
不動産の共有名義という特殊な領域において、法律とIT、不動産を掛け合わせた独自のビジネスモデルを展開するのが株式会社クランピーリアルエステートだ。親族間のトラブルや権利関係の複雑化によって“不健康な状態”に陥った不動産を、全国1,500以上の士業との強固なネットワークを武器に買取りを行い、再び流通可能な“健康な状態”へと再生させている。代表取締役を務める大江剛氏は、バー経営やIT企業の営業本部長を経て、29歳で独立を果たした。顧客に対しては常に「フェアであること」を貫き、組織運営においては「最後は自分が責任を取る」という不退転の決意で社員を鼓舞し続けている。複雑な不動産問題の解決を通じて社会に貢献し、家族や地域への愛を活動の原動力とする大江に、その歩みと経営への思いを聞いた。
バー経営からIT業界を経て辿り着いた士業の世界
ーー社会人としてのキャリアはどのようにスタートされたのでしょうか。
大江剛:
大学卒業後は、特定の組織に属さずフリーランスのような形で活動していました。20代前半で自らバーを開業したり、企業の商材を扱う営業代行を請け負ったりと、実地でビジネスの基礎を学んだ時期です。その後、26歳のときにITマーケティングの企業へ就職しました。当時はインターネット業界の勢いがすさまじく、知人がWeb業界の可能性を熱っぽく語る姿に感化され、自分もその世界に飛び込んでみたいと考えたのがきっかけです。
ーーIT企業ではどのような経験を積まれたのですか。
大江剛:
入社後は営業職として無我夢中で働き、幸いにもすぐにトップクラスの成績を収めることができました。会社が10名規模から100名規模へと急拡大する過渡期だったこともあり、入社2年目には営業本部長として約40名の組織を統括する立場を任されたのです。当時の社風は短期的な業績を追求する傾向が強かったのですが、私は「中長期的な視点」を何より大切にしていました。お客様と長く良好な関係を築けなければ、事業の継続は望めません。組織設計やサービスのあり方を考えるうえで、常に経営者と同じ目線に立って「持続可能な価値」を模索していました。
共有名義不動産を健康にする ITと法律を掛け合わせた独自の強み
ーーその後、独立して現在の事業に至るまでの経緯をお聞かせください。
大江剛:
29歳の時に第1子が誕生したことを機に、新しい挑戦をしたいという思いが募り、2013年に士業に特化したWebマーケティング会社(株式会社Clamppy)を設立しました。前職時代から士業の先生方との相性が良く、競合が少ない領域であったことが決め手です。当初は妻と2人、マンションの一室からの苦しいスタートでしたが、地道に信頼を積み重ねました。そして2018年、提携する先生方が抱える「法的に複雑な不動産トラブル」を解決するため、弊社を立ち上げたのです。
ーー具体的にどのようなトラブルを解決されているのでしょうか。
大江剛:
私たちの主戦場は「共有名義不動産」です。これは一つの物件を複数人で所有する形態ですが、自分一人の意思で不動産全体の売却や活用はできず、共有者の同意が必要となります。そのため、親族間で意見がまとまらないと、活用できないまま固定資産税などの負担だけが続く「負の資産」になりかねません。
私たちはこうした“不健康な状態”の不動産を、持分の買取りといった権利の整理を通じて、誰もが安心して利用できる“健康な状態”へと戻しています。
私たちの強みは、弁護士をはじめとする全国1,500以上の士業との連携体制です。このネットワークがあるからこそ、現在係争中の案件や、複雑な法的トラブルを抱えた物件であっても、お客様に安心感を提供しつつ、弊社がそのままの状態で買取ることが可能です。こうした専門的な知見により、法務・実務の両面からリスクを適正に見極められるため、「リスクが不明瞭だから」と必要以上に買取価格を抑えることはありません。
