リフォーム業界に蔓延する悪質な業者から顧客を守り、業界の健全化を目指す株式会社やまもとくん。同社は戸建て住宅の外壁・屋根塗装に特化し、業界の常識を覆す50年保証を強みに、顧客から厚い信頼を獲得している。代表取締役社長の山本雅俊氏は、音楽家の道からリフォーム業界へ転身し、業界の課題を解消すべく、25歳で起業を果たした。YouTube番組「人財版令和の虎」に「虎」として出演するなど、多方面でその名を知られる山本氏。その熱い思いと事業の展望について話を聞いた。
音楽の道から営業へ 業界の課題と独立への決意
ーー社会人としての最初のキャリアについてお聞かせください。
山本雅俊：
もともとは音楽家を目指して専門学校に通い、卒業後もバンド活動をしていました。しかし、現実の壁に直面し、22歳で就職を決意します。人と接することが得意だったので営業職を希望し、エクステリアの商社に入社しました。
最初の会社は評価が給与に反映されにくかったため、実力を評価してもらえる会社で仕事がしたいと考えます。そして23歳でリフォーム会社へ移りました。そこでは個人宅への訪問営業を担当し、入社1カ月目からトップの成績を収め、この仕事が天職だと感じました。
ーートップの成績を維持できた秘訣はどこにあったのでしょうか。
山本雅俊：
未経験だったので、まずは成功している上司の教えを100%実践することを徹底しました。「この方が効率的だ」などと独自の解釈を加えることはしませんでした。まずは成功の方程式を完全に自分のものにすることが重要だと考えたからです。言われたことを素直にやり遂げた結果、自然と売上はついてきました。
ーートップセールスとしてご活躍された後、独立に至るまでにはどのような経緯があったのでしょうか。
山本雅俊：
入社から1年足らずで課長、店長へと昇進し、24歳の時には取締役就任の話もいただきました。しかし、当時の会社は訪問営業が主体でした。私がWebからの問い合わせを増やす仕組みを提案したところ、「既存のやり方が壊れるかもしれない」と否定的な反応でした。
変化を恐れる会社の姿勢に将来性を感じられなくなりました。さらに、業界の不透明な慣習も目の当たりにしてきました。「もっと自由に、志を同じくする仲間たちと自分たちの理想を追い求めたい」。その思いが強まり、25歳で独立を決意しました。
「有言実行」の原点 仲間の旅立ちを経て得た信念
ーー独立当初、ご苦労されたことはありましたか。
山本雅俊：
創業当初は全く苦労しませんでした。自己資金で始め、初日から売上が立ちました。しかし本当の苦労は、事業が軌道に乗った後に訪れます。一番辛かったのは、仲間との別れです。一生懸命育てた社員たちが、「自分も山本社長のようになりたい」と独立していくことでした。
彼らが夢を見つけられたのは良いことですが、やはり寂しさはありました。自分が前の会社を辞めて独立した経緯があるため、仕方ない面もあります。それでも、仲間との別れは本当に苦しいものです。
ーー仕事において一貫して大切にされていることは何ですか。
山本雅俊：
一番大切にしているのは「有言実行」です。自分の目標や「いつまでにこうする」という宣言を、あえて周囲に伝えます。そうすることで、自分にプレッシャーをかけています。もう一つは、目標に対して100%やり遂げることです。途中で諦めてしまう人もいますが、私は「絶対に成し遂げる」という強い意志を持ち、高速でPDCAを回し続けます。
事業の核と独自性 「外装特化」と「超長期保証」
ーー貴社の事業内容と強みについて教えてください。
山本雅俊：
主要事業は、戸建て住宅の外壁と屋根のリフォームです。多くのリフォーム会社は「総合リフォーム」を掲げ、ターゲットが曖昧になりがちです。しかし私たちは、あえて外壁と屋根に特化しています。なぜなら、住宅の外装は、人間でいえば頭部のようなものだからです。最も重要な器官を守る大切な部分といえます。雨漏りなどで構造が傷む前に、まず外を守ることが最も重要だと考えています。
新築の家の外壁や屋根には、塗装によるコーティングが施されています。いわば、紫外線や雨風から建物を守る保護膜の役割を果たしている状態です。この効果が切れると、素材自体が水分を含んで劣化し、ひび割れなどの原因になります。一般的には10年周期での再塗装が推奨されます。この事実を知らない方も多く、私たちは専門家として正しい情報をお伝えすることも使命だと考えています。
私たちは、その安心をより長く提供したいと考えています。一般的なリフォーム保証は5年から10年が主流です。しかし弊社は、業界でも画期的な「50年トリプル安心保証」を実現しました。
これは、自社による「施工保証」、塗料などの「材料メーカー保証」に加え、国土交通省が指定する「保険会社（第三者機関）の保証」を組み合わせた仕組みです。万が一、弊社が保証を継続できなくなった場合でも、第三者機関がお客様の住まいを守り続けます。
業界健全化への挑戦 3年後の全国展開とブランド確立
ーー今後の事業展開について、どのようにお考えですか。
山本雅俊：
「リフォームといえば！『やまもとくん』」と誰もが想起するブランドを確立したいです。そして、業界に蔓延する悪質な業者を少しでも減らしたい、という強い思いがあります。消費者が「どこに頼めばいいか分からない」という課題を解決したい。そのためにフランチャイズ展開に力を入れています。3年後には、全国のどこから問い合わせがあっても対応できる体制を築く計画です。現在は関東圏が中心ですが、全国のお客様の期待に応えられる状況を一日も早く築きたいと考えています。
ーー事業拡大に向けて、どのような方に仲間として加わってほしいとお考えですか。
山本雅俊：
現在、事業拡大に伴い、リフォームの営業経験者や施工管理の経験者を求めています。一番大切なのは、素直さです。弊社では、新しいツールや仕組みが次々と生まれます。ですので、過去の成功体験に固執しない姿勢が大切です。お客様のためになるなら、新しいことを素直に吸収し、実践できる柔軟さ。そんな姿勢を持つ方と一緒に、業界の未来を変えていきたいです。
編集後記
音楽家を目指した青年は、営業の世界で業界の深い課題に直面し、仲間と共に理想を追い求める挑戦者となった。山本氏の言葉の端々からは、業界を健全化したいという燃えるような情熱が感じられる。同時に、仲間を心から大切にする温かさも伝わってきた。独自のサービスと発信力で業界の常識に挑み続ける姿。それは、多くの若者や同業者に勇気と希望を与えるだろう。
山本雅俊／1989年埼玉県生まれ。音楽専門学校卒業後、音楽活動中心の生活を送る。その後、エクステリア商社を経てリフォーム会社へ転職。業界の不透明な実態を目の当たりにし、2015年に株式会社やまもとくんを創業し、代表取締役に就任。「リフォームといえば！やまもとくん」を掲げ、業界改革と顧客満足の両立を目指し全国で精力的に活動している。公式X（@Yamamoto__M）。
