※本ページ内の情報は2025年8月時点のものです。

株式会社D&Iは、人材の紹介や定着支援、放課後等デイサービスの運営などを通して、障害がある人の雇用や教育にまつわる課題を解決する会社だ。

主要事業の1つである人材紹介サービスでは、業界最大級の障害者人材データベースを活用し、その企業にマッチする最適な人材を探せることを強みとしている。

今回は代表取締役の小林鉄郎氏に、障害者支援事業にかける思いや、事業を通してかなえたい未来について、話を聞いた。

前社長の死をきっかけに、自身が代表に就任することを決意

ーー創業のきっかけや思い、代表就任時のことを聞かせてください。

小林鉄郎:
会社員時代、当時の上司だった杉本から「一緒に会社を立ち上げよう」と誘われたのが、創業のきっかけです。彼とは、障害者支援の新規事業チームでともに仕事をしていました。

会社を立ち上げたときから強く思っているのが、「障害者がもっとチャレンジできる世の中にしたい」ということです。

人間は自分の意思でチャレンジし、成功体験を得ることで、自信が持てるようになるものだと私は考えています。

ただ、前職の障害者支援事業に携わっていたときから、障害者の方々にはチャレンジの機会があまり与えられず、結果として自分に自信を持てずにいるケースが多いように感じていました。

杉本とともに2009年にD&Iを創業したのは、こうした現状を変えたいと思ったからです。しかし、創業から12年後の2021年6月、杉本が急逝したことで、私が代わって代表となりました。

彼が亡くなってから約4年が経ちますが、ピンチのときもいつも笑顔で、器が大きく、魅力あふれた人だったことを思い出します。

企業とのマッチング・定着・教育支援の3軸で障害者を支援

ーー事業内容について教えてください。

小林鉄郎:
弊社は障害者雇用支援教育事業を手がけており、大きく3つのサービスを展開しています。

1つ目は、障害者の雇用に関する「出会いづらさ」を解決するマッチングプラットフォームサービス「DIエージェント」です。人材紹介や求人メディアを通して、企業と障害者の出会いの場を創出しています。

2つ目は、障害者の「働きにくさ」を解決する「ワクサポ」、「エンカク」、コンサルなどの定着プラットフォーム事業を展開しています。これは、障害者が社内で適性を発揮し、戦力となるためのサポートなど、人材の定着を促すものです。

そして3つ目が、障害者向けの教育サービスです。子どもには放課後等デイサービス、大人には就職に向けたトレーニングなどを行っています。

たとえば放課後等デイサービス「テラコヤキッズ」では、職業体験や外出活動などを行い、子どもたちの居場所の1つにもなっています。

弊社は、採用から定着、教育などの幅広いサービスを提供することで、他社にはない「かゆいところに手が届くサービス」を実現している点が強みです。創業当初から、企業の障害者雇用を伴走支援する障害者雇用のインフラカンパニーを目指しています。

ーーサービスを展開する中で、印象的だったエピソードはありますか。

小林鉄郎:
先ほどお伝えした通り、障害者の方々は成功体験を積むことができず、自分に自信を持てずにいる方が少なくありません。

過去、弊社が支援した障害者の中に、アパレルの会社に入社した全盲の女性がいました。一見すると彼女は念願だったアパレル企業で充実して働いているようでしたが、実際はいつも自分に自信がなく、よく泣いていたのです。

このような現状を見て、障害者の方々に成功体験を積む機会を提供する必要性をより一層感じましたし、もっと自分の可能性を広げてもらいたいと思いました。

「世の中に必要とされている実感」を通して幸せな人を増やしていきたい

ーー貴社で働く人材の特徴や求める人材像を教えてください。

小林鉄郎:
弊社には、障害者支援という「社会性」の側面と、利益を上げるために目標を達成する「経済性」の側面の両方を理解した上で仕事に取り組んでいる人材が多いです。

フロントセールスは新卒などの若手が担い、専門性が必要な後方支援部門はベテランがサポートにつくなど、良いバランスで組織が成り立っていると思います。

今後は組織拡大に向けて経営幹部の体制を充実させるのに加えて、成長意欲の高い人材を積極的に採用していきたいですね。

ーー今後の展望をお願いします。

小林鉄郎:
弊社では、会社として社員に約束することとして「D&I promise」を掲げており、これには働くことを通して社員を幸せにしたいというメッセージを込めています。社員に幸せになってもらうためにも挑戦の機会を積極的に設け、彼らに成長する喜びを味わってもらいたいです。その結果として、会社も成長していけたらと思っています。

そのほか、障害のある方にとどまらず、引きこもりの方など、世間一般から「働くのは難しいだろう」と思われている方々の社会進出をより一層サポートをしていきたいです。そして、自分が世の中から必要とされている実感を通して、幸せを感じられる人を増やしたいと思っています。

より多くの潜在労働者の方々が働くことができれば、日本の労働力不足の問題解決にも貢献できますし、日本全体を盛り上げるためにも力を入れて取り組んでいきます。

編集後記

2025年2月、東京証券取引所TOKYO PRO Marketに上場したD&I。今回の上場について小林社長は「上場によって社会的な信用力を得たことで、障害者の活躍の場づくりをより一層促進できるはず」と力強く語った。

社会参加に壁を感じる多くの人を救うためにも、同社の思いが社会にいち早く広まり、その思いに共感する企業が増えてくれることを願っている。

小林鉄郎/1985年生まれ、石川県金沢市出身。新卒でベンチャー企業へ入社後、新規事業で障害者雇用支援事業立ち上げに携わる。2009年前代表杉本氏とともに株式会社D&I創業、取締役就任。D&Iが行う全事業の立ち上げから携わり、障害者雇用、障害児・障害者教育、障害者福祉、行政・官公庁案件など多岐にわたって障害者の自立や社会参画に向けた活動を行っている。杉本氏逝去により、2021年6月代表取締役就任。