
人事部門を中心に、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)とSaaSを組み合わせたBPaaS事業を展開する株式会社エコミック。同社は独自の強みで顧客の業務効率化を支援している。さらに、日本の生産性向上や、災害時の事業継続といった社会課題を解決することにも貢献する。代表取締役社長の熊谷浩二氏は、小学生の頃に抱いた「社長になる」という夢を実現するため、一貫した軸を持ってキャリアを歩んできた。常に前を向き、思い通りにいかない状況さえも成長の糧に変えてきた同氏の経営における信念、そして「管理部門のBPaaSで日本一になる」という確固たる目標を掲げた今後の展望に迫る。
社長になる夢を追い続けたキャリアの原点
ーー社長を目指したきっかけは何でしたか。
熊谷浩二:
私は小学生の頃から「社長になる」という夢を持っていました。理由は2つあります。一つは現実的な側面で、私が今でいうヤングケアラーだったことです。将来、両親と知的障がいを持つ弟の面倒を見るには、普通のサラリーマンでは難しいだろうと感じていました。家族を養うためにも、大きく稼げる人間になりたいと思いました。
もう一つは、出身地である名古屋の影響です。信長や秀吉、家康といった郷土の英雄たちへの憧れがあり、現代において自分も何かしらの形で「全国制覇」を成し遂げたいと考えました。ビジネスの世界で、日本のどこへ行っても自分の仕事に関わるお客様がいる。そうした状況を実現できたら嬉しいなと、小学生ながら無邪気に夢見ていました。
ーー社会人としては最初どのようなキャリアを歩まれたのですか。
熊谷浩二:
大学で経営学を学びましたが、卒業してすぐに会社経営ができるとは到底思えませんでした。働きながら、自分に欠けているピースを埋める必要があると考えたのです。
まずは、大学の座学だけでは身につかなかった、実務で通用する決算分析能力の習得と、組織論や戦略論の実践です。机上の空論ではなく、戦略が実際に組織をどう変えていくのか、そのリアルを肌で感じたいと考えていました。
また、事業を存続させる上で不可欠な売る力を、ノルマという厳しい環境下で磨くことが最優先だと覚悟を決めていましたね。そして何より、当時の私にとって未知の存在だった経営者の方々と数多く出会い、その人間性や思考に触れること。これらを若いうちに、経験しておきたかったのです。この目的を同時に叶えられる場所として、銀行が最適だと考え、入行しました。
ーー銀行員時代で特に印象に残っていることはありますか。
熊谷浩二:
入行当時は就職氷河期で、金融危機も重なり、当初のイメージとは異なる仕事から始まりました。本来は融資でビジネスを支えたかったのですが、現実は債権回収や金利交渉に追われる毎日です。しかし、これこそが交渉力を磨く好機だと前向きに捉えて邁進しました。
その後、組織再編で法人担当ではなく個人のお客様を担当する部署へ異動となります。経営者に会うという当初の目的からは一時的に遠ざかり、戸惑いもありました。ですが、嘆いても仕方がありません。目の前のミッションを全うしようと、個人の資産運用提案に全力を注ぎました。
結果的に、その経験が法人営業とは異なる厳しさや面白さを教えてくれました。思い通りにいかない状況でも、与えられた役割を全うすることで道は開けると実感した期間です。
顧客の成長を支えるBPaaS事業の核心

ーー改めて、貴社の事業内容について教えてください。
熊谷浩二:
弊社はBPaaS事業を展開しています。これはBPO(※1)とSaaS(※2)を組み合わせたもので、現在は主に人事部門の業務アウトソーシングを手がけています。給与計算などのルーティンワークを弊社が担うことで、お客様は限りある経営資源、特に貴重な人材を本業に集中させることができます。
これは単なる効率化に留まりません。利益を生まない管理部門の業務を外部に切り出すことで、お客様は利益を増やす活動に注力できます。その結果、従業員の給料を上げることに貢献できるのです。
また、災害時のリスクヘッジとしても大きな役割を果たします。弊社の拠点は、災害リスクが比較的少ない札幌にあります。もし主要都市が被災しても、給与計算を止めることはありません。場所を分散し、事業継続を支える「保険」の役割も担っています。
(※1)BPO:企業活動における業務プロセスの一部を一括して専門業者に外部委託すること。
(※2)SaaS:インターネット経由でソフトウェアの機能を利用できるクラウドサービスのこと。
ーー他社のサービスとの違いや強みは何でしょうか。
熊谷浩二:
強みは大きく3つあります。1つ目は、お客様独自のルールに柔軟に対応できる点です。他社ではシステムに合わせた運用を求められることが一般的です。しかし弊社では、お客様の大切なルールを尊重して受託します。日本最大級の受託実績に基づき、日々の業務改善を徹底して行っているため、人手による丁寧な対応を含んでもコストを十分に吸収し、高いコストパフォーマンスで提供できるのです。
