※本ページ内の情報は2025年7月時点のものです。

介護業界の常識を覆す高品質なサービスと独自のビジネスモデルで成長を続ける、株式会社エクセレントケアシステム。元CAによる接遇指導や専門家による食事開発、多彩なレクリエーションなど、「感動介護」を追求する独自の取り組みは、業界内外から注目を集めている。四国電力から介護の世界へ転身し、一代でこの革新的な企業を築き上げた代表取締役の大川一則氏に、その強さの秘訣と未来への展望を聞いた。

電力会社から介護業界へ!創業の原点にある問題意識

ーー電力会社から介護の道へ進んだ経緯をお聞かせください。

大川一則:
当時勤務していた四国電力が社会貢献として有料老人ホームの運営を始めたことがきっかけです。介護保険制度が発足し、民間企業も老人ホーム事業に参入できるようになったのです。私自身、マンション経営をする中で、保証人のない高齢者が入居できずに困っている現実を目の当たりにしていました。そうした社会課題に強い問題意識を持ち、介護業界への関心が高まりました。

ーー創業当時、介護業界にどのような課題を感じましたか?

大川一則:
当時の介護業界は、医療法人や社会福祉法人が大半を占め、サービス競争が乏しく、個別の希望には十分応えられていませんでした。入浴や外出の回数を増やしたい、美味しい食事を楽しみたい、そんな要望に応えられていなかったのです。

かつては、介護は家庭で行うものという考えが一般的で、福祉サービスが必要な人に対しては「措置制度」と呼ばれる行政サービスが中心でした。その頃は、「介護をしてあげている」というスタンスで、利用者本人がサービスを選ぶことはできませんでした。しかし、今は「介護をさせていただく」時代です。所得にかかわらず同じサービスしか受けられない状況に課題を感じました。

そこで、お客様の多様な希望を叶えられる施設をつくることにしたのです。人員配置を手厚くし、ホテルのような心地よい空間と、リハビリにも繋がる新しいレクリエーションなどを取り入れました。食事も費用に制限のない有料老人ホームの強みを活かし、お客様の希望に沿ったものを提供することから始めました。

コストパフォーマンス日本一を支える独自のビジネスモデル

ーー貴社のサービスについて教えてください。

大川一則:
私たちは介護保険の基準よりも2割以上多い人員を配置し、ICT機器も導入してサービスの質を担保しています。その上で、基本料金だけでは賄えない個別の要望には、入居一時金をいただかない代わりに「上乗せ介護サービス」というオプションを設けています。

たとえば「毎日入浴したい」「部屋まで食事を運んでほしい」といった日常のことから、「お墓参りに行きたい」「デパートへ買い物に連れて行ってほしい」といった外出支援まで、さまざまなご要望にお応えしています。提携病院以外への通院も可能です。

「感動介護」を追求する、常識破りのサービス品質

ーー接遇面でのこだわりについてお聞かせください。

大川一則:
お客様に接するすべてのスタッフに対して接遇・マナー研修を実施しています。著名な講師による研修や、元客室乗務員(CA)を接遇指導員として採用して、言葉遣いや所作を指導してもらっています。普段の業務の様子を動画で撮影し、改善点を指導員から本人にフィードバックすることで、サービスの質向上につなげています。

ーー食事において特に工夫されている点は何ですか?

大川一則:
味や栄養バランスはもちろん、盛り付けや器にもこだわり、専属の食事品質指導員が食事全体の指導にあたっています。衛生管理の難しさから生ものの提供を控える施設が多い中、私たちは危険な夏場を除き、お刺身なども提供します。ほかにも新鮮な野菜を使い、ご飯や味噌汁は温かい状態でお出しするなど、家庭的なぬくもりも大切にしています。

また、嚥下障害のある方向けの食事として「やわらか食」の開発に取り組んでいます。嚥下障害のある方はミキサー食などが多いですが、見た目は通常食と変わらず、口に入れると溶けるような食事です。圧力鍋や酵素、筋を切るカッターなどを駆使して、食の喜びをいつまでも感じていただけるよう工夫を重ねています。

ーー入居者を退屈させないための工夫はありますか?

