※本ページ内の情報は2025年8月時点のものです。

1993年、クリニックの開院を原点に、今や病院や高齢者施設、認可保育園、病児保育室など幅広いサービス展開をしているタムスグループ。2019年には東京都で55年ぶり、城東エリアで初となる乳児院を開院し、医療だけにとどまらず社会や時代が抱える課題に真摯に向き合い、包括的な取り組みを続けている。これまでの歩みと今後の展望について岡本氏に聞いた。

「人から喜ばれる仕事に就きたい」夢を叶えた先での挫折

ーーなぜ医療の道に進まれたのでしょうか?

岡本和久:
小学生の頃から人を救って喜んでもらえる医師になることが夢でした。念願叶い、最初は大学病院の放射線専門医として主にがん治療に携わる中で、幅広い知識と経験を積むことができました。しかし、当時の放射線治療では患者さんの回復が見込めないという厳しい現実に何度も直面し、悔しさに押しつぶされそうになることもありました。

ーー独立したきっかけを教えてください。

岡本和久:
患者さんが何を望んでいるのか、不安や不足といった「不」をサポートするには何ができるだろうかと考えた結果、1993年に独立してクリニック開院という道を選びました。

社会の課題やニーズに向き合うことが新事業確立の道しるべに

ーー現在は認知症治療に重点を置く病院など専門的な施設展開もされていますが、どのように事業を確立されたのでしょうか。

岡本和久:
「たとえ困難に思えることでもやってみよう」と、目の前の課題に真摯に向き合い続けたことで、進むべき方向へつながっていったと思います。

知人が認知症で入院した際、閉塞的な環境に置かれているのを目の当たりにしました。当時は認知症専門の病院などもなく、「それなら、自ら認知症専門の病院をやろう」とタムスさくら病院川口を開院しました。

小児分野への展開も、同様の課題意識から始まりました。小児科クリニックを開設することになった際、病児保育室を併設すると子どもの病気が悪化することを未然に防ぐことができ、入院数が減る。ひいては小児科で働く医師も看護師も疲弊せず、医療崩壊を避けられると考え、病児保育室を始めたのです。

これらの実績が認められ、行政から認可保育園設立の要請をいただきました。実際に保育事業を運営してみて直面したのが、ネグレクトという深刻な社会問題でした。それがきっかけとなり、都内で55年ぶりとなる乳児園設立へとつながりました。

最初から保育園を始めようと計画していたわけではないのですが、世の中のお困りごとやニーズに真摯に向き合ってきたら、今の形になったという感じです。

変化や課題に対応するために必要なのはスピード感

ーー現在、どんなことに注力されていますか?

岡本和久:
まずはDXです。AIやロボット技術の台頭もあり、クリニックの受付から精算までの自動化を進め、ワンオペレーション化の可能性を試しているところです。ただし、これは単なる業務効率化ではなく、利用者さんにとっても有益になることを目的としています。

もう1点は、海外研修です。欧米の医療機関では院長の上に必ずディレクター職を設けて、専門職もマネジメントに積極的に関与しています。日本においても、医師主導の時代から、変革の時期を迎えていくでしょう。そこで、リハビリテーション責任者や看護師など、さまざまな職種の職員に海外研修へ参加してもらっています。

ーー今後の事業展開について、どうお考えですか?

岡本和久:
時代の変化の流れを的確に捉え、「自分自身と自分の家族が利用したいと思えるサービスか?」という指針に沿って、都度必要なものを提供し続ける組織にしたいです。

現在、クリニックを起点に、在宅医療、高齢者施設、乳幼児施設まで切れ目のない医療や介護サービスを強みとしていますが、今後10年、20年先を見据えると、医療、福祉のあり方は必ず形を変えていくと思います。これまでも変化に対応してきましたが、これからはスピード感をもって対応する必要があると考えています。

現場の「不」や社会全体の課題に寄り添う医療福祉現場

ーー貴グループで働いている方の特徴を教えてください。

岡本和久:
コロナショック初期の話ですが、ワクチン接種の実施を医療機関側も戸惑う風潮の中、当グループは予約無しで患者さんを受け入れ、迅速に接種を実施しました。「人を助けることにつながるのであれば率先してやろう」という志をもった方が集まってくれているからこそ、成せたことだと思います。

ーー求職者の方へメッセージをお願いします。

岡本和久:
医療福祉の現場では、自分たちがどのようなサービスを提供したいかよりも患者さんや利用者さんの不安や不足を第一に考えることが大切です。タムスグループを頼りにしてくださっている方々が安心して利用できる医療福祉・組織を目指していきたいです。身近な人の声や社会全体の課題に寄り添い、誠実に向き合っていける方はぜひ当グループで挑戦してください。

編集後記

タムスグループの理事長を務める傍ら、現在も一線の医師として外来診療に携わり、利用者や社会が抱える「不」に向き合い続けている岡本氏。誰もやりたがらないことでも、それが患者や利用者の「不」であれば自らやるという姿勢は、今後の医療福祉の変革に欠かせないものであると感じた。

岡本和久/千葉大学医学部卒業。同大学医学部附属病院の放射線科に勤務。1993年、タムス総合クリニック篠崎駅前(設立当時:篠崎駅前クリニック)を開院。東京都東部を中心にクリニックや高齢者施設、児童施設も開院した。理事長を務めるかたわら現役医師として現場に立ち続けている。