
リユース業界の健全化と透明性の向上を掲げ、急成長を遂げる株式会社タイムレス。2024年に代表取締役社長 CEOに就任した馬場浩太氏は、10人規模の小さな会社から400人規模の企業へと成長させた立役者の一人だ。業界内で唯一無二のワンストップモデルを構築。参画が難しいといわれる百貨店への出店を拡大するなど、常に革新的な取り組みを続けてきた。リユースをより身近で安心できる業界にするため、どのような戦略と理念で事業を展開しているのか、詳しく話を聞いた。
業界の先輩による指導で築いた宝石鑑定の基盤
ーー貴社に入社された経緯をおうかがいできますか。
馬場浩太:
通信系の企業で1年ほど営業を担当した後、知人でもあった当時の社長に誘われて、ダイヤコーポレーション(現・タイムレス)へ転職しました。私は、誰と働くかを重視しており、小規模ながら生き生きと楽しそうに働く社員の姿に惹かれ、自分もこの環境に入って成長したいと感じたのが入社のきっかけです。
当時、私は社内で唯一の宝石担当で、指導してくれる人がいませんでした。そのため、現場で他社の先輩方に「ダイヤモンドについて教えてください!」「これってエメラルドですよね!」と初歩的な部分から直接尋ね、相場の考え方や査定ポイント、業界のルール、挨拶すべき人物まで教えていただきました。競合にもかかわらず、惜しみなく知識を分け与えてくれた業界の先輩方の存在が、今の私の礎になっています。
4つの転機が築いた経営者への道のり
ーーこれまでのターニングポイントについて教えてください。
馬場浩太:
大きな転機は4回ありました。1回目は入社1~2年目、リユース業界大手のコメ兵との協業です。この経験を通じて、業界の構造や常識を深く学べました。
2回目の転機は、その協業が解消されたときでした。それまでは自分の成果や報酬を最優先で考えていましたが、この出来事を機に会社の利益や成長を第一に考えるようになりました。幹部会に参加するようになったのもこの頃からです。この経験が、後の代表就任につながる思考と行動を育んだと感じています。「自分たちが会社を支えるんだ」という責任感が芽生えました。
3回目は、2020年の株式会社BuySell Technologies(バイセルテクノロジーズ)グループへのM&Aです。経営視点やビジネススキルの必要性を強く実感し、ビジネスの知恵や知識がさらに強化されたと感じます。そして4回目は、社長就任です。
ーー代表に就任された経緯をお聞かせください。
馬場浩太:
バイセルの岩田会長や、弊社前社長の太田氏から、以前より打診をいただいていました。自分の何が評価されたのか、「完璧」に分析できていません。マーケティングや商品知識において、もっと優秀なメンバーが社内にはたくさんいます。ただ、業界内の広い人脈や業界知識があること、そして得意なことは得意な人に素直に任せられる姿勢が評価されたのかもしれません。
成長を支える 買取サロンの百貨店出店拡大

ーー貴社事業の特徴を教えてください。
馬場浩太:
弊社は「リユースの総合商社」としての位置づけを目指し、買取からオークション、卸売り、小売りまでを一社で担うワンストップモデルを構築しています。このようなモデルを持つ企業は国内でも数えるほどしかなく、さらにリアルとオンラインの両方を展開している点は、弊社の大きな強みです。リアル店舗に関して、百貨店内に買取サロンを出店しています。百貨店への出店は非常に難易度が高いのですが、現在36店舗まで拡大できました。(※2025年8月現在)
私たちが目指すのは、お客様が大切にしてきた商品を、その商品に込めた「想い」とともに、安心して次の方にお渡し頂ける場所を提供することです。丁寧に、誠実に、愛情をこめて取り組む姿勢が、百貨店の担当者様にもお客様にも響いているのだと感じています。
オークションでは、リアルとオンラインの両方を運営しています。リアルな対面の場には、人材育成の場としての価値があると考えています。特に、若手が実践を通じて目利きや商談を学ぶには、リアルの熱量が欠かせません。業界全体の底上げにもつながると信じています。
