※本ページ内の情報は2026年2月時点のものです。

ヘルスケア・ライフサイエンス領域に特化し、研究開発職に強みを持つ人材サービスを展開する株式会社RDサポート。1998年の創業以来、理系専門職人材のキャリア支援において確固たる地位を築いてきた。同社は今、バイオ・ヘルスケア領域への進出や理系プロ人材のシェアリングサービスを通じて、提供価値の幅を広げている。ヘルスケア・ライフサイエンス領域の専門職人材がライフイベントや年齢にかかわらず活躍し続けられるプラットフォームの構築を目指す同社。幾多の危機を乗り越え、人の縁を何よりも大切にしながら組織を牽引する代表取締役CEOの大澤裕樹氏に、創業の経緯から事業にかける思い、そしてこれからの時代に求められるキャリア観について話を聞いた。

研究職のキャリアが社会課題

ーーまずは、社長のキャリアの原点についてお聞かせください。

大澤裕樹:
もともと父が食品の研究をしていた影響もあり、大学では食品領域を専攻していました。ただ、私自身はサイエンスそのものよりも、マーケティングや情報処理といった分野に関心を抱いていました。

大学での研究活動を通じて自身の適性を見つめ直す中で、大企業や組織の中で生きるよりも、自ら道を切り拓く方が合っているのではないかと感じるようになりました。そうして就職か起業かという選択肢の中で、自然と起業への道を志したのです。

ーーどのような経緯で現在の事業を立ち上げられたのでしょうか。

大澤裕樹:
大きく二つのきっかけがありました。一つは、私自身が人生の行き先に悩み、敷かれたレールの上を歩むことに違和感を覚えていたことです。もう一つは、父の仕事や大学の研究室を通じて目の当たりにした、食品業界における構造的な課題です。

創業当時の1998年頃、研究職や技術職のキャリア制度は十分に整っていない状況。特に女性の研究者は、結婚や出産といったライフイベントを機に退職を余儀なくされるケースが多く、優秀な人材のキャリアがそこで途絶えてしまう現状がありました。一方で、当時の大手メーカーの現場では、不景気による採用抑制の影響で、慢性的な人手不足の状態でした。

「働きたいけれど働けない専門人材」と「人材が足りていない企業」が存在するのに、そこが繋がっていない。このミスマッチを解消できれば、社会的な価値を生み出せると考えたのです。

ーー創業期はどのような状況からスタートされたのですか。

大澤裕樹:
最初は本当に手探りの状態で、とにかく必死に経営を学びながら走る日々を送りました。電話帳を片手に営業活動を行ったり、大学院の先輩や友人に手伝ってもらったりしながら、一歩ずつ前に進みました。しかし、研究職人材を派遣するというビジネスモデル自体が新しかったこともあり、最初の半年間は売上が全く立ちません。「もう終わりかもしれない」と頭をよぎることもありましたが、半年後にようやく最初の契約が決まると、そこから少しずつ軌道に乗り始めました。

倒産の危機を救った社員と取引先の「縁」

ーー経営される中で危機が多かったとのことですが、そこで大切になるのは何ですか?

大澤裕樹:
リーマン・ショックや東日本大震災、派遣法の規制強化などが重なり、売上が半減して倒産が現実味を帯びた時期がありました。また、外部の経営陣を招き入れたものの、私自身の実務経験不足から組織の方向性が定まらずに崩壊しかけたこともあります。

そうした窮地を救ってくれたのは、現場で踏ん張ってくれた社員やお取引先様との「縁」でした。この経験を通じて「自分一人では何もできない」と痛感しています。それ以来、社員の声に真摯に耳を傾け、思いを汲み取りながら経営することを心がけています。

ーー組織づくりにおいて意識されていることはありますか。

大澤裕樹:
社長室にこもっていては現場の空気が分かりませんし、何より社員との距離が遠くなってしまいます。Googleなどの先進的な企業と同様に、私たちもフラットな関係性を重視しています。役職に関係なく、互いにコミュニケーションを取りやすい環境を作ることが、組織の風通しを良くすると信じています。

