※本ページ内の情報は2025年8月時点のものです。

松下運輸株式会社は、1951年に東京都港区で設立された総合物流企業だ。もともと先々代社長が材木屋として創業した会社だが、現在は、一般貨物運送を中心に、引越業務、倉庫業など多岐にわたるサービスを提供している。今回は、100年企業を目指して成長を続ける同社の取り組みについて、同社の代表取締役社長を務める坂田生子氏にうかがった。

外交官志望から一転して物流の仕事へ

ーー社長のご経歴を教えてください。

坂田生子:
小学校1年生の頃から将来は社長になりたいと思っていました。港区は周囲に大使館が多く、外国人も珍しくない環境でしたので、次第に外国の文化や語学にとても興味をもつようになりました。将来は外交官になりたいという夢がありましたが、語学の先生を目指そうと考えるようになり、大学で英語とフランス語の教員免許を取得しました。

在学中に先代社長である父から会社を手伝うよう言われ、アルバイトを始めたのがきっかけで入社することになりました。

ーー入社後はどのような仕事をされていましたか。

坂田生子:
入社後は、まず現場を理解するためにトラックの運転以外の業務を幅広く経験しました。父からは帝王学を学ぶとともに、父からの助言を自分なりに解釈し、倉庫作業や管理業務、自社システムの開発、さらには経理・労務の資格取得に至るまで、あらゆる課題に主体的に取り組むことで、経営の礎となる知識と実務能力を培っていきました。

一方、営業の仕事は母から学びました。当時は女性が営業に出ても受け入れてもらえない時代で、提案を無視されたり、話が前に進まないなど、悔しいことも多く経験しました。試行錯誤の末、私が営業に行って契約直前まで話を進め、クロージングを男性社員に引き継ぐ形にすることで、話がスムーズにまとまるようになりました。

柔軟な対応で拡大する多角的な物流サービス

ーー貴社の事業内容を教えてください。

坂田生子:
弊社は、外食チェーンを中心に、コンビニエンスストアや医療機関などの一般貨物運送事業を行うほか、引越・オフィス移転事業を展開する会社です。

外食チェーン向けの配送業務では、常温物流に特化し、ルート配送として常温商品を各店舗にお届けしています。その他にも家具、楽器、美術品の配送も手掛けてきました。中でも特に珍しいのは、介護用品をリースする会社からのご依頼で、退院後のベッドや車椅子を回収した後、滅菌処理後、再配送するサービスを行っています。

また、2009年に設立した別会社の株式会社トランスフォーマーでは、介護保険でカバーしきれない高齢者の生活支援やお困り事の解決、遺品整理などの社会貢献事業を行っています。こちらは、私自身が母を介護した経験から立ち上げた事業で、最近ようやく形になってきました。

ーー貴社の事業の強みは、どのようなところにあるとお考えですか。

坂田生子:
弊社の強みは、細かな配慮と柔軟な対応力です。お客様の店舗や配達先によって異なる置き場所や置き方に対応し、鍵をお預かりして倉庫に荷物を運びます。安全品質・配送品質・職場品質を『松下品質』として捉え、維持向上に務めています。そして、企業格差は人財格差と考え、品質の維持向上に対応する人財育成に力を入れています。

今後、物流の自動化によって無人倉庫などが増えると、なくなる仕事もあるかもしれません。しかし、引っ越しや高齢者向けのお片付け業務といった、人間ならではの配慮が必要になる領域は広がると予想しています。こうした人間性を重視したサービスの提供によって、弊社の事業が成長する余地は大いにあると確信しています。

社員の成長と働きやすさを重視した環境づくりを目指す

ーー社長就任後、どのような取り組みを行っていますか。

坂田生子:
働きやすい環境づくりに注力しました。2024年問題を契機にお客様と改善会議を重ね、労働時間短縮を実現。また、社員のキャリアアップを支援するため、資格取得支援制度の利用を積極的に勧めています。会社が認めた資格については、費用を全額負担。たとえば、大型トラックの免許や簿記の資格など、社員のスキル向上を後押しするための支援を充実させてきました。

さらに、社内改善の取り組みとして、「わくわく提案制度」という制度も設けました。この制度は効率化や生産性の向上など、社内改善につながる提案をすれば1,000円を支給するというものです。また、「良い仕事は良い家庭から」という考えのもと、福利厚生制度として、結婚記念日・親の長寿のお祝い金制度や子どもの入学祝いなどの特別なお祝い金制度も設けました。

社員の成長や社員の生活全般をサポートすることによって、会社が安心して働ける環境になり、結果、企業の成長につながることを期待しています。

ーー最後に、貴社の今後の展望をお聞かせください。

坂田生子:
社員が長期的に働きやすい環境を提供し、100年続く幸福企業を目指します。「働きやすさ日本一」を掲げ、性別や役職に関わらず、挑戦する意欲を持つ社員を支援していく方針です。今年度からエンゲージメントを強化し「働きがいのある会社」も同時に目指していきます。

また、ドライバー職に限らず、営業や企画へのチャレンジも歓迎しており、社員が新しいアイデアを提案できる風通しの良い職場づくりを推進します。さらに、大学生など新しい視点を持つ人材の参加を求め、革新的なサービスやブランディングの企画にも力を入れたいです。お客様に喜ばれる、品質の高い仕事をしてくれる方からの応募を歓迎します。

編集後記

「働きやすさ日本一」を掲げ、社内整備をすすめる同社。今後、社員一人ひとりの挑戦意欲がさらに引き出され、強みである「人間性を重視したサービス」が一層磨かれることで、100年企業へと続く新たな道が拓かれていくはずだ。

坂田生子/獨協大学外国語学部フランス語学科卒業後、1983年に松下運輸株式会社に入社。その後、常務取締役を経て、1995年に代表取締役社長に就任。自身の介護経験を基に、2009年に高齢者支援を行う株式会社トランスフォーマーを設立。トラック業界初の女性支部長や東京ニュービジネス協議会理事など要職を歴任し、女性活躍推進や地域貢献にも尽力。運輸業と福祉事業の経営に加え、幅広い活動で社会を支えている。