※本ページ内の情報は2026年1月時点のものです。

株式会社ジーベックテクノロジーは、独自のセラミックファイバー技術を核に、金属加工における「バリ取り・研磨」の自動化ツールで世界トップシェアを誇る。同社を率いる代表取締役社長の住吉慶彦氏は、その経験を礎に「Enjoy Life, Enjoy Working」という理念を掲げる一方、事業においては一切の妥協を許さない「泥臭さ」を貫く。本記事では、手作業バリ取りや研磨といった作業をできる限りなくし、人々が本来もつ創造性を発揮できる社会の実現を目指す住吉氏の思いと、その先に見据える未来に迫る。

技術開発から市場活用へ 視点変革のキャリア形成

ーーどのようにしてキャリアをスタートされたのでしょうか。

住吉慶彦:
私は20歳の頃から、一貫して「自分で事業を興したい」という思いがありました。大学院では「盲導犬ロボット」開発のプロジェクトを自ら立ち上げました。その過程で技術開発そのものよりも「技術をどう活かすか」というマーケティングの面白さに惹かれ、就職先を商社に決めました。

ーー商社でのご経験は、現在の経営にどう活かされていますか。

住吉慶彦:
商社時代に社内ベンチャーの立ち上げに参画できたことが、非常に大きな経験となっています。経理から人事、知財戦略まで、事業に関わるあらゆることを20代で経験させてもらいました。特に、技術をどう事業として組み立てるか、という視点はその時に徹底的に学びました。

メーカーの技術者は自分たちのコア技術を起点に考えがちですが、私たちは常に市場から入ります。「こういうことをしたいから、この技術が必要だ」という発想で、人や研究先を探すのです。技術そのものに善し悪しはなく、いかにして社会の役に立つ商品やサービスに昇華させるかが重要であるという考えは、今も全く変わっていません。

ーーその後、どのような経緯で貴社への入社を決意されたのでしょうか。

住吉慶彦:
商社を退職後、ベンチャーキャピタルに入りましたが、心からやりたいと思える事業や経営者には出会えませんでした。そんな時、父が創業し、その逝去後に当時の経営幹部が事業を継承していた弊社から、入社の誘いを受けたのです。事業分野に強い興味があったわけではありません。しかし、製品がユニークであり、真面目な社員が多いことも知っていました。長男として父が始めた事業を守ることに意味を見出し、入社を決意しました。

自由と柔軟性が生む 社員の自律的な働き方

ーー社長に就任された当時、どんな心境でしたか。

住吉慶彦:
ユニークな素材を共に開発し、製造も委託している化学メーカーとのパートナーシップは、何よりも大事に守り続けるべきだと考えました。一方で、変えるべきことも山積みで、当時は営業担当が数名しかおらず、組織機能がほとんど整備されていない状態でした。

その中でも私が強くこだわったのは、会社を「開発会社」にすることです。パートナーの開発力に頼るだけでなく、自分たちで開発機能を持つ。その実現のため、2011年に最初の開発メンバーを迎え入れたのです。

ーー経営者として大切にされている価値観や、困難を乗り越える原動力は何ですか。

住吉慶彦:
私の価値観の根幹をなしているのは、社是である「Enjoy Life, Enjoy working with XEBEC.」です。仕事を通じて人生は豊かになるという考え方であり、その実現のためには「泥臭くやること」が欠かせません。最初から効率よくできることなどなく、数をこなさなければ本質は見えてこないのです。

たとえば、かつて海外営業を担当した際は、アメリカの専門商社100社にサンプルを送付し、電話をかけ続けるなど、考えうる全てを試しました。採用活動も同様で、毎年2万件以上のデータベースに目を通し、ようやく数名の採用に至る、という状況です。この粘り強さが、他社との違いを生み出す源泉だと考えています。

ーー社員の方々が「Enjyo Life, Enjoy Working」を実現するために、どのようなことを大切にされていますか。

住吉慶彦:
自由と柔軟性を大切にしています。服装も自由ですし、時間単位で有給を取得できる制度も整えています。働き方も在宅か出社か、社員が自分で選択できるようにしています。仕事のやりがいは、自分がどれだけコントロールできるかにかかっていると思います。私たちは、社員一人ひとりが自律した「自律分散型組織」を目指しています。