「知恵」をシェアする新時代の働き方

ーー貴社の強みや現在特に注力されている分野についてお聞かせください。

大澤裕樹:
弊社は単なる人材のマッチングではなく、専門性の高いメンバーによるコンサルティングを提供できる点が私たちの強みです。2020年から開始した「理系専門職のシェアリング事業」は昨対比150%で成長しており、多くの企業から注目を集めるまでになりました。

具体的には、企業の課題に対して、高度な専門性を持つプロフェッショナル人材がプロジェクト単位で参画し、必要なフェーズに応じた支援を行うサービスです。たとえば、バイオベンチャーや中小企業が新たな製品開発を行う際、社内にその分野の知見がないケースも珍しくありません。そこに、大手企業で研究開発のトップを務めてリタイアしたシニア人材などが、週1回や月数回の頻度でアドバイザーとして入るのです。

正社員の採用に至らないケースでも、どうしても専門知識が必要な場面で、プロの「知恵」をシェアすることが可能になります。これは企業にとってのメリットだけではありません。個人にとっても、定年後のセカンドキャリアや副業として、自身の経験を社会に還元できる場とも言えるでしょう。

創業以来の強みである食品領域に加え、近年はヘルスケアやバイオ、ライフサイエンス領域の支援に注力しています。

ーー貴社が掲げる理念と、それに基づいた今後の展望についてお聞かせください。

大澤裕樹:
弊社は「私たちの挑戦によって、智とキャリアが循環する社会を創る」という理念を掲げています。これからは個人の知見が会社を超えて循環していく時代です。そのため、正社員、人材派遣、シェアリングといった多様な形態を通じて、理系専門職の方々が柔軟に働ける環境を提供し続けたいのです。

その実現に向け、今後はバイオやライフサイエンス領域への開拓を加速させるとともに、次世代の経営幹部育成にも注力していきます。5年後、10年後は、定量的な売上目標よりも、「知恵とキャリアが循環するプラットフォーム」を完成させることに何よりも重きを置く方針です。

ーー最後にこれを読む若い世代の方々へ伝えたいことはありますか。

大澤裕樹:
正社員という枠組みにとらわれず、自分らしい働き方を見つけてほしいと願っています。たとえば、有資格者や研究開発関連のバックグラウンドの人がバックグラウンドと自身の強みを活かしながら、弊社の営業職として活躍されている事例もあります。専門性という軸を持ちながらも、それを活かすフィールドは一つではないのです。

私たちは、個人の「自己実現」を全力で支援する会社でありたいと考えています。働く人一人ひとりが自分のキャリアに責任と主体性を持ち、いきいきと活躍できる。そんなサステナブルなキャリアの循環を、これからも作り続けてまいります。

編集後記

大澤氏の語り口からは、社会の構造的な課題を事業で解決するという、強い意志が感じられた。創業の原点である理系専門職のキャリア支援は、時代の変化とともにバイオ・ヘルスケア分野へと拡大し、その価値を深めている。特に、高度な知識と経験を個人と企業の間で循環させるシェアリングサービスは、新しい時代の働き方と雇用のあり方を提示する。トップダウンを排し、人の縁と社員の主体性を重んじる組織運営は、事業の根幹である「知とキャリアの循環」という理念を体現している。同社が目指すプラットフォームの完成は、多様化する現代社会における、専門人材の活躍と自己実現の大きな可能性を示すものとなるだろう。

大澤裕樹/東京都出身、名古屋育ち。千葉大学大学院自然科学研究科中退後、人材サービス業の株式会社RDサポートを創業。その後、ライフサイエンス・ヘルスケア分野で複数の事業を立ち上げ、株式会社RDサポート、株式会社アイメックRD、株式会社Wishの代表取締役を務める。一般社団法人ウェルネスフード推進協会常任理事、人間総合科学大学客員教授としても活動し、産学官連携や人材育成、健康・食品産業の発展に尽力している。