また、グループ会社のIT事業による安定したストック収益があることから、金融機関の融資に頼らず自己資金で買取りができることも大きな特徴です。金利負担がない分をしっかりと買取価格に還元できる仕組みが、結果として他社よりも高い価格での提示を可能にしています。
ちなみに、社内には共有持分に特化し、数多くの困難な事例を解決してきた専門チームが在籍しています。無理に買取りを進めるのではなく、それぞれの状況に深く寄り添い、「どう解決するのが最善か」という視点を第一に考えるコンサルティング的な姿勢を大切にしています。
この「士業連携による確かな専門性」と「徹底した対話による問題解決」の両立こそが、弊社の本質的な強みであると考えています。
社員を守り抜く 最後は責任を取るという経営者としての覚悟

ーー組織づくりにおいて大江社長が大切にされていることは何ですか。
大江剛:
私たちの組織は、不動産業界でイメージされがちな強引な雰囲気とは無縁の“職人集団”です。業務を「問い合わせ対応」「買取」「権利調整」「売却」「調査・重説作成」の5つの工程に細分化し、完全分業制を敷いています。一人がすべてを抱え込むのではなく、各分野のプロフェッショナルがチームで案件を解決へ導くのです。私が経営者として最も意識しているのは、社員が安心して挑戦できる環境を整えることです。採用の最終面接は必ず私が行いますが、それは「この人なら大丈夫だ」と私が太鼓判を押すためでもあります。現場が推薦した人材を私が承認した以上、もしその後に何か問題が起きたとしても、それは採用を決めた私の責任です。
ーー重要視している経営哲学について教えてください。
大江剛:
「最後は自分が責任を取る」という不退転の覚悟を、経営の根幹に据えています。採用の最終判断や高額な物件の売買など、経営には常にリスクが伴いますが、そこで何らかのトラブルが生じたとしても、担当した社員を責めることは決してありません。自らが「良い」と判断して承認した以上、すべての結果を私が引き受ける。この姿勢を明確に示すことで、社員は失敗を恐れずに挑戦し、高いパフォーマンスを発揮できるようになると考えています。社員を守り抜くという信念こそが、結果としてお客様に提供するサービスの質と安心感を支える土台となるのです。
家族と地域活動が支える情熱 公私の垣根を超えたマネジメント
ーー多忙な日々の中で、原動力となっているものは何でしょうか。
大江剛:
何よりも家族の存在が一番の支えです。現在、12歳の長女と8歳の長男がおり、間もなく3人目の子どもも生まれる予定です。家族と過ごす時間は、私にとって最も大切にすべき活力の源泉となっています。また、週末には息子の所属する少年野球チームで、低学年チームの監督を務めています。技術的な指導は専門のコーチに任せ、私は子どもたちが野球を楽しみ、成長できる環境づくりに徹する。グラウンドでも、私の役割はマネジメントそのものだと感じます。
ーー地域活動での経験が仕事に活かされることもあるのでしょうか。
大江剛:
野球チームの監督も、実は会社の経営と通じる部分が多々あります。個々の個性を活かしながら、チームとしての調和を図り、一つの目標に向かっていく。場所が会社からグラウンドに変わっただけで、本質は同じです。地域や家族のために汗を流すことで得られる気づきは、経営判断を研ぎ澄ます際にも役立っています。これからも家族を大切にし、地域に貢献しながら、不動産トラブルに悩む多くの方々を救うために走り続けたいと考えています。
編集後記
大江氏との対話を通じて、揺るぎない誠実さと覚悟を感じた。共有名義不動産という、権利関係が複雑に絡み合う難題に対し、常にフェアな姿勢で挑み続ける姿は、まさに社会の歪みを正す職人のようである。「最後は自分が責任を取る」という強い言葉は、変化の激しい現代において、リーダーが備えるべき資質そのものだろう。家族や地域を愛し、その情熱を事業の力へと変えるクランピーリアルエステートの躍進から、今後も目が離せない。
