※本ページ内の情報は2026年1月時点のものです。

中古パソコンをはじめとする電子機器のリース満了物件を対象に、データ消去や製品の再生・販売を手掛けるデジタルリユース株式会社。同社が今目指すのは、単なる処分業者ではなく、付加価値の高い「サービス業」への進化である。この変革を主導するのは、リース会社で金融と物の両面に関わるキャリアを築いた代表取締役社長の及川信之氏だ。不安定な外部環境に左右されない強靭な組織へと会社を導くため、及川氏が掲げる「社員とその家族の幸せ」につながる安定的かつ適正利益追求という目標、そしてその実現に向けた人材戦略と事業戦略について話をうかがう。

新規事業への挑戦と撤退判断の教訓

ーー最初のキャリアはどのようにスタートされましたか。

及川信之:
大学卒業後、設立から10年程度のリース会社に入社しました。当時、リース業界は市場規模が急速に拡大しており、お金のやり取りだけでなく、有形物を介して価値を生み出すという点に興味がありました。

複数の会社を受ける中で早くから内定をもらえたという経緯もありましたが、何よりも伸びている成長業界で経験を積みたいと考えていたのが決め手となりました。入社後は、自分のやりたいことをやらせてもらえる自由な環境でした。

ーー過去のご経験の中で特に印象的なエピソードはありますか。

及川信之:
リース会社は、数千億円、今では1兆円規模のお金を動かす会社もあり、スケールが非常に大きいことが特徴です。サプライヤーである販売会社やエンドユーザーであるお客様、そして多額の設備投資資金を賄うための銀行とのやり取りなど、スケールの大きさを体感できたことは、強く印象に残っています。

日本電子計算機株式会社(現・株式会社JECC、以下JECC)入社後には、システムの構築やレンタル事業以外の新規事業の立ち上げ、そしてその後のメンテナンスなど、いろいろな分野を経験してきました。

ーー新規事業に携わる中で、教訓として得られたことは何でしょうか。

及川信之:
新規事業を始める際は必ず戦略を立てますが、「何年間でうまくいかなければやめる」という撤退の基準を意識することが大切だと学びました。漫然と続けてしまうと、採算が合わないまま事業を継続することになりかねません。事業自体は収益性が低くても、他の事業との相乗効果があり、広がりを持っているなら続けるべきです。しかし、それがなく収益性が低下する一方であれば、人材を成長分野に振り向けるためにも、やめ時を見極める勇気が必要です。この考え方は、今の経営観や信念にもつながっています。

中古品ビジネスをサービス業へ進化させる付加価値戦略

ーー社長就任時の目標や描かれた展望を教えていただけますか。

及川信之:
2022年に親会社(JECC)から「安定した経営基盤を構築して欲しい」という要請を受け、弊社の代表に就任しました。掲げた目標は、ただ利益を上げることだけではなく、「社員とその家族の幸せ」につながる安定的な利益を追求し維持し続けることです。皆で一生懸命に働いて利益を上げ、社会に貢献することが、最終的に自分たちに還元されるという好循環を生み出す会社にしていきたいと考えています。

ーー現在の主力事業の特徴と強みについてご説明いただけますか。

及川信之:
弊社は2001年の設立以来、IT機器のリユース・リサイクルに特化した事業を展開し、業界を牽引してまいりました。親会社であるJECCグループからの仕入れが全体の6〜7割を占めており、官公庁の案件も多く扱っているため、セキュリティ管理と品質管理の徹底が強みです。物が入荷してからお客様へ出荷されていくまでのプロセスにおいて、多くの工数をかけ、効率性と確実性を重視した運営を行っております。セキュリティ面を重視した厳格なチェックポイントを多段階に設けることで、業界トップクラスと自負するリスクマネジメント体制を構築しています。

