※本ページ内の情報は2025年8月時点のものです。

企業と顧客を結ぶコミュニケーション手段として、SMS(ショートメッセージ)の活用が広がっている。法人向けSMS配信サービス「メディアSMS」を展開し、業界トップの導入実績を誇る株式会社メディア4u。同社は国内主要4キャリアと直接接続することで、高品質・低価格のSMS配信を提供している。社員数25名という少数精鋭の組織を率いるのは、2024年に代表取締役社長に就任した岩館徹氏。金融・IT・M&Aと幅広いキャリアを経た岩館氏の経営手腕に迫る。

変化を恐れず歩んだキャリアの軌跡

ーー金融機関からIT関連企業であるメディア4uの社長に就任するまでの経緯を教えてください。

岩館徹:
大学卒業後、UFJ信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)に入行し、多様なお客様の事業に触れる中で、成長の可能性を感じたのが当時黎明期だったインターネット業界でした。スタートアップ企業を支援する部署に在籍していたことも後押しとなり、20代半ばでベンチャー企業に飛び込みました。

最初の転職先である比較.com株式会社(現・手間いらず株式会社)では、IPO(株式公開)の準備を任され、東証マザーズ上場を実現しました。社員20数名で多くの職務を分担しながら上場まで駆け抜けた経験は、今でも大きな学びになっています。

その後、さらなる挑戦を求めてインターネット業界大手のヤフー株式会社(現・LINEヤフー株式会社)に転職し、M&Aを中心に多くの企業の事業戦略に携わりました。ヤフー在籍中にグループ会社の経営統合にも関わり、その流れで「メディア4u」の親会社とのつながりができました。

以後、複数のIT関連企業の役員を歴任しながら、2017年に社外取締役として親会社である「ファブリカコミュニケーションズ(現:ファブリカホールディングス)」に参画。2023年に取締役CFO(最高財務責任者)兼コーポレート本部長として本格的に経営に参画し、メディア4uを再び成長軌道に乗せる決意を固め、2024年にメディア4uの代表取締役社長に就任し現在に至ります。

情報の可視化で組織改革

ーー社長就任後の取り組みとその成果について教えてください。

岩館徹:
就任後は、会社のあらゆる情報を可視化しました。プロジェクトごとの進捗や売上なども全社員が把握できる体制を構築。共通の情報をもとに議論・意思決定ができる環境を整えています。情報が透明化されたことによって、社員の中で自分の担当領域の数字を改善する意識が高まりました。25名という少人数の組織ゆえに個々の裁量は大きいのですが、方針と現場の数字が結びついたことで、さらに自律的に動けるようになっています。その結果、業績は改善し、就任から1年でV字回復を実現しました。

また、社員の裁量をサポートするために、スピーディーな情報共有で判断の方向性を確認し、市場の変化やお客様の声を即座にサービス改善に反映し続ける機動力も向上しました。少人数でも柔軟性とスピード感を武器に、今後も業界で存在感を高めていきたいと考えています。

SMS配信を軸に進化する事業戦略

ーー貴社の主軸となる事業と今後の展望を教えてください。

岩館徹:
弊社ではクライアントと顧客との接点を最大化するサービスを開発しています。弊社の主軸であるSMS配信事業は、日本では2011年にキャリア間の相互通信が解禁されて広がった、比較的新しい分野です。現在活用されている認証コードの送信やリマインド通知に加え、プロモーションなどマーケティング用途での利用も増えるでしょう。海外と比べて、企業から消費者への配信はまだ普及途上であり、今後も活用の幅が広がると見込んでいます。

注力している事業としては、SMSと同様に相手先とのコミュニケーションを担う電話音声領域があります。電話網の活用には大きな伸びしろがあり、AIなどの技術を活用して顧客対応の効率化・省力化に取り組んでいます。

この他、弊社では創業当初から代理店を介さない直接販売を行っており、6500社超のお客様の多様な事例やノウハウが蓄積されています。こうした知見を活かし、AI技術も取り入れながら、業界トップの地位をさらに盤石にしていきます。

私自身は、時代の変化を先読みしながら事業を進める過程に面白さを感じており、今後も新たなコミュニケーション手段が生まれていく可能性を見据え、状況に応じた仕組みを提供していきたいと考えています。人材不足が進む中、お客様が本来の業務に集中できる時間を創出することも大きな提供価値です。

ーー経営において大切にしている信念や価値観について教えてください。

岩館徹:
私が大事にしているのは、一言で表すと「正しくあること」です。ビジネスには競争がつきものですが、たとえ勝つためでもルール違反や不誠実な手段は許されません。相手を欺き、不利益を与えて得た一時的な成功は長続きしませんし、続いたとしても自分は喜べません。正攻法で成果を出すことに意義があり、多少時間はかかっても、正しい道を貫く姿勢を大切にしています。

また、仕事は人生の大半を占めるからこそ、時間の使い方を大切にしています。私自身、単にお金のためだけでなく、挑戦や成長の機会に自分の時間を投資したいと考え、安定よりも好奇心や納得感を優先してキャリアを選んできました。

そのため、社員に対しても、人生の貴重な時間を預かっていると認識しています。社員が納得して働ける環境や仕事内容、報酬を実現しつつ、一人ひとりが自ら考え、主体的に行動できる組織を目指しています。指示待ちではなく、自律的に力を発揮できる仲間とともに仕事を進めていきたいと考えています。

ーー最後に、貴社が求める人材についてお考えをお聞かせください。

岩館徹:
変化を恐れず、自分が納得できる道に進むことのできる人に期待しています。挑戦する人には必ずチャンスが訪れます。弊社は少数精鋭で一人ひとりが大きな裁量を持って活躍できる会社ですので、「新しいことに挑戦したい」「人と人をつなぐコミュニケーションの未来を創りたい」という方と新しい仕事に取り組んでいきたいと考えています。

編集後記

金融業界からインターネット業界に飛び込み、複数の事業領域を経験してきた岩館社長。「正しくあること」を貫きながら、情報の透明性と自律性を重んじ、柔軟かつ機動力ある組織づくりを進めてきた姿が印象的である。SMS配信を軸に業界のトップを走るメディア4uが、新たなコミュニケーションの可能性をどのように切り拓き、変化する市場に挑戦するのか、今後に期待したい。

岩館徹/大学卒業後、UFJ信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)に入行。法人・リテール営業を通じてインターネット業界に可能性を感じ、比較.com株式会社(現・手間いらず株式会社)に転職。その後、ヤフー株式会社(現・LINEヤフー株式会社)でM&Aを担当し、複数のIT関連企業の役員を歴任。2024年より現職。