大川一則:
定番の脳トレや風船バレーなどのレクリエーションに加え、オリジナルのリハビリダンス、入居者様の経験や特技を活かした書道や生け花・カラオケ・麻雀といったサークル活動など多彩なアクティビティを行っています。また「音楽療法」や「化粧療法」なども取り入れ、心身の健康と生活の質の向上を図っています。

プロ人材が集う組織力と、事業を加速させるICT戦略

ーーICT化についても教えてください。

大川一則:
社内にはIT専任のチームがあり、介護記録のペーパーレス化、見守りシステム導入による安全性の確保や施設運営に必要なアプリを自社開発するなど、デジタル化を推進しています。広報や営業、求人、社員教育なども各専門部署を設け、大手企業に匹敵する組織体制を整えています。

このような体制があるのは、私の息子たちが経営に参画していることが大きいですね。長男はICTや介護ロボットを販売する会社の経営、次男はIT系の大学を出てシステム開発を、三男は営業部隊で求人や入居紹介を担当しています。このように専門知識を持つ若いプロ人材が社内にいることが強みです。

ーー人材不足の中、優秀な人材が集まる理由は何でしょうか?

大川一則:
SNSを活用した採用、特に日本に住む外国人材の確保に強みがあります。弊社はフィリピン人の雇用が多いのですが、専門の担当者が生活や仕事の悩みに乗り、安心して働ける環境を整えているのです。彼らが持つ語学力を活かし、保育園で子どもたちに英語を教えてもらう機会も設けています。

医療、そして海外へ。エクセレントケアシステムが描く未来

ーー今後、特に注力していく事業分野は何ですか?

大川一則:
医療分野の拡大です。すでにクリニックや薬局を開設しており、今後は病院のM&Aなども積極的に行い、医療と介護を両輪で展開していきたいと思っています。また、2050年には介護需要が縮小することを見据え、不動産デベロッパー事業や人材紹介など、新分野の事業も進めています。

また、現在展開している都府県にクリニックを2施設ずつ、計18施設ほどまで拡大したいと考えています。往診範囲を考慮すると、2施設あれば広範囲をカバーできる計算です。さらに、フィリピンの方が日本で学んだ介護のノウハウを、母国の中流層以上の方々に提供する海外展開も視野に入れています。

ーー貴社の求める人材について教えてください。

大川一則:
現場では勤勉さと協調性に加え、リーダーシップを発揮できる方、本社や施設の管理者には、強いリーダーシップと営業能力、そして新しいことを創造する力が不可欠です。今後は海外展開のため語学に堪能な方や、新規事業をリードできる発想力のある方も求めています。

ーー最後に、貴社の最大の魅力を教えてください。

大川一則:
「常識に囚われない」という姿勢です。常識通りの介護では、人を感動させることはできません。美味しい食事、リハビリで歩けるようになる喜び、誕生日を祝ってもらえる嬉しさ、そうした一つひとつの「感動」をお届けする「感動介護」こそが私たちの武器です。これが口コミとなり、98%以上という高い入居率に繋がっているのだと考えています。

編集後記

四国電力という安定したキャリアを離れ、介護という未知の世界に飛び込んだ大川氏。その根底には、画一的なサービスへの強い問題意識と、「一人ひとりの人生に寄り添いたい」という熱い思いがあった。医療、そして海外へと広がる壮大なビジョンに、同社の挑戦がこれからも多くの人を惹きつけていくことを確信した。

大川一則/四国電力株式会社に勤務後、株式会社エクセレントケアシステムを設立し、代表取締役に就任。徳島県で初めての認可有料老人ホームを開設して以来、「常識に囚われない」を信条に高品質なサービスと独自のビジネスモデルで事業を全国に拡大させている。