※本ページ内の情報は2026年1月時点のものです。

アディーレ法律事務所は、多くの人にとって身近な法律事務所として高い知名度を誇っている。しかし、その道のりは平坦ではなかった。2017年の業務停止命令という未曾有の危機に直面した直後に、鈴木淳巳氏が代表弁護士に就任した。同氏は事務所存続の岐路に立ち、組織の根幹から理念を再構築するため、「お客様に損をさせない」という強い思いを掲げ、V字回復を成し遂げた。現在はAIの全面導入による業界構造の変革を見据え、「法曹界のコンビニ」を目指している。危機を乗り越えた同氏が語る、未来への展望に迫る。

ゼロからの挑戦 名古屋支店立ち上げと組織の再生

ーー貴所へはどのような経緯で入所されたのでしょうか。

鈴木淳巳:
もともとは他の事務所で働いており、転職の意思は強くありませんでした。しかし、弊所から誘いを受けて見学に訪れた際、「君が入所するなら名古屋支店を作るから、立ち上げを任せたい」と打診されたのです。その言葉に心を動かされ、入所を決意しました。

立ち上げ当初は私一人で、1日20件もの法律相談を受けるほど多忙を極めました。しかし私は、「自分の手で、名古屋支店を全国で一番質の高い事務所にする」という強い思いを抱き、日々の業務に邁進していました。

ーー代表就任時の状況と、当時心がけられた点をお聞かせください。

鈴木淳巳:
私が代表になったのは、2017年に業務停止命令を受けた直後のタイミングです。当時は進行中であった数十万件もの案件をすべて解除しなければならず、お客様には多大なご迷惑をおかけしました。事務所として存続できるかどうかも見通せない、まさに危機的な状況でした。

私自身も先が見えない不安はありましたが、懸命に頑張ってくれている社員に対しては「大丈夫だ」という姿勢を見せ続けるよう心がけました。そして、この困難を乗り越えて組織を立て直した先に何があるのか、何のために事務所を再興するのか。その目的を弊所の理念として前面に打ち出し、発信し続けたのです。

ーー貴所の理念について、詳しく教えていただけますか。

鈴木淳巳:
理念として「身近な法律事務所の実現」を掲げ、弁護士をもっと身近な存在に感じていただけるよう、努力を重ねてきました。法律サービスは、お客様が品質を正しく判断しにくい「信用材」としての性質を持ちます。そのため、費用を支払っても自分に利益があるのか分からず、行動をためらってしまう方が少なくありません。私たちはその不明瞭さから発生する不安を取り除きたいと考えました。

そこで、(※1)ご依頼いただいたにもかかわらず、成果を得られなかった場合、原則としてお客様の利益を超える弁護士費用はいただきません。「お客様の利益を超える弁護士報酬はいただかない」という方針を、すべてのサービスで徹底しています。この方針があることで、お客様の意識を「何もしない」から、「弁護士に相談する」へ変えることができると、私たちは信じています。

(※1):費用保証制度には適用条件があり「目的を達成できた場合/できなかった場合」や「お客さまの利益」の内容については、各サービスによって異なりますのでご注意ください。

業務標準化で品質を担保 効率と高水準を両立する組織の強み

ーー他の法律事務所と比較した際の、強みは何だとお考えですか。

鈴木淳巳:
弊所は専門の事業部制を敷き、特定の分野に絞って多数の案件を取り扱うことで、豊富なノウハウを蓄積しています。さらに、そのノウハウを個人の経験にとどめず、業務の標準化も推進しており、マニュアルやシステムに落とし込んで共有する体制を築いています。

個人の能力に依存するのではなく、組織全体として高いレベルのサービスを均質に提供できる仕組みは、他にはない強みだと自負しています。

ーーサービスの品質について、どのようなお考えをお持ちでしょうか。

鈴木淳巳:
品質へのこだわりは、先ほどお話しした名古屋支店長時代から一貫して持ち続けている、私にとって譲れない一線です。知名度があるからこそ、信頼してご依頼くださったお客様に質の低いサービスを提供すれば、それは社会に不利益を広めることになり、虚しい仕事になってしまうと考えています。

そのため、現在は業務の処理水準を定量的に測定し、管理する仕組みを導入しました。部署や個人の数値を把握し、平均から外れた場合は調査を行うほか、そのうえで優れた成果を出す者のノウハウを全体に組み込むことで、組織全体のレベルアップを図っています。この改善サイクルこそが、品質維持の要です。

AIで弁護士の限界突破 「法曹界のコンビニ」実現への挑戦

ーー今後について、どのような展望をお持ちでしょうか。

鈴木淳巳:
AIを積極的に活用しているのは、弁護士一人あたりの案件数に上限があるという、法律事務所がこれまで抱えてきた事業構造の限界を突破することが最大の狙いです。私は、弁護士法などの法律を遵守した上で、「弁護士の仕事においてAIに代替できないものはない」と考えています。最終的には、弁護士とAIが協働することで、大量の案件を迅速かつ正確に処理できる体制を構築できると確信しています。この限界を取り払うことができれば、これまで以上に多様な法的ニーズに応え、私たちの理念を完全に実現することができるはずです。

ーー今後の展望と、読者へのメッセージをお願いします。

鈴木淳巳:
私たちは「法曹界のコンビニ」を目指しています。誰もがいつでも気軽に立ち寄れるコンビニエンスストアのように、全国に拠点があるという物理的な近さと、AIを駆使してサービスの提供体制を強化することで、お客様が行動をためらう心理的なハードルをなくし、誰もがいつでも利用しやすい環境を追求しています。

弊所は、個人の意欲を非常に大切にする文化です。やりたいという思いと適性があれば、若手でもどんどん挑戦できます。従来の法律事務所の限界を打破する弊所の挑戦は、業界全体で見ても最大級に困難な道のりになりますが、私たちの思いに共感し、一緒に挑んでくださる方をお待ちしています。

編集後記

業務停止という最大の危機が、皮肉にも組織の理念を強固にし、未来への明確なビジョンを生み出すきっかけとなった。鈴木氏の話からは、その逆境を乗り越えた者だけが持つ、静かだが揺るぎない覚悟が伝わってくる。「お客様に損をさせない」という人間的な理念と、AIという最先端のテクノロジー。その両輪で「法曹界のコンビニ」という前人未到の領域を目指す同社の挑戦は、法律業界の未来を大きく変える可能性を秘めている。

鈴木淳巳/愛知県出身。名古屋大学法学部卒業後、立教大学大学院人工知能科学研究科を修了。弁護士、税理士、税務調査士に加え、日本ディープラーニング協会認定の「E資格(エンジニア資格)」を保持する。2018年、アディーレ法律事務所の代表弁護士に就任。「弁護士費用で損をさせない保証制度」を導入し、依頼者が費用の不安なく相談できる環境づくりに尽力している。「何もしない」から「弁護士に相談する」社会への変革を目指し、日々活動を続けている。愛知県弁護士会所属。