
イートアンドホールディングスグループにおいて、EC(電子商取引)チャネルを一手に担う株式会社ナインブロック。2025年10月には餃子ECを手掛ける有限会社オーパスのM&Aを実行し、ポートフォリオの強化を加速させた。明治製菓株式会社(現・株式会社明治)での海外経験やEC立ち上げ、株式会社フルッタフルッタでの経営に近い立場での経験を経て現職に就いた代表取締役の池田道隆氏に、これまでの歩みと今後の展望についてうかがった。
幅広い職務で得た経営の全体像
ーーまずは池田社長のキャリアの原点についてお聞かせください。
池田道隆:
大学卒業後、明治製菓株式会社に入社し、国内営業を10年経験しました。その後、希望していた中国・上海に5年間駐在しました。営業だけでなく、物流や商品企画など幅広く経験しました。日本のやり方とは異なる市場のスピード感や、決めたことへの推進力を肌で感じました。この「幅」を持った経験が、自分の性に合っていると感じる大きなきっかけとなりました。
ーー中国から帰国された後は、どのような業務を担当されたのですか。
池田道隆:
ちょうど帰国のタイミングで、日本本社にEC組織を新たに立ち上げることになりました。その立ち上げメンバーとして2、3年ほど携わりました。その後、より経営に近いところで会社全体の動きを学びたいと考え、株式会社フルッタフルッタに転職しました。
ーー株式会社フルッタフルッタではどのような経験をされましたか。
池田道隆:
営業から管理系まで、開発部門以外のほぼ全ての責任者を経験することができました。会社全体の動きを学べたのは大きかったです。また、責任者として立場が上がるにつれ、ビジョンを重要視するようになりました。会社がどこへ向かうのかを深く理解し、メンバーとベクトルを合わせることの重要性を学びました。
事業拡大の鍵となる分野との経験の合致
ーー株式会社イートアンドホールディングスへは、どのような経緯で入社されたのですか。
池田道隆:
フルッタフルッタで一通り学ぶ中で、「自分の“尖った武器”は何か」を考えました。ちょうどその時、イートアンドホールディングスが中期経営計画で、事業成長を加速させるための重要ポイントとして、「EC」「海外」「M&A」を掲げているのを知りました。中期経営計画の重要ポイントは私が経験してきたことと一致します。これらの領域で自分のキャリアをさらに深めたいと思い、入社を決めました。
ーー入社されてからは、どのような役割を担われたのでしょうか。
池田道隆:
最初はホールディングスとして、グループ全体のECや海外の会社をサポートする役割でした。ただ、私自身が事業寄りの人間なので、「ぜひ現場で事業を推進したい」というリクエストを以前から出していました。半年ほど外からグループ会社を見ている中で、「じゃあ、ここの立て直しをやってみなさい」という形で、ナインブロックへ着任することになりました。
経営者として意識する「巻き込む力」と「フルスイング」
ーー経営者として、現在メンバーの皆さんに伝えていることはありますか。
池田道隆:
最近、特に伝えていることが二つあります。一つは、「いかに周りを巻き込むか」ということです。一人でできることには限界があります。特に私たちのような組織では、ホールディングスをはじめ、周囲や関連部署を動かすことで、自分たちだけではできない大きな仕事ができると伝えています。
もう一つは、「いい球が来た時に、いかにフルスイングできるか」ということです。ECの世界は変化が激しく、特にフルスイングしないと当たらないことも多い。「いける」と思ったことに対しては、すぐに優先順位を上げて対応できるか。この二つは常々意識するように話しています。
餃子ブランドを揃えるポートフォリオ戦略

ーー有限会社オーパスをM&Aした狙いなどを教えてください。
池田道隆:
ナインブロックは、グループ全ブランドのECチャネルを一手に担う会社です。中期経営計画の最終年度である2026年度に30億円という中期目標があります。その達成手段の一つとして、「美食点心ぎょうざ館」の屋号で、自社工場で製造した冷凍餃子をインターネット通販で販売しているオーパスのM&Aを実行しました。
「大阪王将」(中華全般)、「札幌餃子製造所」(ギフト用)に加え、「美食点心ぎょうざ館」(オーパス)が加わることで、きれいなポートフォリオが組めると判断しました。オーパスは餃子一本でリーズナブルな価格帯のボリュームゾーンを狙います。
また、小回りの利く工場も持っていますので、トレンドを捉えた商品をテスト的に開発し、世に出していくといった商品開発の役割も担います。これにより、餃子市場での優位性を高めていきたいと考えています。
100億円達成を目指すデジタル戦略の波及
ーー今後の展望についてお聞かせください。
池田道隆:
まずは30億円、そして将来的には100億円規模を目指したいと考えています。そのためには、EC物販だけでなく、グループ全体にデジタルの知見を波及させていく役割が重要になると考えています。
グループ全体としては、外食事業が基点となっていることもあり、デジタルマーケティングが強いとは言えません。私たちがSNS活用などで得た知見を共有し、グループ全体のデジタル部門を底上げしていく。そういった役割を担う会社へと変貌を遂げていきたいです。
ーー最後に、読者へのメッセージをお願いします。
池田道隆:
グループ全体として「+&(プラスアンド)」という考え方を大切にしています。現状維持だけでなく、プラスとなる面白いことであれば進めていくという企業風土です。今回のM&Aもそうですが、今後も海外やデジタル、店舗との融合など、ワクワクする取り組みを続けていく所存です。グループ全体で支え合いながら、より明るい未来を生み出していきたいと考えています。
編集後記
大企業とベンチャー、両極での経験が池田氏の強みだ。この両極で培った“幅”と“速さ”の感覚を武器に、ナインブロックを率いている。目指す30億円、100億円という目標は、単なるEC物販の拡大ではない。その視線は常にグループ全体に向けられている。ECを起点としたデジタル戦略によって、外食と食品事業の垣根を超えた顧客体験の変革をリードしようとしているのだ。オーパスM&Aという「フルスイング」を経た。次なる一手は、グループ全体の未来図を塗り替える一打となるかもしれない。

池田道隆/1980年福岡県生まれ、早稲田大学商学部卒。明治製菓株式会社(現・株式会社明治)に入社し、国内営業、海外事業の立て直し、EC事業の立ち上げを経験。その後、株式会社フルッタフルッタにて、様々な部署の責任者を経験し、経営全般に必要な知識を習得。2024年に株式会社イートアンドホールディングスへ入社後、2025年に株式会社ナインブロック代表取締役社長に就任。