※本ページ内の情報は2026年3月時点のものです。

廃棄物を資源と捉え、社会課題を解決する価値へと変えていく株式会社レックスホールディングス。同社は単なるリサイクル事業に留まらず、豊富な現場知見を活かしたコンサルティングや技術開発を通じて、循環経済(サーキュラーエコノミー)の実現を牽引している。常に時代の半歩先を読み、変化を恐れず挑戦を続ける同社を率いる代表取締役社長 兼 CEOの田中靖訓氏に、その経営信念と業界の未来について話を聞いた。

業界の地位向上を志した情熱と不変の決意

ーー事業に携わることになった経緯を教えてください。

田中靖訓:
学生時代から事業を手伝うなかで、大きな転機となったのは阪神・淡路大震災でした。テレビで目にした倒壊した高速道路の映像に、言葉を失うほどの衝撃を受けたことを覚えています。

当時社長を務めていた父は、自治体と連携してがれきの撤去に奔走することになりました。私は試験期間中でしたが、運転手兼鞄持ちとして同行し、西宮市などの自治体へ復旧の提案を行う父の姿を間近で見守ったのです。父の背中を通して社会貢献の重要性を肌で感じたことが、この道へ進む原点となりました。

ーー当時の業界の状況に対してどのような思いを抱きましたか。

田中靖訓:
当時は、残念ながら廃棄物処理・リサイクル業界の世間的なイメージは良いものではありませんでした。しかし、震災復旧を手伝う中で、この仕事は社会インフラとして決してなくならない重要なものだと痛感したのです。現場で真摯に働く人々が正当に評価されない業界の状況に対し、強い違和感を覚えました。社会に役立つ良い仕事をしている会社が、きちんと評価される産業にしていかなければならない。その思いが、私の経営の根底にあります。

社会課題解決に挑むプロの知恵と独自の視点

ーー改めて、貴社の事業内容を教えてください。

田中靖訓:
ひと言でいえば、廃棄物という資源の活用方法をマッチングする企業です。全国約500社のパートナー企業と連携し、最適なリサイクルや処理方法をコーディネートしています。

廃棄物は一つひとつ状態が異なるため、規格化された原料を扱う製造業よりも複雑な側面を持ちます。私たちは廃棄物を原材料と捉え、専門知識を持つスタッフがその中身を目利きし、何に使えるかを考えます。この目利きこそが、廃棄物を再び経済活動へ循環させる「サーキュラーエコノミー」実現の鍵となるのです。

ーー数々の災害復旧において貴社が担う役割についてどう捉えていますか。

田中靖訓:
弊社は「私たちがいなければ生まれなかった未来を創る」をミッションに掲げ、自社を「環境分野の社会課題を解決する会社」と位置づけています。大規模な不法投棄問題などもそうですが、災害は突発的に発生する非常に大きな社会課題の一つです。私たちはプロとして、できるだけ早く効率的に片付ける仕組みを考え、実行するべきだと考えています。東日本大震災以降も、広島の土砂災害や熊本地震、能登半島地震など、多くの現場で要請を受けてお手伝いをしてきました。

ーー現地での復興支援においてどのような方針を掲げていますか。

田中靖訓:
現地へ行くスタッフには、「持っているノウハウは、余すことなく地元の会社においてきなさい」と伝えています。復興は本来、地元の人々が担うべきもの。私たちの役割は、次に同じようなことが起きた時に、自分たちの助けがなくても地元の方々だけで対応できるようにすること。以前、広島市の土砂災害の復旧をお手伝いした数年後、再び豪雨被害があった際に市役所へ連絡すると、「大丈夫。全部教えてもらったから自分たちでできる」と言われました。それこそが私たちの目指す姿です。

ーー仕事をする上で最も大切にしている考え方をお聞かせください。

田中靖訓:
誠実に仕事をするということです。お客様や地域社会、そして共に働く仲間に対してはもちろん、自分自身にも嘘をつかない。何か判断に迷った時は、この状況で最も誠実な方法は何かを常に考えるようにしています。自信を持って前に進むための、全ての基本だと考えています。

