業を目指している。また、昨今の人材不足の解消、現代社会の多様性への理解を深めるべく、オフショア開発にも注力している。