※本ページ内の情報は2025年12月時点のものです。

IT企業の技術的課題解決、特にクラウドコストの最適化で独自の地位を築く株式会社DELTA。同社が提供するのは、成果報酬型のクラウドコスト削減サービス「CTO Booster」である。顧客に金銭的リスクを負わせない画期的なビジネスモデルを特徴とし、業界トップクラスの実績を誇る。設立からわずか数年で急成長を遂げる同社の軌跡と、日本のIT業界の未来を見据える丹氏のビジョンに迫る。

孤独なCTOとの出会いから生まれた独自のビジネスモデル

ーー現在の事業領域に着目された経緯を教えてください。

丹哲郎:
所属しているグループで、スタートアップへの出資やM&A(企業の合併・買収)先の企業価値を高める業務に携わっていました。その一環で、ある出資先のクラウドコスト削減に取り組んだところ、年間3600万円ものコストを削減できたのです。しかし、それに対して私たちが得ていた報酬は時給数千円程度。提供価値との間に大きなギャップを感じたのが最初のきっかけです。

この経験から、削減コストの一部を成果報酬としていただくモデルを考案しました。これならお客様は損をせず、私たちも正当な対価を得られます。この事業を本格化するために独立したという経緯です。

ーー事業化を進める中で大切にされている価値観は何ですか。

丹哲郎:
弊社では「孤独なCTOに寄り添う」ことを第一に考えています。グループ外のお客様と接する中で、技術部門のトップであるCTOの方々が、実は大きな孤独を抱えていることに気づいたからです。彼らは技術に関する全責任を負いながらも、全ての領域に精通しているわけではありません。

特にクラウドコストの削減は、多くの企業にとって初めて直面する課題です。これまでの開発は順調でも、気づけばコストが膨らんでいたというケースが多く、社内にノウハウもありません。メンバーに任せることも難しく、誰にも相談できないまま責任だけが重くのしかかります。そんな状況を目の当たりにし、彼らに心から寄り添い、味方になれるサービスを展開したいという思いが強く芽生えました。

費用対効果の懸念を払拭し、圧倒的な実績を誇る強み

ーー「CTOに寄り添う」という考え方は、主力サービスにどう反映されていますか。

丹哲郎:
弊社が提供するクラウドコスト削減サービス「CTO Booster」は、成果報酬型のモデルである点が最大の強みです。お客様が削減できたコストの中から成果報酬をいただく仕組みのため、費用対効果を心配することなく、安心してサービスをご利用いただけます。

コスト削減というモデル自体は珍しくありません。しかし、私たちが積み上げてきた成果の数と削減額の大きさは、他社を圧倒していると自負しています。これは、メンバーの高い技術力やノウハウ、そしてチームで成果を追求する文化の賜物です。日本で最もクラウドコストを削減できるサービスの一つであると、私たちは確信しています。

ーーお客様との関係性を築く中で、特に印象に残っているエピソードはございますか。

丹哲郎:
以前、弊社サービスをご利用いただいたお客様の言葉が印象に残っています。「DELTAさんなら、私たちが抱えている別の課題も面白いビジネスにしてくれるはず」と、おっしゃっていただきました。

その方は、買収した会社のシステム統合という新たな課題を抱えていらっしゃいました。私たちは自社で特定の製品を持つ開発会社ではありません。だからこそ、あるお客様の課題を、他のお客様にも応用できる普遍的な解決策へと発展させられます。「CTOに寄り添う」という姿勢がお客様に伝わったと感じた、大変嬉しい一言でした。

ーー現在感じていらっしゃる課題はありますか。

丹哲郎:
意外に思われるかもしれませんが、現在の事業拡大における課題は営業です。弊社サービスは大きなコスト削減を実現できる分、成果報酬額も高額になることがあります。そのため、価値を十分にご理解いただく前に、金額の大きさだけで判断されてしまうケースがあります。成果が出すぎるがゆえの「諸刃の剣」ともいえます。