未来をイメージし変化を競争力に変える組織

ーー経営の指針となっている信念についておうかがいできますか。

田中靖訓:
「変化できるものだけが生き残る」という考えを大切にしています。世の中の状況が変われば、私たちに求められる役割も変化するからです。5年後や10年後の未来をイメージし、他社に先んじて変化を始める姿勢が、結果として弊社の競争力につながっています。経営層だけでなく、多くの社員がその重要性を理解し、敏感に事業へ取り組んでいる点が弊社の強みです。

ーー人材育成において、特に力を入れていることはありますか。

田中靖訓:
「未来塾」という次世代リーダー育成の研修を長年続けてきました。全国の支社から選抜したメンバーが2年間、四半期に1回のペースで集まり、宿泊を伴う集中研修に臨みます。始めた当時はまだ会社も小さく大変でしたが、設備だけでなく人への投資をしっかり行うべきだと考えていました。この「未来塾」の卒業生たちが、現在グループ会社の社長や役員として活躍してくれています。彼らの存在なくして、会社の成長はなかったでしょう。

ーーどのような方が貴社で活躍されていますか。

田中靖訓:
上司の顔色をうかがうのではなく、会社全体や業界、さらには社会といった広い視点を持って、自分の意見をしっかり言える人です。私自身、社員には社長を止めるくらいの気概でいてほしいと願っています。変化の多い会社なので、変化を楽しみながら積極的にチャレンジしてくれる人が、いきいきと活躍しています。

一次産業の課題と向き合う新たな領域への挑戦

ーー今後、特に注力していきたい分野についてお聞かせください。

田中靖訓:
デジタル技術やAIの活用です。廃棄物処理‧リサイクル業界はデジタル化が少し遅れている分野なので、積極的に取り組みたいと考えています。現場の「こんなものがあったら便利なのに」というアイデアを、AIを使ってすぐにアプリケーションとして形にし、実装してみる。そうした小さな成功体験を積み重ね、パートナー企業にも提供していくことで、業界全体の効率化に貢献したいです。

ーーさらに先の未来へ向けてどのような展望を描いていますか。

田中靖訓:
環境問題はこの先、食料や生物多様性といった「一次産業」の課題に直結していきます。今後は、廃棄物問題の解決にとどまらず、漁業や農業、畜産といった一次産業が抱える課題にも向き合っていきたいと考えています。私たちのグループの原点は大阪湾の漁師であり、私自身、環境の変化が一次産業に及ぼす影響を肌で感じているからです。

かつてヨーロッパで目の当たりにした脱炭素への潮流に対し、日本はまだ遅れているという強い危機感があります。だからこそ、自社だけが良ければいいとは考えません。今後は、「生物多様性クレジット」のような新しい環境価値の創出や、脱炭素の流れを中小企業へ波及させる活動にも注力していきたいです。培った知見を業界全体に広め、みんなで良くなっていく。業界全体が共に発展する変化のきっかけを、これからも実直につくり続けていく決意です。

編集後記

阪神・淡路大震災の原体験から、社会インフラとしての使命を胸に事業と向き合う田中氏。その言葉の端々からは、目先の利益ではなく、業界や社会全体を良くしようとする誠実さがうかがえる。自社のノウハウを惜しみなく現地に提供する姿勢は、社員の誇りを育み、企業の競争力へと昇華されている。常に半歩先を見つめ、変化を恐れず挑戦を続ける同社の姿勢は、サーキュラーエコノミーの実現に向けた確かな原動力となっている。

田中靖訓/1973年、大阪府生まれ。大学卒業後、環境コンサルタントを経て、2000年リマテックに入社し、廃棄物・資源循環分野に携わる。岩手・青森県境不法投棄事案や東日本大震災での災害廃棄物対応に従事。リマテックグループ代表を経て、2025年よりレックスホールディングス代表取締役社長に就任。「次世代に誇れる社会基盤づくり」を掲げ、資源循環・環境修復事業を展開し、公民連携による脱炭素基盤の構築に取り組んでいる。