※本ページ内の情報は2026年1月時点のものです。

日本のデジタルマーケティング黎明期から、CRM領域のパイオニアとして顧客企業の成長を支え続けてきたシナジーマーケティング株式会社。同社が25年の歴史で培った顧客との関係性と技術力を基盤に、三代目代表取締役社長兼CEOの奥平博史氏が目指すのは「非連続な成長」だ。奥平氏が取り組む現場主義の徹底や「ギブの意識」、そして老舗企業を変革へと導く戦略と2030年に向けたビジョンをうかがった。

「人の可能性を信じる」組織づくりとキャリアの決断

ーー社会人としてのキャリアはどのようにスタートされたのでしょうか。

奥平博史:
新卒でゼネコンに入社したところから私のキャリアはスタートしました。大学で建築を専攻し、家族も同業界にいたことから、当時は自然な流れでこの道を選びました。就職氷河期という厳しい時代背景もあり、「自分には建築しかない」と思っていた部分もあったかと思います。

ゼネコンでは、現場監督として施主様と職人様の間に入る責任ある仕事を任され、やりがいも感じていました。しかし、入社から1年半ほど経った頃、「本当にこの世界しか知らなくて良いのか」と、自身の将来について考えたのです。そこで初めて建築以外の領域に目を向けた際、これから大きく社会を変えていくであろうIT業界の成長性に強く惹かれ、キャリアチェンジを決意しました。

ーーその後のIT業界での経験が、貴社への入社にどのように繋がりましたか。

奥平博史:
IT領域に関心を持ち転職したのですが、実際に入社したのは通信系の商材を扱う営業会社でした。そこで個人向けから法人まで幅広く営業を経験し、努力が成果として見える営業という職種に非常に価値を感じました。その後、管理職を経てIT領域の子会社の立ち上げにも参画しました。

私は関西出身なのですが、大学進学や就職で広島や東京に出ており、様々な場所で経験を積んでいました。しかし、30歳という節目のタイミングで「今一度、地元である関西に軸足を置いてIT領域を極めたい」と考えていた時、出会ったのがシナジーマーケティングでした。

当時は上場から2年が経ち、まさにこれからチャレンジをしていくというフェーズでした。前職とは対照的にボトムアップのカルチャーに惹かれ、自分の努力で会社を一緒につくっていく土台があると思い、転職を決めました。

顧客の期待を超える「ギブの精神」とトップの行動力

ーー社長就任後、最初にどのような行動を起こされましたか。

奥平博史:
まずは、「現場上がりの自分だからこそできること」をやろうと考え、長らくできていなかったお客様への表敬訪問を行いました。最初の半年ほどで、全国のパートナー様を含め40社から50社ほどのお客様を巡らせていただきました。その場で会社の考えや事業の思いを直接お伝えした姿が、同席した社員の刺激になったり、お客様からも共感をいただいたりする中で「これでいいんだ」と実感できました。この行動で少し自信が持てたのは大きかったです。

ーー貴社が大切にされている価値観について教えてください。

奥平博史:
弊社では「101点のサービス」をバリューとしています。これは、100点の期待通りの対応だけでなく、その先にある「+1点の驚きや喜び」を提供し続ける姿勢を意味します。例えば、お客様のニーズと弊社のサービスが合わない場面でも、お客様の課題解決につながるのであれば、他社のサービスや、より適した選択肢をご紹介することもあります。このギブの姿勢こそ、私たちが大切にしている在り方です。お客様のためになることなら、たとえそれが目の前の利益にならなくても迷わずギブをする。その積み重ねが、やがて大きな信頼として返ってくると信じています。

リブランディングで加速する「現場」のための支援

ーー貴社の事業内容についてお聞かせください。

奥平博史:
創業以来、企業と顧客の関係性を深めるCRM領域を軸に事業を展開しています。主力となるのは、誰もが簡単にマーケティング活動を行えるクラウド型システム「Synergy!」の提供です。

