※本ページ内の情報は2025年10月時点のものです。

静岡県を拠点に、スタートアップ企業の挑戦を多角的に支援するEXPACT株式会社。同社は東京水準のコンサルティングを強みとする。資金調達から新規事業の創出までをワンストップで提供し、地方における新たな価値創造を牽引している。代表取締役の髙地耕平氏は、税理士や会計士の資格取得を目指していたが、より経営者に近い支援をしたいという思いから、経営の最前線に身を投じた経歴を持つ。安定したキャリアの先に見つけた「本当に支援したい相手」のために同社を設立。静岡の未来を担う挑戦者たちと共に、髙地氏が描くビジョンとは。その軌跡と信念に迫る。

経営の最前線で掴んだ天職 挑戦者を支えるキャリアの幕開け

ーーまずは、髙地社長のキャリアの原点についてお聞かせください。

髙地耕平:
もともとは税理士や会計士として独立を考えていました。ですが、資格の勉強を進める中で、「もっと経営者と直接関われる仕事がしたい」という思いが強くなったのです。そこで、まずは経営の現場を知るために金融機関へ入行しました。法人営業として多くの経営者と接し、財務の知識を実践的に学びました。

その後、企業の意思決定そのものに関与したいと考え、コンサルティング業務を行える監査法人を選びました。トーマツでは、上場を目指すベンチャーから大企業まで幅広く支援しました。特に創業期の小さな会社の支援に、大きなやりがいを感じたのです。

ーー安定したキャリアから、あえて独立起業の道を選んだ理由は何だったのでしょうか。

髙地耕平:
監査法人で小規模企業を支援する際、多くは行政の予算に頼らざるを得ない現実がありました。高額なコンサルティング費用が障壁となり、ベンチャー、スタートアップに届けたいサービスを届けられません。そのジレンマを解消するため、「成功報酬型で支援すれば、もっと多くの企業をサポートできるのではないか」と考えました。この思いが、弊社設立の直接的な原動力となりました。

事業の軸を固めたターニングポイント 故郷の雇用創出への新たな挑戦

ーー創業当初、特にご苦労されたことは何ですか。

髙地耕平:
2018年7月の創業当初は、補助金申請の支援が事業の中心でした。そのため収益に季節的な波が大きく、安定的な収益の確保に苦心したのです。仕事がない時期には病院の財務を手伝うなどして凌いだこともあります。現在ではサービスを拡充し、通年で案件を獲得できるようになりましたが、今も私自身が営業を担っているのが現状です。

ーー事業を成長させる上で、最も大きな転機となった出来事は何でしたか。

髙地耕平:
2024年4月に、前浜松市長の鈴木康友氏を中心に一般社団法人を設立したことです。静岡では若者が県外へ流出し、特にITベンチャーのような魅力的な雇用の受け皿が少ないという課題がありました。この協会設立を機に、静岡を「新たな雇用が生まれる場所」へと変えるべく、起業家育成と創業支援の取り組みを本格化させました。

東京水準の支援と挑戦を促す文化 事業成長を支える独自の強み

ーー貴社ならではの強みは何だとお考えですか。

髙地耕平:
最大の強みは、東京のスタートアップ支援で培った経験を基にした「東京水準のサービス」を静岡で提供できることです。地方にいながら首都圏と同レベルの質の高い支援を受けられる。これが私たちの提供価値です。

また、資金調達から事業開発までワンストップで支援できる多角的な視点や、社会性と経済性を両立させながら地域に深く関わる姿勢も、弊社らしさだと考えています。

ーー社員の方々に対しては、どのような思いで接していらっしゃいますか。

髙地耕平:
弊社には将来起業したいメンバーが多く、その挑戦を推奨する文化があります。顧客であるスタートアップに寄り添うには、社員自身が経営者に近い経験を積み、同じ視点を持つことが重要だからです。創業時からフルリモートワークを導入し、全国から優秀な人材が参画しています。定期的なオフサイトミーティングなどを通じて、互いに学び合い、成長できる機会を大切にしています。

ーー経営者として、これだけは譲れないという信念について教えてください。

髙地耕平:
挑戦する人を心から応援し合える文化をつくることです。挑戦した結果、たとえ失敗したとしても、その行動自体が称賛されるべきだと考えています。挑戦者同士が学び合えるコミュニティを静岡に創出することが大切です。それが若者が「ここで挑戦したい」と思える環境を育むと信じています。

静岡を拠点に世界を目指す挑戦 新たな事業の柱とグローバルな視座

ーー今後、貴社が目指すビジョンについて教えてください。

髙地耕平:
現在は「資金調達支援」と「行政連携」が事業の柱ですが、今後は第3、第4の柱を確立します。具体的には、AIプロダクト開発によるサービス拡充や中小企業のDX推進です。そして、日本のスタートアップの海外展開支援も行います。地域からグローバルへ、挑戦の舞台を広げるサポートをすることが目標です。

そのために、各事業を統括できるプロジェクトマネージャーを増やし、組織体制を一層強化する必要があります。同時に、私たちの原点である「挑戦者をワンストップで支える」という専門性は、さらに磨き上げていきたいと考えています。

私たちは弊社のミッションに共感し、共に成長していける仲間を求めています。弊社は、将来起業を目指す人にとって最高の学びの場となるでしょう。共に静岡の、そして日本の未来を創っていく挑戦者をお待ちしています。

編集後記

会計士の夢から一転、経営の最前線に飛び込み、挑戦者を支えるという天職を見出した髙地氏。その道のりは、自らの手で事業を切り拓く起業家そのものである。創業期の苦労を乗り越え、今では静岡の未来を左右するほどの大きな構想を描く。その根底にあるのは、故郷への深い愛情と挑戦者への熱い共感だ。同社は単なるコンサルティングファームではない。地域に新たな価値と雇用を生み出し、未来を創造する起業支援の拠点である。同社の挑戦に今後も注目したい。

髙地耕平/1984年、静岡県静岡市生まれ。法政大学経済学部経済学科を卒業後、地元の静岡銀行に入行し、9年間にわたって金融機関での実務経験を積む。その後、有限責任監査法人トーマツに転職し、ベンチャー企業支援や各種コンサルティング業務に従事。2018年7月、EXPACT株式会社を設立。