
決済システムの高速データ処理技術で社会インフラを支える、株式会社インテリジェントウェイブ。創業以来40年にわたり、その確かな技術力で、社会から厚い信頼を得ている。2024年、この技術者集団の新たな舵取り役として、大日本印刷株式会社で長年営業の第一線を歩んできた川上晃司氏が社長に就任した。これまでのキャリアで培った価値創造の経験を、いかにして同社のポテンシャルと融合させるのか。卓越した技術力に「営業の視点」を加え、さらなる企業価値向上を目指す同社の挑戦について、川上氏に話を聞いた。
大日本印刷で培った営業力と変革への挑戦
ーー社長のキャリアの原点である大日本印刷時代について、特に転機となったご経験をお聞かせください。
川上晃司:
1987年の新卒入社以来、一貫して営業に従事し、金融機関のお客様を中心にCX(顧客体験:Customer Experience)向上に貢献する価値提供に努めてきました。転機は本部長時代、大日本印刷がカード会社の決済サービス開発へ参入したときです。カード製造が主事業の印刷会社にとって、売上拡大のために新分野の開拓は必須でしたが、競合は実績豊富な大手SIerばかりでした。厳しい状況ではありましたが、長年かけて築いた信頼関係を基に、当時本部長だった私が自ら交渉の先頭に立ち、その決済サービスで初めての契約を獲得できました。この経験は、私のキャリアにおいて、大きな礎となっています。
ーーその後、インテリジェントウェイブへ関わることになった経緯と、社長としての考えをお聞かせください。
川上晃司:
2010年に大日本印刷がインテリジェントウェイブをグループ会社とした背景から、2016年より3年間、取締役を務めました。当時から、決済ネットワークにおける高い技術力に大きなポテンシャルを感じていましたね。2024年に社長に就任した今、大日本印刷で培った営業経験をインテリジェントウェイブに注ぎ込み、事業領域の拡大と企業価値向上に貢献することが私の使命です。社員には「熱量」と「覚悟」を持って仕事に向き合ってほしい。そしてマネジメントとして、常に新しい視点を提供し、彼らが持つ可能性を最大限に引き出す環境をつくりたいと考えています。
社会インフラを支える技術力と揺るぎない社会的意義

ーー貴社の事業内容と、業界における強みについてお聞かせください。
川上晃司:
当社は創業以来、24時間365日止まらないカード決済システムを中心に自社製品を提供してきました。現在は「決済」「セキュリティ」「データ通信・分析基盤」が事業の柱です。強みは、高速・大量のデータ通信をリアルタイムに処理・分析するコア技術と、それに基づく製品群、そして高い専門性を持つ人材です。特にカードの認証と不正利用検知では国内シェアトップを誇ります。キャッシュレス化が進む現代で、安全な取引を支える信頼性の高いIT基盤を提供することが、私たちの重要な社会的意義だと考えています。
ーー今後の成長戦略や、それを支える人材についてお聞かせください。
川上晃司:
昨年から「Transformation for the Future(トランスフォーメーション・フォー・ザ・フューチャー)」を掲げ、事業の多角化と持続的成長の基盤をつくる3カ年の中期経営計画を推進しています。その実現の源泉は、多様で個性的な人材です。当社では「共奏」をキーワードに、部門を超えた対話を通じて社員が互いに高め合える環境を大切にしています。具体的な施策として、若手向けに、エンジニアとして、人として、活躍できる「人財」を育成するための「IWIカレッジ」なども実践しています。求めるのは、コミュニケーション能力と自己成長への強い意欲を持つ方。「当たり前の利便性をITで支える」という誇りを共有し、共に挑戦してくれる方をお待ちしています。
コア技術を武器に未知の領域へ、挑戦は未来へと続く
ーー最後に、今後の事業展開について教えてください。
川上晃司:
これからの成長には、新しい領域の開拓が不可欠です。その鍵が、当社のコア技術「CEP(Complex Event Processing)」です。大量データから瞬時に有用な情報を見つけ出すこの技術を、決済領域だけでなく、スマートファクトリー(IoTやAIを活用した次世代の工場)やモビリティ(自動運転やMaaSなどの移動サービス)など、さまざまな分野に応用できると考えています。当社はスタートアップとして創業した会社です。その「進取の気性」を大切に、これからも挑戦を続け、新しい価値を提供していきます。
編集後記
決済という社会インフラを40年にわたり支え続けてきたインテリジェントウェイブ。その根幹には、サービスを絶対に止めないという責任感と、卓越した技術力がある。新たに就任した川上社長の言葉からは、これまでの強みに加え、重要な要素が加わったことがうかがえる。大日本印刷で培われた顧客起点の「営業視点」と、事を成し遂げる「熱量」だ。技術の確かさに、市場と向き合う情熱が掛け合わさったとき、企業のポテンシャルは大きく開花するだろう。社会を支える使命感と、未来へ挑戦する探究心。この両輪で進む同社の飛躍に期待したい。

川上晃司/1987年、大日本印刷株式会社に入社。一貫して情報コミュニケーション事業領域の営業部門に従事。同領域の本部長などを歴任後、2016年から2019年まで株式会社インテリジェントウェイブの取締役。大日本印刷へ帰任後、2024年より株式会社インテリジェントウェイブの代表取締役社長を務める。