しかし、システムだけでお客様のすべての課題を解決できるわけではありません。システムでは賄えない部分を、専門スタッフによる人的な支援でカバーし、さらに弊社だけで解決できない場合はパートナー企業様と共創して価値を提供します。この「システム」と「人」の両輪で、お客様の課題解決に伴走できる点が大きな強みです。

ーー昨年、「マーケティングSaaS Synergy!」リブランディングを行ったのはどのような背景があったのでしょうか。

奥平博史:
Synergy!はサービス提供から20年以上が経過し、デジタルマーケティングの領域も課題も大きく広がりました。現場の担当者様が日々の業務や調査に追われ、本来やるべき創造的な活動に手が回らないという状況も増えています。

そこで、「Synergy!」が何を解決するのかを改めて示すべく、新たに「マーケティング現場が動き出す」というコンセプトを掲げました。システムを中心に、お客様が一連のマーケティング活動をスムーズに実行できる体験を提供し、ビジョンである「人と企業が、惹かれ合う世の中へ。」の実現を目指しています。

「人の可能性」を信じる組織と2030年への成長戦略

ーー組織づくりにおいて、最も大切にされている考えをお聞かせください。

奥平博史:
根底にあるのは、「人の成長と可能性を信じる」という考えです。不得意な部分を補うことも大切ですが、それ以上に、一人ひとりの得意分野を伸ばし、それを組織全体に横展開していくことが、組織力の向上につながると考えています。そのため、個々の強みが発揮される「適材適所のアサイン(配置)」には、細部までこだわります。単に配置するだけでなく、本人に対して「どのような強みを評価しているのか」と「何を期待しているのか」を丁寧に伝えることを意識し、互いに強みを再認識しながら組織づくりを進めています。

ーー今後特に注力していきたいテーマは何でしょうか。

奥平博史:
今後、2030年に向けて非連続な成長を目指しています。注力テーマは大きく三点あります。1つ目は「領域拡張による裾野拡大」です。デジタルマーケティング市場は今後も拡大が見込まれますが、リソース不足、ノウハウ不足により、デジタル活用を思うように進められず、次の一歩に悩む企業様も増えていくと考えています。私たちは、そうしたお客様の課題に寄り添い、業界や規模にとらわれず支援領域を広げていきたいと考えています。より多くの企業がデジタルマーケティングを活用して成長のステージを広げ、人と企業の新たなつながりを生み出していけるよう、そのための“担い手”を社会に増やしていきたいと考えています。

2つ目は「人的資本」の強化です。スキルだけでなく、当社のカルチャーにフィットし、AIと共に新しい価値を創り出せる人材を採用・育成していくことが不可欠です。採用と育成を長期的な視点で捉え、未来の成長を支える人的資本の強化に取り組んでいきます。

3つ目は「AX(AI Transformation)」です。社内の業務プロセス改革とプロダクト進化を両輪で進め、人がより創造的で価値の高い仕事に集中できる環境をつくります。さらには、人とAIが共創していくことで、効率化にとどまらず、価値創出へと軸足を移す取り組みを進めていきます。

弊社はCRM領域の老舗であり、強みはお客様ファーストの姿勢とマーケティングで最も重視される「顧客理解」に関する知見にあります。この強みを活かし、市場での存在感を増し、お客様にとって選ばれ続ける会社になっていきたいと考えています。

編集後記

ゼネコンからIT営業、CRM企業のトップへとキャリアを歩んできた奥平氏。就任後、自ら現場の最前線に立って顧客を巡ったという行動力は、まさしく現場上がりのトップの真骨頂であり、その熱意が社内外に好循環を生み出している。CRMのパイオニアとして、同社の顧客理解にこだわる組織と2030年に向けた挑戦から、今後も目が離せない。

奥平博史/経営学修士(MBA)。2001年共立建設株式会社に入社し、建設現場監督に従事。2022年、通信ベンチャー企業株式会社ネクシィーズ(現:株式会社NEXYZ.Group)に入社し、ソリューション営業、Webメディア事業の立ち上げなどを経験。2009年、シナジーマーケティング株式会社に入社。クライアント企業へのCRM導入ディレクター、事業責任者を経て、2017年に取締役副社長、2024年に代表取締役社長兼CEOに就任。