お客様にとっては、本業に集中していただく方がはるかに有益です。その価値をいかに伝えていくかが現在の課題だと認識しています。

失敗は個人の責にあらず 課題を構造で捉える問題解決のアプローチ

ーーどのような組織づくりを心がけていますか。

丹哲郎:
弊社は人事評価制度を事業計画と完全に連動させています。事業計画が達成されれば、その成果は全社員の給与に反映される仕組みです。これにより、社員の評価の方向が私個人に向くのではなく、会社というチーム全体を「勝たせる」ことに向かいます。個人が自分の成果だけを追うのではなく、「自分たちの船」を自分たちで漕ぎ、全員で目的地を目指すのです。チームを勝利に導くための合理的なアシストが自然に生まれる文化が、私たちの強みです。

ーー丹社長ご自身は、困難な状況とどのように向き合われていますか。

丹哲郎:
一つは、仲間の存在です。取締役COOをはじめ、決して諦めずに次々と新しい施策に挑戦し続けてくれるメンバーの存在は本当に心強いです。

もう一つは、物事の捉え方です。何か失敗したときに、自分を責めることはしません。「なぜこの仕組みでは問題が起きたのか」と、課題を構造的に捉え直します。少し乱暴な言い方ですが、「私は悪くない。悪いのは仕組みだ」と考えるのです。そうすることで、感情的にならず、本質的な原因究明と解決策の発見につなげられます。

ビジネスを創造する仲間と共に歩む次の舞台

ーー事業と組織が成長していく先に、どのような会社の未来像を描いていますか。

丹哲郎:
三つの軸で考えています。一つ目は、日本のIT業界における「お客様の味方」というユニークな存在になること。二つ目は、日本のIT貿易赤字の改善に貢献すること。私たちのコスト削減は、この大きな社会課題の解決にもつながると信じています。

そして三つ目は、エンジニアとして真に稼げる人材を輩出する企業になることです。エンジニアは本来、時間で稼ぐのではありません。自らの力で売り上げをつくり、経営目線を持った人材を育てていきたいと考えています。

ーーその未来像を実現するための、具体的な目標について教えてください。

丹哲郎:
まずは2028年までに、年商30億という目標を掲げています。これを社員数40〜50名という少数精鋭の組織で達成したいと考えています。単純な人数の増加を事業成長の源泉にはしません。常に高い生産性を維持し、お客様が共通して抱える課題を解決する新しいサービスを次々と生み出す。そうして収益の柱を複数育てていく計画です。「孤独なCTO」という原点に立ち返り、彼らが本当に困っていることは何かを追求し続ければ、目標は達成できると考えています。

ーー最後に、目標を実現していく仲間として、どのような方に来てほしいとお考えですか。

丹哲郎:
私たちは今、新卒や第二新卒の採用に力を入れています。これから新しい事業を創造していく上では、特定のスキルに固執しない柔軟な発想や思考力が必要です。そして、事業開発にまで踏み込めるような意欲が不可欠だと考えています。

コスト削減事業で培った専門性ももちろん重要です。しかしそれ以上に、エンジニアリングの枠を超えてビジネスを創造していく面白さを、共に味わっていきたいのです。そうした思いに共感してくれる方と、ぜひ一緒に働きたいです。

編集後記

「孤独なCTOに寄り添う」という信念。それを実現するために設計された、顧客にリスクを負わせない成果報酬型のビジネスモデル。そして、個人の成果ではなく「チームの勝利」を最大化する組織文化。同社の急成長の背景には、この三位一体となった揺るぎない経営の軸が存在する。丹氏が目指すのは、単なる技術支援企業の枠を超えた未来だ。エンジニアが自らの力でビジネスを創造し、真に稼げる未来を切り拓く。同社の挑戦は、日本のIT業界におけるエンジニアのキャリアに、新たな可能性を示すものとなるだろう。

丹哲郎/2015年、東京大学教養学部卒業後、ERPパッケージの会社へ入社。顧客折衝・設計・開発・評価・デリバリーまで含めて一貫した開発業務に従事。2019年、SEVENRICH GROUPに入社し、目の前のCTOを支えるための技術支援事業を立ち上げる。2022年、株式会社DELTAを創業し、代表取締役CTOを務める。