
「病気はメッセージ」という考え方を軸に、自然のしくみに則った生き方を提案し続けてきた株式会社エーオーエーアオバ。1988年の創業以来、人が本来持つ力を高めるためのアプローチや自然食品の提供を通じ、健康と意識の調和を追求してきた。
創業者・白井常雄氏の思いを誰よりも近くで学び、実践し続けてきたのが、2024年に代表取締役社長に就任した西沢頼母氏だ。体験と学びを重ねながら、「世のため人のため」の理念をどのように形にしてきたのか、その歩みを追った。
初対面で即決 運命の出会いが導いた道
ーー入社のきっかけをお聞かせください。
西沢頼母:
当時、私は東京大学生産技術研究所で教授秘書を務めており、転職を考えていました。そのときに白井と出会い、初対面で交わした言葉の奥に、何か大きな信念に惹かれたんです。「この人についていこう」と直感しました。実は、仕事内容すらよく理解しないまま入社を決めたのですが、不思議と迷いはありませんでした。
秘書時代に学んだ哲学と実践

ーーそこから社長秘書として長年、白井氏のそばで働かれてきたのですね。
西沢頼母:
はい。10年以上にわたり、会長の行動や言葉、価値観を間近で学びました。私にとって白井は、経営者というより「哲学者」のような存在です。「病気はメッセージ」という考えに触れたとき、自分の中の価値観が音を立てて変わっていく感覚がありました。病気を敵とせず、そこに込められた意味を受け取るという姿勢に、深く共感したのです。
白井に教わった「自然の摂理に沿って生きる」という理念は、日々の食事や人との関わり方にも表れます。それは、社員との接し方にもつながっています。アオバの四つの健康法「意識・環境・食・免疫」は、社員全員が共有し、それぞれの現場で体現しているものなのです。
経営から一時離れ、関連会社で環境浄化機器の販売などに携わっていた期間もあります。現場に出てお客様の声を直接聞き、提案を行う中で、経営理念をいかに実践していくかを肌で感じながら学びました。そのときの経験が、現在の「実践する経営」の視点につながっています。
信念として変わらず持ち続けているのは、「世のため人のために」という思いです。それは白井の哲学でもあり、私自身の生き方でもあります。商品を届けることは手段の一つであって、本当に伝えたいのは「人間はもっと自然と調和して生きられる」というメッセージなんです。だからこそ、理念を体現できる組織でありたいと思っています。
予防・免疫ケアの提案を軸に、多様な世代と誠実に向き合う

ーー現在の主力事業について教えてください。
西沢頼母:
弊社では、病気や生活習慣病で悩む方に向けて、免疫や予防の観点からケアをご提案しています。「病気はメッセージ」という考えのもと、日々の暮らしや意識の持ち方が大切だという視点で、製品やサービスをお届けしています。弊社の製品は、使い続けていただくことに意味があります。そのため「会員制」と「一般通販」という形で、お客様との継続的な関係を築いています。
お客様との接点づくりにも独自のこだわりがあり、弊社の店舗での接客では、スタッフがお客様とじっくり対話します。その方の悩みや生活習慣を理解し、提案するよう心がけています。一人ひとりの背景を理解したうえで、商品が自然に生活へ溶け込んでいくようなご提案を意識しています。
ーー高齢者と若年層、両方の層にリーチするための工夫はありますか。
西沢頼母:
ご高齢の方には、使い慣れた環境の中でご利用いただけるよう、細やかなサポートを心がけています。たとえば、電話やファックス、郵送でのご注文にも変わらず対応し、お一人おひとりに合った方法で無理なく続けていただけるようにしています。逆に若い世代には、無理に押しつけることはありません。「こんな選択肢もあるんだ」と自然に興味を持ってもらえるよう、体験の設計を工夫しています。
ーー職場づくりにおいて、どのようなことを大切にされていますか。
西沢頼母:
社員がのびのびと発言し、挑戦できる環境が一番だと考えています。心理的安全性が保たれていなければ、本当の意味での創意工夫は生まれません。私自身も「社長だからこうしなきゃ」と思い込まずに、なるべく現場の声を素直に受け止め、対話のある組織にしていきたいです。
ーー今後のビジョンについて教えてください。
西沢頼母:
現在、特定の場所に成分を的確に届ける技術(ドラッグデリバリーシステム)など、外部の先端技術と連携した新しい展開を模索しています。社会の変化と共に、健康に関する課題も多様化しています。当社が長年培ってきた経験を生かし、時代にあった形で事業を広げていきたいと考えています。
編集後記
創業者の思想を受け継ぎ、「人間の本質的な健康」を追い求めてきた西沢氏。その語り口からは、理念の押しつけではなく、一人ひとりに寄り添う「自然な共鳴」を大切にする姿勢が感じられた。アオバという企業が大切にするのは、商品ではなく「気づき」そのものなのだと改めて感じさせられた。

西沢頼母/1959年東京都生まれ。日本女子大学卒業後、東京大学生産技術研究所にて教授秘書として勤務。1994年、株式会社エーオーエーアオバに入社。創業者・白井常雄氏の社長秘書として10年以上にわたり経営理念を学び、2002年取締役に就任。関連会社での環境事業を経て、2024年より代表取締役社長に就任。免疫療法、予防医療をベースとする日々の暮らし方や生き方の提案に注力している。