※本ページ内の情報は2025年10月時点のものです。

医師、看護師をはじめとする医療従事者の紹介事業を核に、日本が抱える医療課題の解決に挑むMRT株式会社。その成長を牽引するボードメンバーである加藤修孝氏は、アパレル、外資系広告という異色の経歴を持つ。逆境を成長の糧に変え、成長の過程で育んだ「シェアリング」思想が共鳴したMRTの事業の革新を進める。

入社後まもなく社内外からの大きな期待を寄せられ、全国展開の礎を築き、コロナ禍では社会貢献に奔走した。現在はシンガポールを拠点にベトナムからグローバル事業を開始し、「全ての人に平等で適切な医療を」という壮大なビジョンを掲げる同氏。その行動力の源泉と、若き才能を惹きつけるリーダーシップの哲学に迫る。

企画職から最年少マネージャーへ 逆境から学んだ仕事の本質

ーーはじめに、取締役のキャリアの原点についてお聞かせください。

加藤修孝:
最初のキャリアはアパレル業界でした。当時はデザイナーが独創的なデザインを0から作っていると思っておりましたが、仕事の中で、実際はMD(マーチャンダイザー)による市場調査などをもとにした商品企画を主軸に、トレンドやものづくりに影響を及ぼしていることを知りました。

私は、なにもないところから自ら企画をし、世の中に貢献したり影響を与える存在になりたいと思っており、そんな時、外資系広告会社であるグルーポンが「あなたの企画次第でお店や旅館の人気が決まる」というような求人をみつけ「これだ!」と思い、すぐに転職を決意しました。

ーーグルーポン社では、どのようなご経験をされたのですか。

加藤修孝:
「企画職」として入社したものの、実際は徹底した成果主義の営業会社で(※今となっては、そら外資ですもんねっと思いますが(笑))、当初は大変苦戦しました。転機となったのは、ある合理的な思考を持つ上司との出会いです。彼から仕事の成果は「段取り」で決まるという本質を徹底的に叩き込まれました。はじめは言われたことを忠実に実行し、自らも考え抜くことで、クビ寸前から史上最年少でマネージャーに昇格することができたのです。この逆境での経験が、私の仕事観の土台となりました。

MRT入社と全国展開 信頼を力に変えた大阪での快進撃

ーー過去のご経験が、MRTでの全国展開という大役にどう繋がったのでしょうか。

加藤修孝:
グルーポンで、お店の空いている時間や席といった遊休資産を価値に変えるビジネスに携わった経験から、リソースを有効活用する「シェアリングモデル」に着想を得ました。この考え方は、後に医師の希少な時間を非常勤勤務という働き方で医師不足を解消する事業を行っていたMRTへの大きな共感につながりました。さらに、自身のこれまでの経験を掛け合わせることで、医師にこの希少な時間と余暇時間、そして知識・経験を有効活用していただき、地方の医療課題に取り組む「医療版ワーケーション」といった独自の事業モデルへと発展させることができました。

入社してまもなく、事業エリアが関東圏のみだったMRTの全国展開、その第一歩である大阪支社の立ち上げを任されました。社長からは「好きにやれ。資金も好きに使え」と全面的な信頼を得て、大きな裁量権を与えていただきました。その信頼を力に変え、まずは大阪で医師、医療機関との関係を大切に育み、事業を短期間で拡大することができました。その経験と実績、なにより、医療従事者のみなさまのお力添えにより、東海、九州、北海道と、全国展開を推し進めることができたのです。

社会課題への挑戦 コロナ禍と地域医療で生んだ革新

ーーコロナ禍においては、社会貢献にも尽力されたそうですね。

加藤修孝:
医療現場が逼迫する中、私たちにできることは何かを常に考えていました。MRTが誇る医療従事者のネットワークの多大なる協力により、厚生労働省や地方自治体からの要請を受け、ワクチン接種会場やコールセンターの運営支援など、全国約100の自治体の下支えをしてきました。また、感染爆発が起きた大阪では、自宅療養者向けの往診やオンライン診療のサポート体制を迅速に立ち上げ、その後も他自治体からの要請拡大もあり、最大で1日に80人の医師によるオンライン診療に対応するなど、社会インフラの一部として医療課題の解決に貢献できたと考えています。

