※本ページ内の情報は2026年1月時点のものです。

テクノロジーで人の可能性を拡げる企業、株式会社アトラエは、IT業界に強い成功報酬型求人メディア「Green」や、組織力向上プラットフォーム「Wevox」といったサービスを通じ、世の中の生きがいや働きがいを増やしていくことを目指している。創業から同社を率いてきた代表取締役CEOの新居佳英氏は、「会社は関わる人みんなが幸せになるための仕組み」と語る。その一貫した信念の源泉と、同社が見据える働きがいの未来について話を聞いた。

起業を志し、経営に近い環境で得た成長経験

ーー社会人としてのキャリアはどのようにスタートされたのでしょうか。

新居佳英:
学生時代から起業を志していました。そのための最短ルートとして、「経営者との距離が近い会社」と「優秀な人材が集まっている会社」という二つの軸で就職先を探しました。当時は今のようにインターネットが普及しておらず、情報も限られていましたが、その中で株式会社インテリジェンス(現・パーソルキャリア株式会社)に出合いました。当時、インテリジェンスは勢いのあるベンチャー企業で、「ここが起業家になるための最短ルートだ」と確信し、入社しました。

ーー入社後は主にどのような経験をされましたか。

新居佳英:
インテリジェンスは年功序列の風土がなく、意欲と実力があれば仕事を任せてもらえる会社でした。1年目の終わりにはチームマネジメントを経験し、3年目には子会社の社長を任されるまでになり、その際、会社の登記からオフィスの契約、社員の採用、制度設計まで、限りなく起業に近い経験をさせてもらいました。

その後、親会社に戻って約200人規模の事業部の責任者となりました。これにより、大きな組織のマネジメントにも携わることができました。

関わる人全てが幸せに 創業に込めた揺るがぬ信念

ーー創業時、どのような会社をつくりたいと考えていたのでしょうか。

新居佳英:
私の根底には、「会社は関わる人みんなが幸せになるための仕組みである」という思いがあります。当時、欧米では「会社の価値は株主のために最大化すべき」という考え方が主流でしたが、私にはどうしても納得できませんでした。

それよりも、社員が働きがいを持てる会社をつくりたいと考えていました。信頼できる仲間と社会に価値があることに挑戦できるような会社をつくりたかったのです。会社の規模の大小ではなく、自分たちの生き様として、そういう会社をゼロからつくろうと決めていました。

ーーどのような事業を立ち上げたのか、背景と共に教えてください。

新居佳英:
最初、成功報酬型求人メディア「Green」を立ち上げました。優秀な仲間と高い目標に挑戦するには、生産性の高いビジネスを選ぶ必要があります。そのため、テクノロジーを活用することは決めていました。

前職と同じ人材領域は避けたい思いもありましたが、やはり「餅は餅屋」ではないですが、自分たちの経験が生きる人材領域にテクノロジーを掛け合わせることで、新しい価値を生み出そうと考えました。人と企業の間に入る仲介業の付加価値をテクノロジーで代替し、直接つなぐ仕組みをつくる。それが「Green」の発想の原点です。

ーー事業が軌道に乗るまで、特に大きな困難はありましたか。

新居佳英:
2008年のリーマンショックの影響は甚大でした。あらゆる企業が採用をストップし、2009年の売上は前年の4割ほどまで落ち込み、経営は非常に厳しい状況でした。自分の給料を下げ、オフィスを一つに集約し、金融機関を回り尽くしてお金を工面するなど、あらゆる手を尽くしました。

しかし、リーマンショック後、企業の採用コストに対する意識が変化し、成果報酬型である「Green」に追い風が吹きました。危機を乗り越えたことで、急速に求人メディアとして成長するきっかけをつかむことができたのです。

ーー他にどのような事業を展開されていますか。

新居佳英:
「Wevox」という組織の改善サイクルを生み出すサービスを展開しています。「Green」を立ち上げてから、企業の採用支援をする中で多くの経営者から相談を受ける機会が増えました。「人を採用してもすぐに辞めてしまい、組織が拡大しない」という相談です。

