※本ページ内の情報は2025年8月時点のものです。

新規事業を軌道に乗せるには、時間もコストも要する。多くの企業は営業人員の確保や営業体制の構築、そして売れる仕組みづくりに課題を抱えているのが実情だ。こうした状況下で、株式会社プロセルトラクションは2021年に設立された。BtoB(企業間取引)の新規事業を中心とした営業支援サービスを展開し、多様な業種・業界で実績を重ねている。豊富な営業経験と新規事業開発の知見を武器に、営業プロセスを一貫して支援する体制を構築。代表取締役の長谷川裕樹氏に、これまでの歩みと経営戦略について話を聞いた。

「世のため人のため」の志を胸に起業家精神を培う

ーーこれまでのご経歴についてお聞かせいただけますか。

長谷川裕樹:
大学卒業後に株式会社リクルート(現・株式会社リクルートホールディングス)へ入社しました。市場の発展に貢献している点に魅力を感じたことが入社の理由です。同社は多くの業界で強い存在感を示し、次々と構造改革や顧客支援サービスを展開していました。学生時代から起業を目指し、「世のため人のために働きたい」という思いを持っていた私にとって、その姿勢は非常に共感的でした。2008年の入社以降、中小企業、大手企業を問わず、営業担当として新規開拓や各社の課題に応じた解決策の提案に携わりました。

入社後の福岡支社への異動も、大きな転機でした。当時はリーマン・ショックの影響で組織規模が縮小されていましたが、若手でも責任ある仕事を任され、能力を発揮できる環境で成果を出せました。

同社には、「Will-Can-Must」を意識して目標を策定する文化があり、「Must(果たすべき役割)」に全力で取り組んだことで「Can(できること)」が増えました。その結果、「Will(やりたいこと)」が拡大し、さらなる挑戦へとつながるという好循環を体験できたのです。

また、社内の新規事業コンテストに参加して評価を受け、新規事業部へ異動したことも印象深い出来事です。このときの経験が、現在のビジネスを起業するきっかけとなりました。

ーー起業に至った経緯を教えてください。

長谷川裕樹:
新規事業部のメンバーは商品企画担当者やエンジニアが中心で、営業経験者は私だけでした。営業の役割は、お客様の評価や新たなニーズの発見、競合の動向把握など多岐にわたります。これらすべてを一人で担うのは極めて困難でした。そのため、商材の特性に応じた営業戦略の立案は自ら行い、営業スタッフは外部に補充を依頼したのです。しかし、当時は専門性に基づく助言は得られず、人材を派遣してもらうことしかできませんでした。

このプロジェクトで痛感したのは、「商品開発にどれだけ注力しても、営業体制が整わなければ、その価値が市場に届かない」という事実です。この課題を解消したいという思いが、起業へとつながりました。一連の営業プロセスをワンストップで支援する会社を設立し、多様な事業に寄り添って成功を後押しすることで、社会に新しい価値を提供したいと考えたのです。

成長を支える3つの支援事業

ーー貴社の事業内容について、具体的にお聞かせいただけますか。

長谷川裕樹:
弊社では、大きく分けて3つの柱で構成されています。

一つ目は、セールス・マーケティングの力で新しい価値を創出する営業支援事業です。主にBtoBの新規事業を対象に、マーケティングによるアポイント獲得から商談・クロージング、そして導入後のカスタマーサクセスまで一貫して支援する体制を整えています。特定の営業手法に固執するのではなく、アウトバウンドやインバウンド、オンラインセールスやフィールドセールスなど、取引先企業の業界特性や事業フェーズに応じてニーズは異なるため、各社の課題や目標に合わせて最適な解決策を提供します。

