※本ページ内の情報は2025年7月時点のものです。

昭和の時代から、宮城県でトランス(変圧器)を中心に、製造やメンテナンスを行う日幸電機株式会社。東北電力などからの受注で堅実な経営を続けてきた同社だが、2020年に大條晋也氏が代表取締役社長に就任してからは、事業内容はより幅広くなり、社風も明るく自由な方向へと大きく変化を遂げている。急速な改革にはどんな背景があったのか、社長の狙いとビジョンをうかがった。

格闘技道場のトレーナーから伯父の会社の後継者に転身

ーーまず、社長の経歴をお聞かせください。

大條晋也:
大学卒業後、「やりたいことをやろう」と格闘技道場「坂口道場」のトレーナーになりました。しかし、間もなくして会社を経営していた実家から声がかかり、入社することにしました。ただ、会社の風土が合わなくて辞めてしまい、しばらくはキャリアの空白期間があり、将来の方向性を見直す時間を過ごしていました。

その後、2015年に再度実家の会社に戻るも、父が亡くなるなどいろいろなことが重なり、2018年には高齢の伯父が経営している会社に役員として入社することになりました。それが日幸電機です。

ーー貴社に入社したときのことを教えてください。

大條晋也:
入社した頃は、入社前に聞いていた話と社内の実際の状況にギャップを感じました。また、東京で育った私にとって、宮城の文化や慣習に馴染むまでには少し時間がかかりました。

ただ、この会社は絶対にもっとよくなる、伸び代が大きいと感じたので、「入った以上はやるしかない」と決意したのです。幸い、当時の役員の中に、伯父と親しい方がいらっしゃって、私のことを後押ししてくださったことはありがたかったです。

社外の人の助けを借りることで業務や社風を次々と改善

ーーその後、社長に就任してからはどのような取り組みを行いましたか。

大條晋也:
まず「元気な会社に変えよう」というところから着手しました。当時の社内は、社員同士が小声で話していて、どこか活気が乏しかったのです。私自身は声が大きいのですが、単に自分の性格と合わないというだけではなく、何よりも会社の活力や成長にも関わることだと考えました。

そこで、社外から多くの人を招き、まるでお祭りのような雰囲気の中でさまざまな改善活動を始めました。それまで来客もほとんどない会社だったので、若手や次世代を担う従業員たちにいろいろな経験をさせる意味もありました。たとえば、東北リコーの社長だった方に月1回弊社に来ていただき、若手社員たちと改善活動に取り組んでもらっています。そこで育ったメンバーが、今では現場の中心となって業務を牽引する存在に成長してきています。

また、今年の1月には「イノベーション室」も立ち上げました。近隣の大手企業で開発を担当していた方が加わり、現在、革新的な製品の開発を進めているところです。2023年からは、明光義塾のフランチャイズとして学習塾事業も開始し、2024年には、東京・秋葉原に「サテライト★アキバ」という営業所も開設しました。

実は私が東京から来たことをきっかけに、社内では「会社を変えていきたい」と考える人たちと、「現状のままでいたい」と考える人たちとで、意見が分かれてしまった時期がありました。それが、さまざまな取り組みを進めていくうちに、少しずつ「変えていきたい」と思う人たちが増えていき、その変化を肌で感じられたことに、大きなやりがいを感じましたね。

「人」を大切に、世の中に必要とされるものを提供していきたい

ーー貴社の事業内容と強みをお聞かせください。

大條晋也:
弊社のメイン事業は2つで、ひとつは電柱の上に設置されている柱上変圧器の修理・メンテナンス、もうひとつは民間企業向けにトランスやコイル、リアクトルなどをオーダーメイドでつくっています。最大の強みは「人」です。トランスをオーダーメイドで製造できるのも、製造現場に「どんなものでも設計し、形にできる」技術力を持った従業員がいるからこそです。

また、トランスメーカーとしては珍しく、若手の技術者が多いことも特徴のひとつです。業界全体では高齢化が進み、廃業する企業も増えていますが、弊社では40代前半の従業員が現場の中心を担い、20〜30代の若手も活躍しています。オーダーメイド製品を、長年にわたり安定しご提供できる体制が整っていることも、弊社の大きな強みだと考えています。

ーー今後の展望についてお聞かせください。

大條晋也:
現在の弊社は、社員一人ひとりがやりたいことに比較的自由に挑戦できる環境へと変わってきました。今後は、機械ができる作業は自動化を進めて、「人間だからできる仕事」に注力すべきだと考えています。

そして、世の中から本当に必要とされる製品やサービスを提供することで、「社会の公器」としての役割を果たし、弊社の存在意義をより高めていきたいですね。

編集後記

大條社長の柔軟な考え方、従業員と一体となって新しい物事に情熱を注ぐ姿勢、そして未来への明確なビジョンからは、時代をリードする力が感じられる。「私も若手と一緒に学習塾の研修に行きましたが、誰よりもできなかった」と笑う社長は、会社だけでなく自らもまだまだ成長したいと願っていた。その変化の行く先に注目せずにはいられない。

大條晋也/1981年、東京都出身。2005年青山学院大学経済学部卒業後、坂口道場にてトレーナーに。実家が経営する会社を経て2018年に日幸電機株式会社へ入社。2020年11月、代表取締役社長に就任。