今後もリアルとデジタルを融合させながら、業界の健全化と、自社の持続的成長を両立させていきます。
ーー今後の展望について、どうお考えですか。
馬場浩太:
リユース業界を、もっと開かれた透明性のある業界にしたいと考えています。2009年に弊社が始めた「レストランオークション」(平場のブランド小物市場のこと)も、旧来の市場に風穴を開けたいという思いから生まれました。当時は、外国人参加が制限されたり、後輩は声を上げづらかったりと、フェアとはいえない状況だったのです。そうした空気を変えて、透明性と公平性を担保した取引の場を提供することが、私たちの使命と認識しています。
また、リユースは、サステナブルで社会的意義の高い事業です。多くの方にこの良さを知ってもらい、リユースをもっと身近に、消費者にも若い世代にも「安心して飛び込める業界」にしていきたいですね。
今後は、オークションの取扱高日本一を目指すとともに、リユースをもっと身近にしていきたいと考えています。5年後、10年後も、「リユースが身近になるとは、どういう状態なのか」を考え続けられる組織でありたいです。そのためには、店舗拡大や海外展開も進めながら、未来を見据えた活動を常に計画・実行していく必要があると考えています。
リユース業界のナンバーワンに!
ーー人事の取り組みについて教えてください。
馬場浩太:
5年前までは社員30名規模でしたが、現在は400名規模まで拡大しています。この急成長に伴い、人事制度の再構築を進めているところです。給与グレードや各部門のミッションの可視化、新人事制度の導入準備も進行中です。社員一人ひとりの成長を支える体制づくりに注力しています。
リユース業界の営業では特に「恐れずにチャレンジできるかどうか」が大切です。特に弊社の営業は、既製品を売るのではなく、値札のない商品に自ら価値を見い出して仕入れます。「相場を読む力」と「自分の判断を信じて動けるかどうか」が重要です。その力を養うのがリアルオークションで、多国籍のバイヤーが集まり、リアルな市場の熱量やトレンドを肌で感じられます。オンラインでは得られない学びがリアルの現場にはある。それが、弊社の営業力の源泉であり、成長の舞台だと考えています。
ーー貴社では、どのような人材を求めていますか。
馬場浩太:
現在は圧倒的にキャリア採用のメンバーが多いですが、新卒も毎年30名前後を継続的に採用しています。平均年齢は27~28歳と若く、私自身も37歳で代表というポジションを任されています。成長意欲がある方には最適な職場だと思います。
「リユース業界でナンバーワンのグループに身を置ける」ということが、弊社で働く魅力の一つです。事業を一緒に考え、戦略を練ることができる人材を求めています。重要なのは年齢や経験ではなく、事業に深く関わり、戦略を実行し、推進できる力です。情熱を持って進められる方にぜひ仲間になっていただきたいです。
編集後記
馬場氏の語る言葉には、リユース業界への深い愛情と、この業界をより良いものにしていきたいという強い使命感が宿っている。リアルなオークションの場を重要視し、そこで人材を育成していくという考え方は、単なる効率化だけでなく、人としての成長を重んじる彼の経営哲学が垣間見えるようだ。業界への深い理解に裏打ちされた改革の実行力と、現場主義のバランス感覚は、今後のリーダー像として多くの人に示唆を与えることだろう。

馬場浩太/2012年8月、株式会社ダイヤコーポレーション(現・株式会社タイムレス)に入社。営業担当(仕入れ)、オークションの運営(商品管理やオークショニア)、総合買取サロンタイムレスの店舗スタッフ(1号店の吉祥寺の立ち上げにも参画)を経験。2022年1月、常務執行役員就任。会社全体を管掌し、事業と企業組織全体の成長を推進し、あわせてグループ経営にも参画。2024年7月、代表取締役に就任。