※本ページ内の情報は2025年7月時点のものです。

アフィリエイト広告の運用代行を軸に、20年にわたりクライアントの事業成長を支援してきた株式会社シード。その強さの裏には、組織の停滞という大きな壁を乗り越えた過去があった。代表取締役の池田智之氏は、自らの挫折を糧に理念経営へと舵を切った。会社を「第二創業期」と位置づけ、変革の先頭に立つ。創業から現在、そしてAIや動画を駆使して描く未来像まで、その挑戦の軌跡を追った。

人生を変えたネット広告との出会い

ーーまず、起業に至るまでの経緯をおうかがいできますか。

池田智之:
新卒で光通信に入社し、厳しい環境で営業の基礎を学びました。実家の事業を手伝うことになり、1年で東京に営業所を開設したものの、黒字化できず断念。その後、語学留学を経て、日本初のアフィリエイトASPであるバリューコマースに入社し、ネット広告の世界に出合いました。

ーー起業しようと思ったきっかけは何ですか。

池田智之:
母が起業して活き活きと生活するようになり、家庭が豊かになっていく姿を間近で見て、「社長は楽しそうだ」と昔から思っていました。

そして、バリューコマース在籍時、趣味で立ち上げたWebサイトが雑誌に取り上げられ、月30万円の広告収入を得る経験をしました。この経験からメディア事業の可能性を感じ、30歳を機に独立を決意しました。

「会社がつまらない」挫折が生んだ組織変革

ーー創業後のターニングポイントについてお聞かせいただけますか。

池田智之:
転機は、6年前に訪れた組織の停滞期でした。当時、理念やビジョンは不明確で、社員間の一体感も希薄でした。私自身も仕事への意欲を失い、出社がつらいと感じる事もあるほどでした。

「このままではいけない」という危機感から、自分が人生で何を楽しいと感じたのかを徹底的に振り返りました。そこで思い出したのが、中学時代のバレーボール部での経験です。未経験者ばかりのチームでしたが、みんなで本気で一つの目標に向かい、初めて県大会に出場できました。仲間との一体感や達成感が、人生で最も楽しかったと気づいたのです。

そこから、「学生の部活動のように、一つの目標に全員で向かう集団にしたい」と考え、会社の理念やビジョンをすべて刷新し、事あるごとに社員に熱く語りかけ続け、私の想いを共有していきました。すると、理念に共感してくれる人が集まるようになり、組織文化が大きく変わっていきました。同時に、私自身の覚悟も大きく変わりました。それまでの「本気のつもり」から、土日も含めて仕事にコミットする「本当の本気」へと、腹を括ったのです。会社の未来をつくることが、単なる仕事ではなく、「生き方」そのものになっていく。そんな感覚でした。私が変わることで会社が変わり、人も文化もサービスも変わった。この変革こそが、弊社のターニングポイントです。

失注から学んだ「圧倒的な成果」へのこだわり

ーー貴社のミッションや強みについて教えてください。

池田智之:
第一のミッションは「クライアントに圧倒的な成果を返す」ことです。このミッションが生まれたのは、数年前、長くお付き合いのあった重要顧客とのお取引がなくなった経験がきっかけです。

多忙のあまり、追加の仕事を依頼された際に「難しい」とこちらの都合を優先する返答をしてしまいました。それがきっかけで、お取引が終わってしまったのです。クライアントの成功を願うべきパートナーでありながら、それができませんでした。プロとしての自分の甘さを痛感し、この後悔から、どんな時もクライアントへの成果を最優先するという現在のミッションが生まれたのです。

現在は、私自身も現場の最前線に立ち続けることで改善点を見つけ、運用方法を徹底的に仕組み化しています。20年の経験で蓄積したノウハウと、作業を自動化する自社開発ツールも大きな強みです。

AIと動画で描く第二創業期の未来

ーー今後の事業の方向性についておうかがいできますか。

池田智之:
これからは自社メディアの強化に大きく舵を切ります。これからのキーワードは「AI」「メディア」「SNS」「動画」です。AIの台頭で検索中心のビジネスは変化を迫られます。今後はSNSや動画の領域に事業の軸足を移し、広告運用もSNS広告の比率を高めていきます。

ーーどのような人材を求められていますか。

池田智之:
現在の社員数は25名と少数精鋭の体制です。採用に関しては、未知の領域に果敢にチャレンジできる、情熱ある人材を求めています。ベンチャー企業で働く魅力は、会社の成長を自分ごととして実感し、早くからチャンスを掴めることだと思います。環境の不備を嘆くのではなく、「足りないなら自分で作る」という当事者意識が不可欠です。AIなどの新しい分野も、この1、2年で必死に学んだ人が先駆者になれます。

ーー最後に、読者へメッセージをお願いします。

池田智之:
弊社は創業20年目ですが、今のフェーズを私は「第二創業期」と位置づけ、気持ちは「創業5年目のベンチャー」です。これから年単位で2倍、3倍の成長を本気で目指します。会社の変革期に中心メンバーとして参画し、一緒に挑戦してくれる方が現れたら、これほど嬉しいことはありません。

編集後記

順風満帆に見えるキャリアの裏に、組織停滞という挫折があった。池田氏は苦悩から逃げず、自らと向き合い「部活動のような一体感」という理念を見つけ出す。クライアントのお取引きがなくなった経験すらも「圧倒的な成果を返す」というミッションへと昇華させた。創業20年目を「第二創業期」と断言し、新たな荒波に漕ぎ出すその姿は、挑戦を続けるベンチャーそのものである。

池田智之/大学卒業後、株式会社光通信に入社し、営業職を経験。実家の事業を手伝った後、語学留学。2000年頃、日本初のアフィリエイトASPであるバリューコマース株式会社に入社。営業やアライアンス部長として事業を牽引する。多くのサービスが成長する過程を目の当たりにし、在職中に個人サイトで大きな広告収入を上げた経験を基に、2005年、株式会社シードの前身となるモバイルエージェンシー株式会社を設立し、代表取締役に就任。2007年、株式会社シードへ商号変更し、現在に至る。