
ホテルやブライダル業界を中心に、質の高い人材サービスを提供する株式会社バリュースタッフ。同社は単なる人材派遣に留まらず、働く一人ひとりのキャリアパスと幸福を追求する独自のビジネスモデルで、業界の常識を覆そうとしている。日本の人口減少という危機に対し、文化や秩序を守る“正しい外国人材雇用”のインフラづくりにも挑む同社。なぜ今、「働く人」を第一に考えることが社会課題の解決につながるのか。その原点と未来への展望を、代表取締役の森本光春氏に聞いた。
「答えのない面白さ」に魅了された原体験 働く人を守るための独立
ーー社会人としてのキャリアはどのようにスタートされたのでしょうか。
森本光春:
高校卒業後、ホテルのサービススタッフとして働き始めたのが私の原点です。当時は現在のような残業規制もなく、月100時間を超えるような残業も当たり前の環境でしたが、不思議と辛さはなく、仕事に没頭していました。サービス業は感性が重視される世界ですが、その中で論理的に業務を組み立てると高く評価されることに気づき、そこに面白みを感じたのです。何より、自分の行動によって誰かが喜んでくれることが、私自身の大きな喜びでした。もちろん、指名をいただくこともあれば、お叱りを受けることもあります。「自分がベストを尽くしたからといって、必ずしも相手が満足するとは限らない」。正解はお客様の中にあるという「答えのない面白さ」こそが、この仕事の醍醐味だと感じていました。
ーーその後、どのような経緯で独立を決意されたのですか。
森本光春:
現場や人材会社の社員として経験を積む中で、「働く人の側をあまり見ていない」という業界の構造に疑問を感じたことがきっかけです。もちろんクライアントは大切ですが、サービスを提供するスタッフ一人ひとりのキャリアや幸せにも、もっと向き合うべきではないか。働く人が幸せになれば、サービスの質が上がり、結果としてクライアントも、そして私たち自身も幸せになれるはずです。「働く人のことを第一に考える会社が、一つくらいあってもいい」。その理想を体現するために、独立を決意しました。
ホテル業界の労働構造にメスを入れる 時給変動制と外国人材共生の実現
ーー貴社の事業内容と、独自のアプローチについてお聞かせください。
森本光春:
ホテル、ブライダル、レストラン向けの人材サービスを軸に、客室清掃や宴会部門の業務委託、独自のプラットフォーム運営など多角的に展開しています。最大の特徴は、現場のキャリア形成を見据えた「業務委託」の導入です。単なる労働力の提供ではなく、部門ごと請け負って自社責任でキャリアパスを設計することで、スタッフの定着率とサービス品質の向上を実現しています。また、業界の常識である「固定時給」にも一石を投じました。宿泊料金は需要で変動するのに、スタッフの時給が変わらないのは不自然です。そこで、忙しい日には高い報酬が得られる時給変動型プラットフォーム「バリプラ Value Plus+」を開発しました。働く人の価値が正当に評価される業界へ変えていくことが、私たちの使命です。
ーー今後の事業展開において、特に重要視されているテーマは何でしょうか。
森本光春:
「外国人材の受け入れ体制の構築」に注力しています。人口減少は、日本の労働力不足だけでなく、社会全体の活力が失われる危機的な課題です。海外からの人材受け入れは不可避ですが、重要なのはその「入れ方」です。欧州の事例が示すように、無秩序な受け入れは社会の分断を招きかねません。だからこそ、私たちが日本の文化や秩序を守るための“正しいインフラ”を構築する必要があると考えています。
ーー外国人材を受け入れる上で、大切にされている方針をお聞かせください。
森本光春:
互いの文化や価値観を尊重しつつ、適切な妥協点を見出すことです。そのために、私たちは「入り口」の環境整備を徹底しています。来日後のオリエンテーションには3日間をかけ、住民票取得や銀行口座開設、携帯電話の契約などを手厚くサポートします。時には通勤経路の交番へ一緒に挨拶に行くこともあります。彼らが孤立せず、安心して生活できる基盤をつくることが、雇用主としての責任だからです。一方で、彼らにも日本のルールやマナーに適応する姿勢を求めます。地域社会と摩擦なく共生するためには、日本の衛生観念や仕事のルールを理解してもらうことが不可欠です。双方が歩み寄り、より良い関係を築くための架け橋になりたいと考えています。
成長を楽しむ仲間と共に 雇用から日本の社会秩序を守る挑戦

ーーどのような方と、一緒に働きたいと考えていますか。
森本光春:
まず、人に喜んでもらうことに純粋な楽しさを感じられる方です。加えて、困難に対し「できない理由」を探すのではなく、「どうすればできるか」を考え抜く姿勢を持っている方を求めています。できなかったことができるようになるーーその“成長”のプロセスを、仲間と共に楽しめる方と働きたいですね。そこに国籍は一切関係ありません。
ーー最後に、貴社が描く未来のビジョンをお話しいただけますか。
森本光春:
私たちのビジョンは「日本の社会秩序の安定を、雇用から図る会社」であることです。外国人材が増えていく中で、彼らが仕事を通じて地域社会とつながり、孤立することなく暮らせる環境をつくる。生活基盤の安定は、巡り巡って日本社会全体の安定に直結します。雇用を通じて、互いを尊重し調和を大切にする「日本の文化」を次世代へ継承していく。そのための強固な土台をつくることこそが、私たちが目指す未来です。
編集後記
「できない理由ではなく、どうすればできるかを考える」。インタビュー中、森本氏が繰り返したこの言葉こそが、同社の飛躍を支える原動力だと感じた。人口減少や文化摩擦といった困難な課題に対し、同社は理想論ではなく、交番への挨拶といった泥臭い実務の積み重ねで「解」を出そうとしている。雇用を通じて社会秩序を守るという壮大なビジョンは、現場の一人ひとりに寄り添う温かな眼差しによって、着実に形になろうとしている。

森本光春/1974年岡山県生まれ。高校卒業後、関西を中心にホテル業界の宴会部でウェイターやキャプテンとして実務経験を積み、26歳で人材派遣業界へとキャリアチェンジ。2008年に株式会社バリュースタッフを設立し代表取締役に就任。ホテル・ブライダル特化の人材サービスを通じて「働く人の価値を高める」ことを掲げ、ディーセントワーク推進にも注力している。