現場の担当者が最も状況を理解しているため、最終的には現場で決断できる組織が理想です。そのために、挑戦することを推奨し、たとえ失敗してもそこから学び、改善しようとする姿勢を評価する文化を育みます。

文化と信念を共有する 共創による成長戦略

ーー貴社の事業を通じて、どのような価値を提供していきたいとお考えですか。

住吉慶彦:
私たちは、人が「人でなければできない仕事」に集中できる社会を実現したい、と考えています。その実現に向けた第一歩が、主力製品が解決する「バリ取り」作業の自動化です。このバリ取り作業は、製品の品質担保のためには不可欠である一方、ルーティン性が高く、人の創造性を発揮しにくい作業です。また、身体への負担も大きく、ケガや故障のリスクも伴います。

私たちは、こうした作業の自動化を通じて、バリに煩わされない世界、そして、人がより創造的で価値ある仕事に集中できる環境を実現したいと考えています。人の可能性を最大限に活かせる社会の実現、そして関わる全ての人が「Enjoy Life, Enjoy Working」を感じられること。この長期的な目標こそが、私たちの事業の存在意義(Why)であり、日々の活動の原動力となっています。

ーー貴社が目指す、社会における理想の姿についてお聞かせください。

住吉慶彦:
バリ取りや研磨の領域において、“一番信頼できるサプライヤー”として世界中の方々に認知される存在になりたいです。それは、単に現在の製品が良いという評価だけでなく、「ジーベックに任せれば、きっとこれからも期待以上の価値を提供してくれるだろう」という、未来への期待感をも含んだ信頼です。私たちは常に不完全ですが、努力し、自己改革を続ける姿勢を見せることで、お客様やパートナー、そして社員同士の信頼関係を築いていきたいと考えています。

ーーそのビジョン実現のために、今後どのようなことに取り組んでいきたいですか。

住吉慶彦:
私たちが目指すのは、バリ取り作業の自動化を通して「バリに煩わされない世界」を実現すること。そのためには、社内のメンバーだけでなく、多くの協力者の力が必要です。ここで言う「協力者」とは、単なる取引先にとどまらず、ジーベックの文化や目指す世界に共感し、ともに挑戦してくれるすべての方々を指しています。例えば、実際に現場でバリ取りの自動化に取り組むユーザの方たちも、私たちにとって大切な協力者です。

こういった方々と共に、バリに煩わされない世界を目指す「共創」を生み出し、その「共創」の輪を広げていくことが、今後の成長の鍵になると考えます。

私はよく「目的地以上に“誰とバスに乗るか”が重要だ」と話すのですが、まさにこの道のり(プロセス)そのものを共に楽しめる、そう思える方々と一緒に成長していきたいと考えています。

編集後記

「Enjoy Life, Enjoy Working」という理念の裏には、目標達成まで決して諦めない、驚くほどの「泥臭さ」があった。住吉氏の言葉の端々からは、技術を市場価値へと転換させる鋭い視点と、仕事を通じて人生を豊かにするという確固たる思いがうかがえる。そしてこの精神は、経営層だけでなく、現場の隅々にまでしっかりと根を下ろし、社員一人ひとりの行動指針として息づいている。バリ取りという一つの作業の先に、人の可能性を信じ、より良い社会を創ろうとする強い「Why」が存在する。社員の挑戦を促す自律的な組織文化を土台に、今後は社外の協力者を巻き込んだ「共創」を加速させる同社。そのバスがどこへ向かうのか、これからも注目していきたい。

住吉慶彦/1972年生まれ。1998年3月慶応義塾大学院卒(電気工学科修了)。研究テーマは盲導犬ロボットの開発。1998年4月三井物産株式会社入社。原料の輸入国内販売事業、ナノテク研究開発ベンチャーの立ち上げ・事業推進、インキュベーション事業(VC事業)に従事。2005年1月海外営業としてジーベックテクノロジーに入社。国内外の金属加工現場にて当社ツールの導入、市場開拓。その他人材採用、開発戦略等も担当。2007年10月代表取締役社長に就任。