※本ページ内の情報は2025年10月時点のものです。

少子高齢化や人材不足など、医療・福祉業界は深刻な課題に直面している。こうした状況下で、経営の視点から業界を支える専門家の存在意義は大きい。創業以来、医療・福祉分野に特化してきた川原経営グループも、その一翼を担う。医療や福祉の現場に密着し、政策提言などに積極的に取り組む姿勢は、今後さらに必要とされるだろう。同グループ代表である川原丈貴氏に、事業承継の経緯や同グループの強み、そして今後の展望について話をうかがった。

「三方よし」の経営方針 全社員と共有した未来への約束

ーーこれまでのご経歴についてお聞かせください。

川原丈貴:
中央大学在学中に公認会計士試験に合格し、卒業後は監査法人トーマツに入社しました。トーマツでは約7年間、株式公開支援などに携わり実務経験を積んでいます。その後、1998年に弊グループに入社しました。

ーー社長に就任された経緯をおうかがいできますか。

川原丈貴:
弊グループは、父が1967年に川原税務会計事務所を設立したことからスタートした会社です。その後、1968年に株式会社川原経営総合センターを創設し、グループで事業展開をしています。1985年には医療に特化した会計事務所の全国組織であるMMPG(メディカル・マネジメント・プランニング・グループ)を設立。また、2001年には医療経済フォーラム・ジャパンを創設し、政策提言も行っています。

父は「医療は仁術であって経営など必要ない」という当時の風潮に対し、「医療にも経営が必要である」と粘り強く提唱し続けた人でした。いずれ父の会社を継ぐことを意識していましたが、社長就任の直接的なきっかけは、2005年4月の父の急逝です。

父の事業を継ぐことは、当時36歳の私には大きなプレッシャーに感じられました。就任時、私は全社員に経営方針を発表しました。具体的には、お客様、会社、社員をつなぐ「縁」を大切にすること。そして、それぞれが幸せになるためのバランスを考える「三方よし」の考え方です。「お客様への貢献を通じて、医療・福祉界の健全発展に資する」を弊グループの経営理念のベースとしました。

父の急逝後の迅速な対応と、社員・各団体の方々からの支援により、お客様の解約や社員の退職を招くことなく事業承継することができました。

税務会計とコンサルの両輪 医療・福祉の健全発展への貢献

ーー改めて、貴グループの事業と強みを教えていただけますでしょうか。

川原丈貴:
弊グループは大きく2つの事業から成ります。一つは税理士法人川原経営による税務会計・財務コンサルティング。もう一つは株式会社川原経営総合センターによる医療・福祉の経営コンサルティングです。

強みはいくつか挙げられますが、全ては業界特化の歴史に起因します。60年弱にわたり医療・福祉業界に特化してきたことが強みです。一般的な会計事務所では気づきにくい制度や課題を早期に把握し、対応できます。また、医療法などの業界特有の規制を理解した上で、幅広いお客様を支援しています。

さらに、MMPGなど各種団体とのネットワークも強力な差別化要因です。このネットワークを活かし、医療・福祉現場の声を政策立案者に直接届け、具体的な政策提言活動に尽力しています。現場と政策立案者の橋渡し役を担えるのは弊グループの歴史と人脈の賜物です。

ーー具体的に、どのような支援をされていますか。

川原丈貴:
病院数は以前の約1万から約8,000まで減少しました。特に懸念されるのは、地域に必要な病院が経営難で閉鎖される可能性です。6病院団体による調査(※1)では、69%の病院が医業利益で赤字になっています。そこで6病院団体と日本医師会が合同声明を出した際、私も登壇しました。病院が非常に厳しい現状にあることを訴えたのです。病院を健全に経営するために、こういった橋渡しが不可欠です。

(※1)6病院団体による調査:一般社団法人日本病院会、公益社団法人全日本病院協会、一般社団法人日本医療法人協会、公益社団法人日本精神科病院協会、一般社団法人日本慢性期医療協会、公益社団法人全国自治体病院協議会による「2024年度診療報酬改定後の病院経営状況」P7(2025年3月10日公表)

厳しい舵取りが迫られる医療・福祉施設に寄り添った支援

ーー今後の事業展開について教えてください。

川原丈貴:
税務会計の事業については、効率化と標準化を進めます。業務に使うツールなどを標準化すれば、新人でも安心して質の高い経営的なアドバイスを提供できるでしょう。

コンサルティングにおいては、サービスの質も高めなくてはなりません。経営が厳しい病院の病床機能転換や病床規模の見直しなど、より専門性の高い相談への対応力を強化します。

社会を支える誇りと使命 共に未来を創出する人材への期待

ーー貴グループではどのような人材を求めていらっしゃいますか。

川原丈貴:
医療・福祉は社会にとって不可欠な存在です。私たちはその不可欠な存在を「支えている」という誇りを持って仕事に取り組める人材を求めています。経営理念である「お客様に貢献し、以て会社と社員の繁栄を実現する」に共感できる人を仲間としてお迎えしたいと考えています。

私たちが接するお客様は、病院や診療所、福祉施設の経営者です。ご相談は税務・会計からご家族の問題まで多岐にわたります。本音で相談できる相手としてお客様に寄り添い、共に解決策を模索できる方ならきっと活躍できるでしょう。

編集後記

川原氏が大切にする「縁」と「三方よし」の理念。その言葉が今も企業文化の根幹に息づいていることが伝わってきた。専門知識やノウハウ以上に、顧客や社員との関係性を重んじる姿勢が、60年近い歴史を支えてきたのだろう。本音で相談できる相手として顧客に寄り添い、社会を「支える誇り」を共有できる人材を求める同社。その誠実な眼差しは、医療・福祉業界の未来を確かに見据えている。

川原丈貴/1991年中央大学法学部法律学科卒業。監査法人トーマツを経て、1998年4月川原経営グループ(株式会社川原経営総合センター、税理士法人川原経営)に入社。株式会社川原経営総合センターの代表取締役社長に就任。2015年、MMPG(メディカル・マネジメント・プランニング・グループ)理事長に就任。2022年、公益社団法人日本医業経営コンサルタント協会会長に就任(2024年再任)。厚生労働省中央社会保険医療協議会「医療機関等における消費税負担に関する分科会」委員等の公職歴多数。