ーー今後の事業において特に注力したい分野についてお聞かせください。

及川信之:
弊社のさらなる成長、発展のためには、グループでの協業・シナジーを今までより高め、かつグループ外からの仕入れ拡大の両輪戦略により経営基盤の安定化、また、単に物を仕入れて販売する「左から右へ流すだけ」の商売ではなく、そこに付加価値をつけ成長を図っていきたいと考えています。

具体的には、中古パソコンであってもすぐ使える状態でお客様に提供できるように、PCのセットアップなどのアフターサービスを強化し、サービス業としての側面を強めていきたいと思っています。これは、環境問題への貢献や循環経済(※)を支える社会的役割を果たすことにもつながります。

(※)循環経済(サーキュラーエコノミー):大量生産・大量消費・大量廃棄といった一方通行の経済(リニアエコノミー)から脱却し、製品や資源を長く、効率的に、そして循環的に利用すること。

安定経営を実現するための人材不足という課題

ーー目標達成に向けた現時点での最大の課題は何だとお考えでしょうか。

及川信之:
グループでの協業強化、グループ外からの仕入れを拡大、付加価値の高いサービスを提供していくためには、そのための体制を整える人員、特に営業の人員が不足していることが最大のボトルネックです。現在、営業部門は人数が少なく、グループ外の顧客開拓に苦労しています。また、工場の生産性向上や品質改善も、業務が人に依存しているところが多く、自動化やAI導入を進めたいと考えていますが、この点においても人材が課題となっています。

以前、新卒採用を試みたことがありますが、教育体制が整っておらず、定着しなかったという苦い経験があります。その結果、社員の年齢構成が40代中心となり、会社の次代を担うべき若手層の不足が課題となっています。そこで、現在はキャリア採用にシフトしました。会社の次代を担う30代ミドル層の強化こそが急務であり、即戦力となる人材を積極的に求めています。

ーー貴社で特に求める人物像についておうかがいできますか。

及川信之:
求めるのは、失敗を恐れずに前向きに果敢に挑戦するチャレンジ精神旺盛な方です。これまでの社員は安定志向を好む人が多かったのですが、これからは付加価値の高いサービスを推進していきます。そのため、「新たな企画を提案したい」「事業を動かしたい」といった具体的なアイデアをもって、挑戦してくれる人材が必要です。特に30代には、将来の会社幹部を目指せる存在として、即戦力となってグループ外の営業開拓などに尽力して欲しいです。

ーー貴社で働く魅力について、どのように捉えていらっしゃいますか。

及川信之:
弊社は風通しの良い会社で、自身の「新たな挑戦をしたい」という意欲を伝えていただければ、すぐに経営層へつながります。実現に向けた体制を整えやすい環境です。これはまさに、「やりたいことを実現できる会社」だと断言できます。

また、業界内でもトップクラスの福利厚生が整備されている点も挙げられます。親会社の施設が利用できるほか、有給休暇の消化率も高いため、仕事とプライベートの調和(ワークライフバランス)を重視できる点も、働くうえでの大きな魅力だと考えています。

編集後記

及川氏の言葉からは、現状に甘んじず、会社を「不況の波に左右されない会社」へと変革させる強い意志が感じられた。創業社長ではない客観的な視点から、事業の強みと弱みを捉え、新規事業での経験を基に、グループ外への販路拡大という挑戦を主導している。同社が中古品の処分業者という枠を超え、リペアやサポートまでを担う「サービス業」へと進化することは、環境貢献にもつながる、時代が求める企業像そのものである。この変革の鍵は「人」であり、挑戦意欲に溢れた新たな人材が加わることで、同社の未来は大きく飛躍することだろう。

及川信之/1961年12月生まれ、成蹊大学卒、1960年4月クラウン・リーシング株式会社入社、2002年1月日本電子計算機株式会社(現・株式会社JECC)入社、2011年7月同社ITサービス部長、2015年7月同社経営企画室長、2018年6月同社取締役経営企画室長、2021年6月同社常務取締役、2022年6月同社常務取締役退任、2022年5月デジタルリユース株式会社代表取締役社長に就任。