また、新規事業で培った知見を既存事業にも活用することも特徴です。商材の弱点や顧客ニーズとのギャップを見つけ出し、改善提案を行うことで事業の成長を後押しします。

二つ目は、人材紹介・派遣サービスなどのHR事業です。営業支援を通じてお客様の事業が成長し、「営業体制を内製化したい」という要望に応え、弊社で必要なスキルや素養を見極めた人材を紹介・派遣し、組織力強化をサポートします。

加えて、子会社である就労継続支援A型事業所の「プロセルワークス」では、オンラインアシスタントサービスも提供。ターゲットリストの作成やフォーム営業といった事務作業をBPO(※)で代行し、リソースが限られがちな新規事業の現場を支えています。

三つ目は、特定の業界に特化したバーティカルな事業展開です。たとえば、私がリクルートの「スーモ」出身ということもあり、不動産業界向けの営業支援には多くの実績があります。そこから派生し、不動産会社様のウェブ問い合わせへの迅速な初期対応を代行する「プロアポコール」というサービスも生まれました。また、「プロセルワークス」の運営で得た知見を活かし、障害者雇用に関連する福祉業界のSaaSやサービスの支援も得意としています。これらの業界特化で得た深い知見やネットワークは、一つ目の柱である営業支援事業にも還元され、相乗効果を生み出しています。

(※)BPO:ビジネス・プロセス・アウトソーシングの略。企業の業務プロセスを一括して外部に委託するアウトソーシングの一種

営業のプロフェッショナル✕豊富なノウハウで伴走支援

ーー今後の展望や方針について、どのようにお考えでしょうか。

長谷川裕樹:
規模や業種を問わず、中小企業やスタートアップなど、支援の幅を広げていきたいと考えています。弊社が支援した事業が各市場で真に影響力を持つ存在になれるよう、継続的にサポートし、新たな成功事例を創出していくつもりです。また、マネジメント支援やリモート対応の体制構築など、支援内容も強化します。現場で使うマニュアルやツールの改善にも、一層力を入れていきます。

方針として重視しているのは、短期的な売上目標ではなく、取引先の事業が着実に成長する運営体制かどうかです。弊社の価値は、営業における質の高い人材と豊富なノウハウにあると考えています。仮に売上拡大だけを追い求め、採用基準を下げて人数を確保すれば、最終的にお客様にご満足いただけない結果を招くでしょう。採用力を維持・向上させながら自社サービスを順次拡充し、お客様とともに継続的な成長を目指す所存です。

ーー貴社では、どのような人材を求めていますか。

長谷川裕樹:
営業経験者であれば、より高いレベルのセールススキルを追求するような、成長意欲の高い方を歓迎します。営業未経験の方については、前職の活動実績や成果を重視し、入社後の研修を通じて十分に活躍できると考えています。

「お客様の成功に貢献しながら自分も成長したい」という志が高い人にとって、弊社は必ず成長を実感できる環境です。また、仕事とプライベートを両立させ、心身ともに満たされた状態で自己実現を目指す「ウェルビーイング」の精神を重んじていることも、弊社の特徴といえるでしょう。

編集後記

新規事業の営業支援を通じて培われたノウハウは、単に「売れる仕組み」をつくるだけに留まらない。それは、顧客企業の成長を伴走する企業文化へと昇華されていた。顧客の事業成長を最優先に考え、営業を通じて社会に価値を還元したいという真摯な経営姿勢が強く印象に残った。その深い知見をもとに、同社が次なる業界や事業分野でどのような新価値を創出するのか。社名にも込められた今後のトラクション(牽引力)に注目したい。

長谷川裕樹/2008年に株式会社リクルート(現・株式会社リクルートホールディングス)に入社後、中小企業から大手企業の新規開拓からソリューション営業まで、多様なセールス業務やマネジメント、営業企画業務を幅広く経験。2018年に株式会社コムレイズ・インキュベートを設立し、代表取締役に就任。同社では新規事業の営業支援や、スタートアップへの投資事業などを手掛けた。2021年同社の営業支援事業を分社独立させ、株式会社プロセルトラクションを設立。