そういった相談の中で、ほとんどの経営者が、人が辞める本当の理由を誤解していることが多いことに気づきました。そこで、今まで感覚で推測するしかなかった、組織に対するエンゲージメントや組織の現状を可視化するサービスがつくれないかと考えたのです。社員の定着を促し、働きがいのある会社づくりを支援する。そうすれば、社会全体がもっと生き生きとするのではないか、という思いから「Wevox」が生まれました。

上下関係のない仲間同士の相互評価による貢献主義

ーー貴社の組織としての強みはどこにあるとお考えですか。

新居佳英:
強みは「人」です。優秀なメンバーがエンゲージメント高く、一つのチームとして目標に向かって日々挑戦していること。それがこの会社の最大の強みだと考えています。

弊社では、指示を出す上司もいなければ、指示を待つメンバーもいません。全員が自律的に動きます。それが実行できるのは、私が持っているのと同レベルの情報を、全社員が共有しているからです。情報がなければ正しい判断はできません。情報が完全にオープンだからこそ、社員一人ひとりが経営者視点を持ち、今何をすべきかを自分で考えて動ける環境にあると考えています。

ーー貴社の評価制度について、お聞かせください。

新居佳英:
立場の上下関係がないので、誰かが一方的に評価するということはありません。そのため、仲間同士で評価し合う「360度評価」という仕組みを使っています。

評価の根底にあるのは「貢献主義」という考え方です。営業成績のような分かりやすい成果だけでなく、経理や広報など、あらゆる役割の中で「誰が会社のために最も貢献してくれたか」を仲間が判断します。その納得感が、組織の強さにつながっていると考えています。

組織と人の可能性を拓く未来図

ーー今後の事業展開について、どのような展望をお持ちですか。

新居佳英:
「Wevox」を、どの会社にも必ず導入されている会計ソフトのような、組織経営に不可欠な存在にしていきたいと考えています。マーケットをリードする立場として、この領域の重要性を啓蒙していくことが私たちの役割です。

さらに、グローバル展開も視野に入れています。チームで働くことに強みを持つ日本から、チームの力を高めるためのプロダクトを世界に広めていく。非常に価値のある挑戦だと思っています。

ーー会社として、将来的にはどのような存在を目指していますか。

新居佳英:
弊社は「世界中の人々を魅了する会社を創る」というビジョンを掲げています。そのため、「働きがいのある会社」として注目されることを目指しています。世界中の企業から「アトラエの働き方はすごい」と参考にされる存在が理想です。

そのためには、まずビジネスでの成功を追求しながらも、社員一人ひとりを活かす仕組みを構築します。そして、私たちのあり方を通じて日本の組織文化の素晴らしさを、世界に示していきたいと考えています。

編集後記

新居氏の言葉から、創業前から変わらない人に対する強い信頼と、働きがいへの確固たる信念が感じられる。情報が完全にオープンにされた環境は、社員一人ひとりに「自分事」として経営を捉える視点を与えている。「貢献主義」に基づくユニークな組織文化こそが、危機を乗り越え、グローバルな展開を目指す原動力となっているのだ。ビジネスでの成功と個人の幸福を両立させる、その挑戦の過程は今後の社会にとって重要なモデルケースとなるだろう。

新居佳英/1974年東京都生まれ。上智大学卒業後、株式会社インテリジェンス(現・パーソルキャリア株式会社)に入社。関連会社の代表取締役を経験したのち、2003年株式会社アトラエを創業。IT・Web業界に強い求人メディア「Green」をはじめ、組織力向上プラットフォーム「Wevox」などテック領域の新事業を立ち上げる。2016年に東証マザーズ(現・グロース市場)へ上場、2018年に東証一部(現・プライム市場)へ市場変更。共著書に「組織の未来はエンゲージメントで決まる」(英治出版)がある。