
介護や医療に特化したスポットバイトや、主に外食に向けた外国人材支援事業で注目を集めるUSEN&U-NEXT GROUPの株式会社USEN WORKING。同社を牽引する金成植社長は、朝鮮学校から日本の大学を経て株式会社USENに入社した経歴を持つ。日本で働く外国人の課題に寄り添う視点を強みに、外国人材支援という社会的意義の高い事業を推進する。ご自身の出自を活かしながら社会課題の解決に取り組む金氏の事業哲学と、2030年に向けた壮大なビジョンについて聞いた。
経営者としての原点を築いた挑戦の日々
ーー貴社に入社される前までのご経歴をうかがえますか。
金成植:
私の父はカラオケ店を経営しており、自営業の経営者を親に持つ友人たちも多かったので、「いずれ自分も何か商売をするのだろう」と漠然と感じていました。いずれ事業を起こすにしても、日本の大学で学び日本企業で働く資格を得たのだから、まずは日本企業で経験を積もうと考えました。
将来的に経営者になるためには営業経験が大事だと思っていたので、営業力が強い会社を探していました。そんなときに出会ったのがUSENです。USENは営業に力を入れている会社だと知り、自分を鍛えるには最適な環境だと思いました。また、父が経営するカラオケ店でもUSENのサービスを使っていたので、身近に感じていたことも入社を決めた理由の一つです。
ーーUSEN WORKINGの代表に就任された経緯を教えてください。
金成植:
USEN&U-NEXT GROUPは、若手社員でも本人が希望すればチャンスを与えられる風土があるため、入社4年目に手を挙げて、支店長になりました。営業力の次はマネジメント力も身につけたいと考えていたので、自ら強く希望した結果です。その後2015年に、USENのタブレットPOSレジ(現:USENレジTAB)の新規事業立ち上げメンバーとして参画し、市場拡大とともにサービスも組織も広がっていくなかで、営業責任者を務めました。
加えて、グループ内の次世代の経営幹部候補や組織の中核を担う人材育成を目的としたプログラム「未来塾」に、第1期生として参加しました。「社会の未来をより豊かにすること」をテーマとした新規事業のプレゼンをする機会があったのですが、外国人材支援事業に興味を持ち始めていた私は、チームで「外国人材支援事業の可能性」について提案しました。これがきっかけとなり、その後、本格的に事業化を検討する流れになりました。
2023年11月に、当時グループ内にあった、外国人材支援事業を扱う株式会社Next Innovationの代表取締役社長に就任しました。その後2024年9月には、介護人材のワークシェアリングサービスを展開するUSEN WORKINGとのグループ内統合を経て、現在に至ります。
ーー外国人材支援事業のどの部分に興味を持たれましたか。
金成植:
当時、私が注目したのは人材不足という構造的な課題です。
多くの企業が、AIやロボットでは補いきれない人材不足に悩んでおり、外国人や高齢者の採用を増やす必要性を感じています。しかし、当時私たちのグループ内には「人材」に特化した事業がなく、そこに大きな可能性を感じました。
グループの総合力で挑む人手不足という課題

ーー貴社の事業について教えてください。
金成植:
弊社は「はたらく未来に、イノベーションを」というビジョンのもと、人材紹介、求人広告、人材派遣、スポットワークなど、課題解決に有効なソリューションをワンストップで提供しています。
人材紹介に関しては、介護・介護補助のスポット・単発バイトアプリ「Ucare」、外国人材に特化した人材紹介・定着支援サービス「STAY WORKER」などを展開しています。
「STAY WORKER」では、特定技能の在留資格を持つ外国人の方々を対象に、介護施設や飲食店への人材紹介や就労支援を行っています。
強みは、飲食・介護の2つの領域に特化していることです。USEN&U-NEXT GROUPでは、すでに約30万店舗の飲食店との取引実績があります。そのため求人側にも強固なネットワークがあり、現場の実情や課題にも深く理解があります。さらに、東証プライム市場上場企業であるU-NEXT HOLDINGSのグループ企業として、法令を遵守しながら事業を拡大している点も強みです。
USEN WORKINGとして運営する以上、「私たちのサービスがなくなったら困る」、そんなふうに言ってもらえるように手厚くサポートしています。日本は安全であり、物価や給与水準も魅力的です。企業の課題解決を目指す一方で、そんな日本で働きたい海外の方々に対して就労機会を提供するのが、私たちのもう一つの役割です。
売上100億円の先に描く新たな日本の姿
ーー今後のビジョンについてお聞かせください。
金成植:
2030年には売上100億円にするのが目標です。この目標を達成するためには、既存事業すべてをしっかりと伸ばしていくことが不可欠です。加えて、M&Aによってさらなる成長を目指します。USEN&U-NEXT GROUPの顧客基盤を掛け合わせることで相乗効果を期待できる企業が、M&Aの理想的な対象です。
ベースにあるのは、「お客様の役に立つ」ことです。私たちがやるからこそ喜んでいただける、選んでいただける。そんな価値を世の中に届けたいと思っています。また、グループならではの強みを活かすことも重要です。グループの多様なアセットを活かし、お客様に最高の価値を提供することで、心から喜んでいただきたいと考えています。
私たちが提供するサービスを通じて、社会の文化や常識を変えていくことも重要な目標です。介護施設でのスポットワークや、外国人が日本の社会で自然に働く姿は、現状ではまだ当たり前とは言えません。そのような光景が「普通」になっていくプロセスに、私たちが深く関われれば嬉しいですね。
編集後記
営業力から始まり、マネジメント、戦略設計まで幅広い経験を積んだ結果、現在の事業構想に至った金社長。特に、ご自身の外国人としての視点を活かして、外国人材支援を社会課題解決の切り口としてとらえている点が印象的だった。人手不足という普遍的な課題に対して、単なる効率化ではなく、「人」に焦点を当てた取り組みからは、人材ビジネスの未来を担う覚悟が伝わってくる。ビジョン達成に向けた現実的な道筋も説得力があり、今後の動向に注目したい。

金成植/1986年東京都生まれ、専修大学卒。2009年に株式会社USENへ入社し、営業として活動。以来、支店長、支社長、営業企画部長等の役職を歴任し、2023年より株式会社Next Innovation(現:株式会社USEN WORKING)代表取締役社長に就任。顧客の人材課題解決に注力し、事業を牽引している。