※本ページ内の情報は2025年10月時点のものです。

グリーンランド政府が100%株式を保有する国有企業「ロイヤルグリーンランド」。その日本法人が株式会社ロイヤルグリーンランドジャパンだ。漁獲から加工、販売までを一貫して手がける世界でも稀有なビジネスモデルを強みに、日本の食卓へ高品質な水産物を供給している。同社は私たちが食品スーパーや外食チェーン等で口にする甘エビの半数近いシェアを持つ。小売りの現場経験を原点に、変化の激しい水産業界で舵を取る代表取締役社長の成井秀仁氏。そのキャリアから見えてきた仕事の哲学、そして事業の根底に流れるサステナビリティへの熱い思いに迫る。

現場起点で変化を捉え続けたトップへの道のり

ーーこれまでのご経歴についておうかがいできますか。

成井秀仁:
学生時代から生活に直結する「衣食住」に関心があり、その中で最も好きだった食の分野を、大学卒業後の就職先として選びました。特にお客様に最も近い小売りの現場で働きたいと考え、スーパーマーケットに入社し、鮮魚部に配属になりました。

その後、仕入れを担当することになったのですが、「この魚は一体どこから来るのか」という、流通の「川上」への興味が湧いてきました。そんな折、弊社が営業を募集していることを知りました。スーパーマーケットでの経験が活かせる好機と捉え、営業未経験ながら転職を決意しました。

営業として経験を積み、仕入れにも関わって事業の全体像が見えてきた頃、前代表から後継者として声がかかりました。そして、3年間の準備期間を経て代表に就任しました。

ーー経営者として、大切にされている考え方はございますか。

成井秀仁:
「変化に対応すること」です。昔からある「衣食住」の産業は保守的な面がありつつも、固執すれば「ゆでガエル状態」で会社が立ち行かなくなってしまいます。立ち止まることは退化と同じです。常に挑戦し続けることが重要だと考えています。

「食」で言えば、食物自体はさほど変化していません。しかし、食べ方やトレンドは絶えず変化しています。その変化にどう対応していくかが非常に重要です。ですから、会社も、私も、社員も変化していかなければいけないと思っています。

漁獲から販売までの一貫体制が生む安心感と価値

ーー貴社の事業内容と強みについてお聞かせください。

成井秀仁:
弊社は、グリーンランド政府が100%株式を保有する国有企業「ロイヤルグリーンランド」の日本法人です。主な事業は、親会社がグリーンランド周辺の豊かな海で獲ったエビやカニなどを、日本のお客様が使いやすい形に加工し、国内で販売することです。

水産業界では、魚を「獲る」「加工する」「販売する」という工程を分業するのが一般的です。しかし、弊社はこれら全てを一貫して行っています。弊社の船で獲ったものを自社で加工・販売するため、生産から食卓までの履歴が明確になります。お客様に安心感を提供できることが最大の強みです。

「魚が好き」を原動力に日本の食文化を未来へつなぐ

ーー今後、どのような人材を求めていますか。

成井秀仁:
現在はキャリア採用のみとなっていますが、何よりもまず、魚介類が好きな人です。弊社の商品は、はるか遠いグリーンランドの海で仲間たちが獲ってきたもの。その背景にあるストーリーをお客様に届けたいと思える方に、ぜひ来てほしいです。特に営業や仕入れの分野で、商品を通して世界とつながり、国際感覚を磨きたいという方には、非常にやりがいのある環境だと思います。

ーー今後の事業展望についてお聞かせください。

成井秀仁:
世界的な魚食ブームで水産物の価格が高騰する中、日本の皆様に美味しい魚を提供し続けることが目標です。同時に、切り方や味付けを工夫するなど、加工における付加価値も高めたいです。そうして日本の大切な魚食文化を守るため、挑戦を続けます。その実現のため、既存取引先の深耕や工場の生産性改善、DXなどを推進します。そして、社員がより創造的な仕事に取り組める環境をつくる計画です。

ーー最後にメッセージをお願いします。

成井秀仁:
弊社の本拠地グリーンランドは、地球温暖化の最前線にあります。そして、経済の約7割を水産業が支えています。持続可能な漁業は、彼らにとって生活そのものを守るための死活問題です。皆様が口にする一尾のエビの背景には、そうした極北の島で暮らす人々の切実な思いが詰まっています。真のサステナビリティは、彼らの生活と直結しているのです。その背景にあるストーリーを感じていただければ嬉しいです。

編集後記

グリーンランド政府100%盤石な基盤。そして、漁獲から販売までの一貫体制。しかし、株式会社ロイヤルグリーンランドジャパンの真の強みは、その先にある「使命感」にほかならない。同社にとってサステナビリティとは、流行の言葉ではなく、事業の根幹をなす哲学そのものだ。あなたが次にスーパーで手に取る商品には、どんな物語が秘められているだろうか。そんな想像力が、世界を見る目を変えるのかもしれない。

成井秀仁/1983年神奈川県横浜市生まれ。青山学院大学経済学部卒業。大学卒業後、食品小売業界に入社し、水産担当、仕入れ業務を経験。2015年にロイヤルグリーンランドジャパン社に入社。営業担当、仕入調達担当を経て、2024年に同社代表取締役社長に就任。