※本ページ内の情報は2025年11月時点のものです。

産業用ボードコンピューターの開発・設計・販売を手がける株式会社電産。コンピューターの頭脳にあたるCPU関連技術を大きな強みとし、多くの大手企業から長年にわたる信頼を獲得してきた。2018年に代表取締役社長に就任した石川清一郎氏は、新卒で同社に入社以来、40年以上にわたりキャリアを築き上げてきた人物である。誰もがやりたがらない仕事にも率先して取り組み、顧客と誠実に向き合うことで信頼を積み重ねてきた同氏の歩みは、まさに会社の歴史そのものである。50周年を機に断行したリブランディングの裏側にある変革への思い、そして業界のトップを目指す未来への展望に迫る。

40年にわたるキャリアの礎となった顧客本位の姿勢

ーーこれまでのご経歴についてお聞かせください。

石川清一郎:
就職活動の頃、大学の教授から、「中小企業としては珍しくコンピューターを扱っている会社だ」と紹介されたのが、弊社を知ったきっかけでした。いくつか受けた中の一社でしたが、すぐに採用の通知をいただけたのが入社の決め手です。

新卒で入社し、最初の10年ほどはエンジニアとして、回路設計やCAD(※1)を使った基板設計などを担当しました。その後、お客様のサポート担当となり、問い合わせ対応やトラブルが発生した際のお客様対応が主な業務になりました。

(※1)CAD:「Computer Aided Design」の略で、コンピュータ上で設計・製図を行うためのソフトウェアまたはシステムのこと。

ーーサポート業務では、どのようなことを大切にしていましたか。

石川清一郎:
「お客様が本当に求めていることは何か」を常に意識していました。言葉の裏にある本質的な要望を想像しながら仕事を進めることを心がけました。たとえば、ある関西の企業様の案件で、全く関わっていなかったプロジェクトのトラブル担当を任されたことがあります。毎日のように電話でサポートをする中で信頼関係が生まれ、次のプロジェクトでも「あなたがいるなら」とお声がけいただきました。

サポート業務は、担当する人がいなかったため「やれ」と言われて始めた経緯がありますが、会社が円滑に機能するためには必要なことだと考えていました。当たり前のことを当たり前に実行してきただけで、特別なことは何もしていません。お客様がその姿勢を評価してくださったのだと感じています。

会社を守るための社長就任と50年目の大改革

ーー社長就任の経緯についてお聞かせください。

石川清一郎:
前社長から、「体調のこともあって退任を考えている」との意向が示されたことがありました。その時、不思議と迷いなく、「これは自分がやらなければ」と感じました。「自分が真摯に取り組まなければ、この会社はなくなってしまうかもしれない」という強い責任感が湧いてきたのです。もちろん、他に候補がいなかったわけではありません。ですが、その時の状況を冷静に見て、「自分が社長になるのが、この会社にとって一番良いだろう」と自分自身で納得できたんです。だから、「私がやります」と、ごく自然に言うことができました。

ーー社長就任後、どのようなことに取り組まれましたか。

石川清一郎:
就任当初は大きな変革はしませんでしたが、会社を存続させるためには変革が必要だという思いは常に持っていました。そんな中、社員から「50周年を機にリブランディングはどうか」と提案を受けたとき、「それは良いアイデアだ」と直感したのです。変えるなら中途半端ではなく、一気に実行した方が良いと考え、リブランディングを決断しました。

内容としては、本当に“全て”を新しくした、という感じです。お客様の目に触れるロゴやホームページのデザインを刷新したのはもちろんですが、一番こだわったのは会社の根幹となる「ビジョン・ミッション・バリュー」」の策定です。これは私自身が、「今の会社に足りていないものは何か」「社員にはどういう意識を持って仕事に取り組んでほしいか」という点を突き詰めて考え、言葉に落とし込みました。

会社が劇的に変化したとまだ断言はできませんが、手応えは感じています。外からの反応で言えば、メディアに取り上げていただく機会は確実に増えました。そして社内でも、私が新しい「ビジョン・ミッション・バリュー」に込めた思いを、少しずつですが理解してくれる人が増えてきたように思います。

確かな技術力を土台とした現状への危機意識

ーー貴社の事業の現在地と、今後の展望についてお聞かせください。

石川清一郎:
弊社は、産業用のボードコンピューターの開発・設計・販売を行っており、特にコンピューターの頭脳にあたるCPU(※2)関連の技術が強みです。しかし、お客様が永続的に弊社を選んでくださる保証はありません。今のビジネスをさらに広げていかないと、会社そのものが立ち行かなくなる可能性があるという危機感を常に持っています。そのため、既存のお客様との関係を深化させると同時に、新規開拓、そして新商品の開発にも力を入れています。

現在のビジネスを続けることも大切ですが、何か新しい事業を立ち上げ、その分野で業界のトップになりたい。まだ具体的な構想はありませんが、だからこそ社員全員からアイデアを募っている最中です。

CPU(※2):コンピュータの「頭脳」とも呼ばれる中央演算処理装置のこと。

社員と共に描く業界トップという揺るぎない目標

ーー目標達成に向け、どのような人材を求めていますか。

石川清一郎:
弊社は「業界トップ」を目指しています。その目標を達成するには、新しい力が必要です。過去、あまり採用ができていなかった時期があり、ベテラン社員が増えてきているので、リブランディングを機に若い方々にもっと参画していただきたいと考えています。特にこれからの業界ではAIが必須技術になります。お客様から言われたものを提供するだけでなく、私たちから積極的に提案できるような知見を持ったエンジニアの方を求めています。

ーー社長を突き動かす原動力と、若者へのメッセージをお聞かせください。

石川清一郎:
「会社がよくなれば、自分にもよいことが返ってくる」という思いがずっと根底にあります。私だけが良くなっても意味がない。会社全体が良くなることで、金銭だけではない満足感や人との繋がりといった見返りがあると信じてここまで歩んできました。ですから、これから入社される方には、ぜひ「この会社を動かしてやろう」くらいの気概で来ていただきたいです。

私たちは常に新しいことに挑戦したいと思っています。現在の事業以外でも、「このような事業を手がけたい」という提案があれば、真剣に検討し、実現できるような形に持っていきたいと考えています。

編集後記

「当たり前のことを当たり前にやってきただけ」と石川氏は何度も繰り返した。しかし、その言葉の裏には、誰もがやりたがらない仕事にも向き合い、顧客の期待を超えようと努力を重ねてきた誠実な道のりがある。50周年を機に行われたリブランディングは、変革への強い意志の表れだ。石川氏が築き上げた信頼という揺るぎない土台の上で、同社が業界のトップへと駆け上がる未来に期待したい。

石川清一郎/1962年生まれ。電気通信大学短期大学部卒業後、1985年に株式会社電産へ入社。技術者としてキャリアを積んだ後、2018年に代表取締役社長に就任した、生え抜きの経営者。