ーー「医療版ワーケーション」という取り組みについて、お聞かせいただけますか。

加藤修孝:
この取り組みは、医療従事者が休日や連休を利用して、ご自身の常勤先の医療機関に勤めながら、他県や地方の観光や交流も楽しめる新たな働き方を提案することによって、医師の地域偏在・診療科偏在問題の解消を図ることを目的としています。医療現場のひっ迫緩和や常勤医師の負担軽減を図るとともに将来的にはその県への移住や二拠点生活に繋げることも目指しています。現在は私自身の故郷である和歌山県と、広島県そして徳島県にて導入されており、今後はより全国的に展開していく予定です。

ベトナムから世界へ 「全ての人に平等で適切な医療を」

ーー今後のビジョンについて、どのようにお考えですか。

加藤修孝:
2025年の春からは、シンガポール法人、MRT Global Management Pte Ltd.のCEOとしてグローバル展開の礎をつくるべく、東南アジア圏に私自身が自ら活動拠点を移しました。「全ての人に平等で適切な医療を」というビジョンを本気で実現するためです。まずは、ベトナムの最大規模の私立医療ネットワーク Hoan My グループと連携し、ベトナム国内の医師の知識および専門技能を向上させる機会を提供するため、MRT医療人材プラットフォームの約10万名の医師会員から専門性の高い医師を講師として選定および招聘し、オンライン講義または年数回開催される医学会議(カンファレンス)でのオフライン講義のプログラムを実施する共同事業を開始しています。

また、医師の地域偏在はベトナム、ならびに東南アジアでもおこっている社会課題の為、日本でトップシェアを誇っている紹介事業の知見を活用することで、医師不足の地域の解決の一助になれるよう取り組んでおります。将来的には、世界中の医師、患者、医療機関が繋がるプラットフォームを構築したり、可能性に満ち溢れているAIを活用することで、世界の医療格差を是正していきたいと考えております。

このビジョンは、漫画『ONE PIECE』のルフィが「海賊王になる」と断言する姿勢と同じです。夢として語るのではなく「なる」と決めることが重要だと考えています。ビジョンは必ず実現させるものとして、そのために今何をすべきかを常に考え、行動しています。

ーー最後に、これからのキャリアを考える若者へメッセージをお願いします。

加藤修孝:
やりたいことが見つからないなら、やりたいことを探すことばかりに時間をかけるのは一度ストップしてみて、まず何かに飛び込んでみてください。行動する中で、自分の得意なことや、やりがいは必ず見つかります。大切なのは、考える前に行動し、その中で見つけたものを突き詰めていくことです。考えてばかりいると、その隙に時代やトレンドはガラッと変わっています(笑)。そういう時代が目の前まできています。

編集後記

アパレル、広告、そして医療。一見すると脈絡のない異色のキャリアだが、それぞれの現場で直面した課題と向き合い、培った経験すべてが学びとなり、現在の事業へと昇華されていく。広告業界で得た経験から着想した「シェアリング」という概念は、全く異なる医療の領域で実現してきたMRTを舞台に、さらなる発展を遂げている。その独創的な発想と、多くの協力者からの信頼を得て全国展開を成し遂げた実行力には驚かされる。その根底にあるのは「夢は語るものではなく、なると決めるもの」という力強い決意だ。今では海外を拠点に「すべての人に平等で適切な医療を」というビジョンのもと、医療課題の本質的な解決に挑み続けている。彼の挑戦はこれからも、次の時代のリーダー達に新たなキャリアの可能性を示し続ける。

加藤修孝/2017年、MRT株式会社に入社。大阪支社創設後、福岡・名古屋拠点をオープンさせる。2018年、同社執行役員 兼 子会社取締役に就任。2020年、同社事業本部長就任、2023年取締役 事業本部長に選任。2025年取締役グローバル事業管掌 兼 グローバルヘッドクオーターのMRT Global Management Pte Ltd. CEO就任。