
「白猫プロジェクト」や「クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ」など、数々のヒットタイトルで知られる株式会社コロプラ。同社は常に最新技術を追求し、エンタメ業界に新たなジャンルを創り出してきた。この変革のDNAを受け継ぎ、さらなる飛躍を目指すのが、代表取締役社長 上席執行役員 CEOの宮本貴志氏である。食品卸の老舗からキャリアをスタートし、IT、エンタメ、グローバルビジネスの最前線を渡り歩いた後にコロプラへ参画した人物だ。そのユニークな軌跡は、同氏に何を教え、どこへ導いたのか。波乱万丈のキャリア、コロプラが持つ真の強み、そして未来の展望を聞いた。
食品卸からIT業界へ キャリアの原点
ーー社会人としての最初のキャリアについてお聞かせください。
宮本貴志:
新卒で入社した大手食品卸会社から私のキャリアはスタートしました。当時は就職氷河期と言われつつも、まだ学生優位な面影も残っていて、正直なところキャリアについて深く考えていませんでした。ただ、食や流通の川上に位置する業態に漠然とした興味はありました。
入社後、希望とは異なるシステム部門に配属されましたが、5年ほど在籍しました。その後、徐々に古い体制が自分には合わないと感じるようになったのです。職種を変えれば解決すると浅はかにも考え、大手物流システム開発の営業職へ転職しました。しかし、わずか5ヶ月で退職することになります。このとき、自分が本当に嫌だったのは「職種」ではなく、古い「体制」そのものだったのだと改めて痛感したのです。
エンタメ業界への転身とベンチャーの洗礼
ーー次にエンタメ業界へ転職されていますが、その理由は何だったのでしょうか。
宮本貴志:
子どもの頃からゲームが好きで、仕事としてのキャリアは深く考えていませんでしたが、もともとエンタメ業界に興味はありました。
当時は業界全体が大きく変革している時期でした。ゲームソフトウェア会社がコンビニでゲームを販売するという、革新的な流通モデルを構築しているのを見つけ、これに強く惹かれたのです。メーカーと流通、売り場をすべてコントロールする役割に魅力を感じ、転職を決断するに至ります。
ーー大企業からベンチャーへの転職はいかがでしたか。
宮本貴志:
まさに真逆の世界でした。手厚い教育プログラムやルールはなく、社内の人間関係は競争が激しく、緊張感のある状況でした。しかし、会社の急成長とともに自分も成長できる環境や、好きな商材を扱えることに大きなやりがいを感じました。
その後、転職した当時はまだ拡大中だった大手通信会社は、はっきり言って「修羅場」でした。長時間働くのが当たり前でしたが、この時期にプロジェクト管理の手法やマーケティングの基礎、デジタル関連の知識を必死に学びました。この経験が、後のキャリアに大きく活きています。
オンラインゲームの奔流とグローバルな視点
ーーその後は、どのようなキャリアを積んでいったのですか。
宮本貴志:
インデックス・グループの会社を経て、事業売却に伴い大手インターネットグループ会社に移りました。その時代に得た最も大きなものは、アジアを中心とした海外との繋がりと、グローバルな視点です。デジタルコンテンツは国境を越えやすく、世界50億人をマーケットとして捉える観点を培うことができました。
しかし、自分には大企業の社風が合わず、主体的に動きたいという思いが募りました。そこで、その会社を退職し、数名の仲間と「GPコアエッジ」という会社を立ち上げました。主にゲーム受託開発事業や海外ゲームのライセンス事業を手掛けていました。
コロプラとの出会い、そして社長就任へ

ーー貴社へ入社した経緯について教えてください。
宮本貴志:
GPコアエッジでゲーム業界特化の人材紹介事業を始めたのがきっかけで、クライアントの一社としてコロプラとお付き合いしていました。2020年のコロナ禍でなかなか営業にも行けない時期に、現コロプラ会長である馬場から「うちに来ないか」と声をかけていただいたのです。
圧倒的なクリエイターの力と技術力に強く惹かれたことが、入社の決め手となりました。私自身はこれまで、プロダクトをゼロから生み出すというより、既にあるものを運用して売るビジネスが中心でした。しかしコロプラは、創業者がエンジニア出身ということもあり、エンジニアリングを基盤とした技術力がずば抜けていました。その技術力は、どのコンテンツを見ても必ず光るものがありました。
ーー入社後わずか1年で社長に就任されたのは、どのような経緯があったのでしょうか。
宮本貴志:
お話があった当時、会社が少しピンチな状況だったことが大きいです。コロプラの最大の魅力は、創業者が常に新しい「ジャンル」をつくってきたことにあると思っています。
たとえば「白猫プロジェクト」の「ぷにコン」は、それまでのモバイルゲームの常識を覆す発明でした。この「ジャンルを創る」という素晴らしいDNAを持つクリエイターたちの力を、今度は私が「売る」ことで支えたい。そう決意し、社長の職を引き受けました。
新しいジャンルを創り出すDNAと高い技術力
ーー貴社の強みについて、どのようにお考えでしょうか。
宮本貴志:
新しいジャンルを創り出す力と、その新しい挑戦を自社でやり遂げる高い技術力だと思います。たとえば、まだ多くの企業が様子見をしていたブロックチェーンゲームに、プライム市場の上場企業として真正面から取り組み、上場企業グループ初のIEOを成功させ、自社で開発・運営まで行いました。これは、自分たちでやることでしか得られない知見があると信じているためです。
また、創業期から続く「位置ゲー(コロプラ商標)」のノウハウも、他社にはない大きな強みです。単にマップデータを扱えるというだけでなく、そのマップを使ってユーザー様にどう遊んでもらうか、どう楽しませるかという企画力と技術力が蓄積されています。常に新しい技術に挑戦し、それをコンテンツに責任を持つ姿勢として会社の中に蓄積し続けているのです。
ーー既存のIPを長く運営し、ファンに愛され続ける秘訣は何でしょうか。
宮本貴志:
短期的な利益を追わないことです。オンラインゲームは、ユーザーのLTV(顧客生涯価値)をどう設計するかに企業の姿勢が現れます。私たちは、ユーザー様にできるだけ長くサービスを継続してもらうことを最も重視しています。サービス開始初期から支えてくださっているファンは、課金額以上に強い思い入れを持ってくださっています。
また、ゲームのビジネスモデルは、非常に難しいバランスが求められます。無料で遊べるサービスでありながら、価値を感じてお金をかけてくださったユーザー様が手に入れた、例えばゲーム内アイテムの価値を、私たちは責任を持って守らなければなりません。ユーザー様は「このアイテムを持って、この先3年間遊びたい」と思って手に入れてくださったのかもしれない。その期待に応え続けることが信頼となり、長期的なサービス運営につながります。こうした運用ノウハウの蓄積も、コロプラの大きな財産です。
マルチデバイス展開で広がる新境地

