
高度情報化社会と呼ばれる現在、多くの企業にとってサイバーセキュリティはその重要性を増している。一方でITセキュリティは専門性の高さゆえに、その理解が一般に行き渡っているとは言い難い。こうした社会状況下で株式会社ブロードバンドセキュリティは顧客に寄り添ったセキュリティのトータルサービスを提供している。同社の代表取締役社長の滝澤貴志社長に事業内容などについて話をうかがった。
営業出身として徹底したユーザーオリエンテッド
ーーまず、滝澤社長の経歴を聞かせてください。
滝澤貴志:
私は1989年に当時現在のSCSKの系列であった共同VANに入社しました。1985年に行われた電気通信事業の民営化によりネットワーク上で行われる様々な付加価値サービスの提供が可能になったことに興味を持ったことがきっかけです。この先コンピュータの普及によりネットワークを中心にこの分野が広がるという展望を持ちました。
同社では入社後、人事部や総務部での職務からスタートしました。その後、共同VANはCSKネットワークシステムズと名前を変えましたが、そこでは法人向けの営業やインターネットに関連する事業の立ち上げに携わりました。もともと営業職を希望していたこともあり、最前線でお客様と接するこの仕事は特にチャレンジングでしたね。
その後は、ブロードバンドセキュリティの創業者でもある当時の上司とともにインターネット総合研究所へと移りました。
ーーそうした営業の経験の中で大切にしていたことはなんですか。
滝澤貴志:
お客様の抱える課題に対して誠意をもって接することです。お客様から仕事をいただくということは、すなわちお客様が何かしらの問題を抱えているということなんですね。営業の仕事では、その問題と丁寧に向きあって顧客の抱えている潜在的な課題を具体化し、それに対してのサービスを提案することが大事だと考えています。
またこうした業務の中でお客様からお金だけでなく課題解決を通じて喜んでいただけるということが、営業職の一番の面白さであり素晴らしさであると思いました。
ーー社長として大切にしている考えを聞かせてください。
滝澤貴志:
お客様やパートナー、社員をはじめとした仕事で関わる方々への感謝です。弊社の創業者がCOOに就任してすぐ病に倒れ4ヶ月後に亡くなりました。そうした中で皆さまに助けられたからこそ今の弊社があるため、何よりもまず感謝の気持ちを大切に考えています。
ITに特化したワンストップのセキュリティサービス

ーー貴社の事業内容を教えてください。
滝澤貴志:
主に情報セキュリティのサービスを提供しています。情報セキュリティの会社というとプロダクトやデバイスの開発販売に直接関わるものとサービスを行うものの2つに大きく分けられますが、弊社は主にサービス提供を行っています。
まずその1つがセキュリティ監査・コンサルティングです。ここでは顧客のサイバーリスクを監査し可視化します。たとえば、クレジットカードを取り扱う会社はセキュリティ監査を受ける必要がありますが、その会社のセキュリティが担保されているかを分析評価するサービスです。
次にセキュリティの脆弱性診断です。このサービスではシステム上の問題点を具体的に伝え、どのように改修すべきか、どのような対策を施すべきかを提案していますね。
また情報漏洩IT対策としてお客様に代わり24時間365日、不正アクセスや情報漏洩がないかを確認しています。
これらの他にも実際にインシデントが起きた際に、いつ侵入されたか、どこまで侵入されたか、何が漏洩したかを調べる事故対応などの様々なサービスがあります。
このようにさまざまな情報セキュリティサービスの提供を行っていますが、ここまでサービスを網羅している日本でも数少ない会社という自負があります。裏側からセキュリティを守るようなそんな縁の下の力持ちのような役割の事業です。
ーーそうしたワンストップ的なセキュリティサービスの他に、貴社の強みはどういったところにあるでしょうか。
滝澤貴志:
エンジニアの技術力や知識力の質の高さです。こうした強みをつくるために資格取得や教育に注力しています。セキュリティやベンダーなどに関する資格に関して100種類以上に資格手当てを出しており、必要不可欠なものについては社内で集中的に研修を行っています。
また、それらの勉強のための時間をつくるために1日あたりの勤務時間を6.5時間に設定しています。時間を知識や経験の吸収に費やし、そこから生まれた価値でお客様に貢献できるようにと労働時間を短縮しました。
社会に拡大するトータルセキュリティ
ーー今後、セキュリティサービスはどのような分野に広まっていくでしょうか。
滝澤貴志:
我々がセキュリティ事業を始めたのは2005年でしたが、その当時ではこうしたセキュリティサービスの重要性の認識は社会全体には行き渡っておりませんでした。そこから時代が流れ、現代ではセキュリティ対策の必要性はあらゆる産業分野に広まっています。
ーー今後の注力テーマについて聞かせてください。
滝澤貴志:
セキュリティのアウトソーシングサービスです。当社の顧客層は、大手・準大手のお客様が最も多い一方で、全ての会社がその内部で完結したセキュリティ部門を構築できるわけではありません。そうした中で、セキュリティに関するワンストップ的な管理を提供できる会社にしたいと考え、先日24時間365日のセキュリティ運用のアウトソーシングサービスに関するリリースも発表しました。
より満足のサービスを提供するために、より充実した人材確保を
ーー5年後、10年後に向けた目標を教えていただけますでしょうか。
滝澤貴志:
より多くのお客様に使っていただきたいという思いから顧客数を2倍にすることが目標です。
この目標を達成するにはサービスの価値をあげる必要があり、ひいては社員の付加価値をあげる必要があると考えています。現在、社員の平均年収は780万円ほどですが、たとえばそれらを1000万円まで引き上げられるようなトップクラスのセキュリティエンジニアの揃った会社にしていきたいです。
また将来のために社員の教育にも力を入れています。特に新卒入社の社員には、基礎的な知識だけでなく特定の分野外の知識・経験も網羅的に積んでほしいという思いから入社直後から8ヶ月の教育を行っています。
このように教育・採用・報酬などの人的資本への投資をしつつ、お客様に継続的に利用していただけるより強固な事業モデルも確立していく所存です。
編集後記
IT技術の進歩が目覚ましく高度に社会が情報化する今日において、人間社会を取り巻くあらゆるものがITと切っても切れない関係にある。その中で徹底した顧客志向のサービスとそれを可能にする技術者の教育に力を入れる滝澤社長の「人」を大事にした姿勢には今後も注目だ。
包括的なセキュリティサービスを強みとしつつ、それらを顧客に還元することを第一に考えるブロードバンドセキュリティ社の活躍に今後も期待だ。

滝澤貴志/1966年、新潟県出身。1989年に国学院大学法学部を卒業後、共同VAN(現:SCSK)に入社。株式会社インターネット総合研究所を経て、2004年4月に株式会社IRIコミュニケーションズ(現:ブロードバンドセキュリティ)に入社。営業部長、ASPサービス部長、管理本部長等を歴任。2020年9月代表取締役最高執行責任者(COO)、2021年4月代表取締役最高経営責任者(CEO)就任。2021年9月より代表取締役社長。