
エヌ・ティ・ティ・データ・ソフィアは、りそなグループのシステム開発部門を前身とする。現在はNTTデータグループの一員としてフルITアウトソーシングを担う企業だ。銀行の基幹業務を支える社会インフラの開発・運用で培った安定した技術力を持ち、NTTデータの最新技術と融合させることで独自の強みとしている。2022年に同社の代表取締役社長へ就任したのが村山智文氏だ。NTTデータ時代には、数々の大規模プロジェクトを「最後の砦」として完遂させてきた。そのキャリアで培われた「仲間を大切にする」という哲学は、同社の経営にも色濃く反映されている。本記事では、村山氏の歩みと共に、同社が目指す未来像に迫る。
29歳の転機 プロジェクト完遂へ導いたチームワークの真髄
ーーこれまでのご経歴についてお聞かせください。
村山智文:
1988年にNTTに入社後、分社に伴いNTTデータへ転籍しました。以来、公共・金融分野で社会インフラとなる大規模プロジェクトを担当。特に難易度の高い案件を「最後の砦」として完遂させてきました。
ーーキャリアの転機や、ご自身の哲学が形成された経験について教えてください。
村山智文:
29歳の時、大きなシステムの一部機能のリーダーという立場から、小さいながらも営業から設計開発までシステム全体のプロジェクト責任者を任された経験が転機となりました。小さい工事会社を営んでいた父親の「従業員の生活を守る」姿や、当時の上司の「人を大事にする」という教えを胸に、自分も社長のつもりでプロジェクトメンバー全員を大事にして働きました。
その中で仲間の大切さを学び、後年、ある銀行の「経年で仕様が不明」となった困難なプロジェクトを任された時は、かつての仲間たちが大変だろうと自ら集まり、また、お客様もプロジェクトの仲間として、私たちと同じ汗をかいて協力してくださいました。仲間と一緒ならどんなに困難な仕事でもやり切れます。苦労を共にした仲間は人生の宝です。仕事を通して信頼関係を築き一生の仲間をつくっていくことの大切さを痛感しました。
40年の金融知見と最新技術の融合 唯一無二の価値を創造するプロ集団

ーー貴社の事業内容や特徴を教えていただけますか。
村山智文:
弊社のルーツは、りそなグループの前身である銀行のシステム開発部門です。現在はNTTデータと、りそなグループの共同出資という形をとっています。事業のメインは、りそなグループへのフルITアウトソーシングです。開発から保守・運用、営業店工事に至るまでをトータルで提供しています。銀行の三大業務である「預金・融資・為替」をはじめ、143もの広範なシステムを扱っているのが大きな特徴です。
ーー先進技術への取り組みについて、具体的な事例があれば教えてください。
村山智文:
ローコード開発ツール「GeneXus」の導入が挙げられます。これは6年前に弊社が市場調査で見いだしたものです。このツールを、社会の重要基盤となる営業店システムやインターネットバンキングに適用しました。その結果、開発期間を飛躍的に短縮させることに成功しています。この規模での適用は前例がなく、国際的なカンファレンスでアワードも受賞しました。
ーー貴社ならではの独自の強みはどのような点にありますか。
村山智文:
最大の財産は、40年以上にわたる金融業務のノウハウです。それに加え、NTTデータから最新技術が、りそな銀行から金融の最新動向が常に入ってくる点も特徴です。両社の強みを融合できることが、弊社のユニークな強みだと考えています。
顧客への貢献と社員の自己実現 経営ビジョンを支える二つの約束
ーー社長にご就任された当時の状況についてお聞かせください。
村山智文:
就任の話は急なことでした。当時はコロナ禍で、社員も二つの班に分かれて隔日で出社するなど、組織の一体感に課題がありました。まずは人を知り会社を知るため、役員や社員との対話から始めました。
その後、中期経営計画のビジョンを策定し、二つの重要な柱を立てました。一つは「お客様の真のITパートナーであり続ける」という目標です。これまで培ってきた開発・運用力に加え、今後は企画提案やコンサルティングといった、よりビジネスの初期の段階から関与することで、お客様のビジネスをより深く戦略面からサポートしていきます。
もう一つは、「社員一人ひとりが生き生きと活躍し、自己実現できる会社を目指す」ことです。人財が資本である弊社にとって、社員のエンゲージメント(働きがい)向上とWell-beingの実現は何よりも重要です。

組織の成長を加速させる多様な人財の活躍と挑戦する文化
ーー貴社では女性が多く活躍しているとうかがいました。
村山智文:
はい、社員の男女比率はほぼ1対1で、管理職も6対4と女性が非常に活躍している職場です。前身の会社から活躍してきた女性社員が、後進の素晴らしいロールモデルになっていることが大きいでしょう。
弊社では男女問わず育児休暇を取得しやすい風土が根付いており、最長3歳まで育児休暇を取得することが出来ます。さらに子育て期の社員は、子どもが小学校卒業まで利用可能な短時間フレックス勤務など、ライフステージにあわせた各種支援制度を活用しています。また、昇進や昇格も本人の働きや成果で正当に評価する文化となっています。
ーー社員の活躍を後押しするために、どのような取り組みをされていますか。
村山智文:
今年度から「社員チャレンジ施策」という新たな取り組みを始めました。社員が自ら提案する形式と、会社が提示するテーマに「やりたい」という人が集まる形式があります。これらの機会を通じて、社員の挑戦を後押しします。失敗を恐れずに挑戦する文化を醸成し、社員の成長と組織の活性化につなげたいと考えています。
ーー最後に、この記事の読者へメッセージをお願いします。
村山智文:
私たちの仕事は、日本の大手銀行グループを支える社会インフラをつくることです。これは非常にやりがいのある仕事だと言えます。多様な経歴を持つ人財が活躍しており、若手が伸びる環境があります。ご自身の力を伸ばしたいと考える方は、ぜひ弊社の門をたたいてください。
編集後記
日本の金融インフラを支えるという壮大な使命。そして、社員一人ひとりの挑戦を称賛する文化。取材を通して、この二つが両立する稀有な環境が見えてきた。村山氏が語る「失敗を恐れずに」という言葉は、成長を求める若手にとって何より心強いメッセージである。確固たる基盤の上で自らの可能性を試したい。そう願う者にとって、最高の舞台がここにある。

村山智文/1988年、日本電信電話株式会社に入社。分社化に伴い株式会社NTTデータへ。システム開発畑を歩み、多くの大規模・高難度プロジェクトを完遂し、世の中の発展に貢献。2015年に第一金融事業本部郵政ビジネス事業部長、2018年に執行役員・第一公共事業本部長、2020年にソーシャルデザイン推進室長(兼務)を歴任。2022年、NTTデータソフィア株式会社 代表取締役社長に就任。NTTデータプリンシパルプロジェクトマネージャ。