ーー今後の注力テーマを教えてください。
宮本貴志:
現代はエンタメの選択肢が爆発的に増え続けています。その中で、まずコロプラを選んでもらい、さらに長く使い続けてもらうために、デバイスの進化に対応し、世界展開もこれまで以上に強化していきます。コロプラでしか体験できない、ユニークなエンターテイメントを提供し続けることが私たちの使命です。
ーー具体的に注力している分野はありますか。
宮本貴志:
「マルチデバイス展開」です。もともとモバイルと位置情報から始まった会社ですが、今はPCや家庭用ゲーム機との垣根が急速になくなっています。モバイルで培った高い技術力を活かし、Steamなど、より広いフィールドへ積極的に展開しています。
さらに、生成AIの活用も大きなテーマです。社内のDX化を進めるのはもちろんですが、ゲームそのものに生成AIを組み込む挑戦をすでに始めています。たとえば、2025年にリリースした『神魔狩りのツクヨミ』というタイトルでは、倒した敵からもらえるアイテムが、あらかじめ決められた確率ではなく、プレイヤーのそれまでの行動に応じてAIがその場で生成する、という生成システムを導入しました。単にAIをゲームづくりの「道具」として使うだけでなく、「AIそのものをゲームのテーマにする」という、一歩踏み込んだ開発にも取り組んでいます。
このタイトルは、ユーザー様だけでなく、「生成AI大賞2025」でグランプリを受賞するなど、社会的にも評価をしていただきました。今後は、コロプラ初のコンシューマーゲームタイトルという形へアップデートし、最新作『KAZUMA KANEKO'S ツクヨミ』として国内外へ展開していく予定です。
多様性への理解と素直さという採用基準
ーー今後、どのような人材を求めていますか。
宮本貴志:
いろいろな要素がありますが、突き詰めると「性格のいい人」ですね。具体的には多様性への理解がある人、そして素直な人です。もちろん、プロフェッショナルとしての責任感、成長意欲、主体的な行動力、そして目標への高い達成意欲も重要であると考えます。
素直でない人は、基本的にはコロプラのカルチャーには合いません。私が以前、人材紹介事業でコロプラの採用をお手伝いしていたときから感じていたことですが、スキルや経験が少し足りなくても、「素直な人」を採用すると、入社後に活躍するケースが非常に多かったのです。
特に私たちの業界は変化が激しいので、そこに耐えられる強い気持ちも必要になります。ですが、そうしたスキルの土台として、素直さや人の良さがある人が、コロプラでは最も輝けると思っています。
ーーやはりゲーム好きな人が望ましいのでしょうか。
宮本貴志:
ゲームに限らず、「エンタメが好きな人」であってほしいです。ゲームのことだけに詳しくても、ユーザー様を感動させる良いゲームはつくれません。コロプラには、映画や舞台、美術館など、エンタメに関するインプットを支援する福利厚生があります。これは、一見関係ないような八百屋の店先での見せ方など、あらゆるものからマーケティングや表現のヒントを得てほしいからです。
「唯一無二」で世界を熱狂させる未来
ーー最後に、将来のビジョンについてお聞かせください。
宮本貴志:
「コロプラにしかつくれないもの」で世界中を熱狂させる会社でありたいと考えています。エンターテインメントとテクノロジーを高いレベルで融合させ、常に新しい一手を打ち続ける。そのために必要な技術と組織、そして社員が正しく評価される人事制度をしっかりと整え、未来への準備を進めていきます。
編集後記
食品卸の老舗からキャリアを始め、IT、エンタメ、そしてグローバルビジネスの最前線を渡り歩いてきた宮本氏。その言葉の端々から、古い常識や体制を疑い、常に新しい可能性に賭けてきた柔軟な思考が感じられた。コロプラが持つ「ジャンルを創る」という唯一無二のDNAと、宮本氏の多彩な経験が融合した今、同社は再び大きな飛躍の時を迎えようとしている。テクノロジーとエンターテインメントの力で、同社が次にどんな「熱狂」を世界に届けてくれるのか、注目していきたい。

宮本貴志/1972年4月東京都生まれ。1995年、食品大手卸会社に入社。その後、株式会社デジキューブなどを経て、2008年に株式会社GPコアエッジを設立。2020年に株式会社コロプラに入社し、2021年12月に代表取締役社長に就任。