
東京駅から徒歩約2分の最高の立地にあり、家族的な温かさと国際的なサービス水準を融合させたサービスを提供するシャングリ・ラ東京。このホテルの総支配人を務めるのは、数々の一流ホテルで経験を積んできたスイス出身のマティアス・イヴス・スッター氏だ。今回、スッター氏にホテル業界に進んだきっかけや経営者としての信念、今後の展開などについてうかがった。
ホスピタリティ精神が芽生えた幼少期の体験
ーーまずホテル業界に入ったきっかけを教えてください。
マティアス・イヴス・スッター:
ホテルやレストランを経営していた私の名付け親の影響が大きいです。彼は毎週末、自宅にゲストを招き、ディナーをふるまっていました。私もそのたびに食器のセッティングなどを手伝ううちに、自然にゲストをもてなすことが身につきました。
こうした幼少期の経験からお客様をもてなす仕事に興味を持ち、いったんは建築の仕事に就いたものの、その後ホテル業界へと進みました。早い段階からいくつかの海外のホテルで経験を積んだ中で、赴任先のひとつであった上海では、プライベートで友人とともに月に一度パーティーイベントを開催し、最大で2,500名ものお客様にご来場いただいたことがありました。多くのお客様にお食事やお飲み物をお楽しみいただけたことを、今でも嬉しく、懐かしく思い出します。
その後ホテルのコンセプト構築をはじめ、お客様に喜んでいただくためのサービス全般に携わるホテル経営に興味を持つようになり、現在に至っております。
家族のような強い結束力を活かしたサービス
ーー他のホテルにはない強みをお聞かせいただけますか。
マティアス・イヴス・スッター:
当ホテルの最大の価値は、群を抜いた固いチームの結束力です。私はスタッフを家族のように考えており、このような団結力こそがアジア文化ならではの強みであると思っています。
チームの団結力の大切さをお話しする際、私がよく例に挙げるのが「ドラゴンボートレース」です。ドラゴンボートは1人でパドルを漕いでも思うようには進みませんが、チーム全員の動きがシンクロしたときに驚くほどのパワーを発揮します。ホテルの仕事も同じで、一人ひとりが高いモチベーションを持ちながらチームが一丸となって取り組むことで、質の高いサービスをご提供できると考えています。
自分も一スタッフであることを忘れない経営者としての姿勢

ーー総支配人として普段から意識されている点をお聞かせください。
マティアス・イヴス・スッター:
言葉だけで指導するのではなく、自ら行動で示すことを常に心がけています。自ら先頭に立ち、ホテルスタッフとしてのあるべき姿を体現するよう努めています。例えば、ホテルの朝食の時間帯には、率先してお皿の片づけをしています。経営者であっても、ホテルの経営のことだけを考えていればよいわけではなく、自分もチームの一員としてサービスの提供に関わることが大切と考えています。
そして、スタッフから信頼される指導者であるために、まず自分自身が正直であることが大切です。人は誠実な人間に対してこそ信頼感を持ち、心を開いてくれるものです。そのためにも、常にオープンマインドでいることが大切です。
また、国によって文化の違いはあっても、人としての価値観は世界共通だと思っています。だからこそ、常に正直であることを忘れず、スタッフに心から信頼してもらえるよう意識しています。
東京と京都を拠点に認知度向上を目指す

ーー競合が多い業界で業績を伸ばすための戦略をお聞かせいただけますか。
マティアス・イヴス・スッター:
当ホテルは東京駅から徒歩約2分という抜群の立地にあることが他のホテルにはない大きな強みです。日本の交通の要所である東京駅に近いからこそ、旅行やビジネスの拠点として多くのお客様にご利用いただけることが大きなメリットです。
また、当ホテルでは東京駅の各列車プラットホームとホテル間の無料送迎サービスをご提供しております。今後もさまざまなサービスを提供し、顧客満足度の向上を目指してまいります。
ーー今後の展開について教えてください。
マティアス・イヴス・スッター:
今後、京都にもホテルをオープンする予定です。新たに京都にも拠点を構えることで、福岡をはじめ九州方面にお出かけの方の拠点としてもご利用いただけるようになり、国内における展開はさらに広がってまいります。
これを機に、より多くの皆様にシャングリ・ラブランドを認識していただけることを期待しています。このように事業を拡大していく中で、最も大切なことは、お客様からの評価です。「このホテルに泊まってよかった」と感じていただけるよう、これからも真摯にお客様に向き合ってまいります。
また、当ホテルの強みであるチーム力を高めるため、優秀な人材の育成に注力し、お客様に付加価値を提供し続けるホテルでありたいと考えます。
編集後記
自ら率先して食器の片付けをするなど、スタッフの一員であり続ける総支配人のスッター氏。その姿は、スタッフに「自分も高いホスピタリティ精神を持って接客しよう」という意識を芽生えさせ、サービスの質の向上につながっているのだろう。シャングリ・ラ 東京(Shangri-La Hotels Japan株式会社)はこれからもチームの団結力を強みとし、旅行客やビジネスパーソンに極上のひと時を提供し続けるに違いない。

マティアス・イヴス・スッター/スイス出身。スイスのホテルマネジメントスクールを卒業後、大学院でビジネスを学ぶ。ザ・ペニンシュラホテルシカゴでホテリエとしてのキャリアをスタート、その後はアジアを中心に世界7カ国のホテルで、主に料飲部門の要職や総支配人として経験を積む。2019年シャングリ・ラ東京の総支配人に就任。