2つ目は、企業の規模を問わず対応できる実績です。弊社は大企業から中小企業まで、非常に幅広く取引があります。そのため、規模の異なるグループ企業全体の業務を一括でお引き受けすることも可能です。
3つ目は、強固な災害対策(BCP)体制です。弊社は札幌本社のほかにも、中国の青島にも拠点を構えています。万が一、日本国内で大規模な災害が発生した際も、海外拠点と連携することで、業務を止めずに遂行できる体制を整えています。
継続と改善で目指すさらなる成長
ーー経営において大切にされている考え方は何ですか。
熊谷浩二:
最も大切にしているのは「継続」です。会社は人間と違って寿命がありません。弊社の事業が止まることは、お客様の大切な業務を止めることを意味します。だからこそ、永続することが重要だと考えています。ただし、現状維持のままでは継続はできません。継続するためには、会社が成長し続ける必要があります。そして、会社の成長の源泉は、社員一人ひとりの成長にほかなりません。
弊社は形のある商品を売るのではなく、人の力が価値を生むビジネスです。同じことを繰り返すだけでは、付加価値を高めることはできません。自らを更新し続け、アウトプットの質を上げることが重要です。個人の成長が、会社の成長と社員の幸福に直結すると確信しています。
ーー今後のさらなる成長に向けた注力テーマを教えてください。
熊谷浩二:
大きく4つのテーマを掲げ、注力しています。
まず1つ目は、新規取引先の開拓。これは単なる営業活動ではなく、ある種の「社会正義」だとさえ捉えています。なぜなら、コスパに優れた弊社のサービスを広めることは、お客様の利益創出を助け、ひいては日本の平均賃金の底上げに直結するからです。より多くの企業へ貢献したい、その一心ですね。
2つ目は、DXの推進と生成AIの活用です。人手不足の中で生産性を高め、働く人の給与を増やしていくためには、テクノロジーの力が不可欠です。単なるシステム導入に留まらず、現場の運用と最新技術を融合させた、真の解決策を先んじて提示していきます。
3つ目は、マーケティングやブランディングの強化で、これまでの遅れを取り戻すべく抜本的な改革を進めています。目指すのは、「BPaaSといえばエコミック」と真っ先に名前が挙がる状態。「任せて安心、かつコストパフォーマンスが良い」という認知を、一気に広めていく覚悟です。
そして4つ目が、海外市場への本格展開です。2025年2月に上海の企業を買収し、中国市場への足がかりを得ました。現地の日系企業様が抱える「不況下の合理化」や「ガバナンス強化」という切実な課題に対し、私たちのBPaaSで解決策を提示していく。日本国内のみならず、中国においても「なくてはならない存在」へと成長させていきます。
成長意欲のある仲間と共に「日本一」の目標へ
ーーどのような方と一緒に働きたいとお考えですか。
熊谷浩二:
何よりも「成長意欲のある人」に来ていただきたいです。人間は誰しも1年経てば、1つ歳をとり、体力は自然と落ちていきます。つまり、前年と同じことを同じように続けているだけでは、現状維持どころか「退化」してしまうのです。だからこそ、常に新しい価値を積み上げ、昨日の自分をアップデートし続けられる人材が必要です。
会社としても、個人の成長がそのまま組織の成長に直結するフェーズにあります。未完成な部分も含めて楽しみ、自ら組織を大きくしていこうという気概のある方と、ぜひ一緒に働きたいですね。
ーー最後に、貴社の今後の展望についてお聞かせください。
熊谷浩二:
10年後には、管理部門のBPaaSを担う企業として、名実ともに「日本一」と言える存在になることが目標です。現在、弊社はこの業界で唯一の上場企業という立場ですが、事業規模においてはまだ一番ではありません。だからこそ、ここから正真正銘のトップを目指して駆け上がっていく余地があります。私たちが目指すのは、単なる売上規模の拡大だけではありません。日本中の企業のバックオフィスを支えるインフラとなり、企業の生産性向上、ひいては働く人々の賃金アップに貢献することです。この「社会正義」とも言えるミッションを果たしながら、圧倒的なリーディングカンパニーへと成長していきたいですね。
編集後記
小学生の頃に抱いた「社長になる」という夢。その実現のために、自分に足りないものを冷静に分析し、着実にスキルを積み上げてきた熊谷氏のキャリアは、一貫した目的意識に貫かれている。その姿勢は、会社の経営における信念にも通じる。継続のために改善を続け、社員一人ひとりに成長を促す。思い通りにいかないことさえも成長の糧として前進を続けるその先に、「日本一」という明確な目標が据えられている。管理部門のあり方を変え、日本社会の発展に貢献しようとする同社の挑戦に今後も注目していきたい。

熊谷浩二/1971年4月生まれ、愛知県名古屋市出身。1995年に一橋大学卒業後、株式会社さくら銀行(現・株式会社三井住友銀行)へ入行。2000年に同行札幌法人営業部へ転属。2004年に株式会社エコミックに入社し、取締役に就任。同年6月には代表取締役社長に就任。2006年に札幌証券取引所アンビシャス上場。2020年4月に東京証券取引所JASDAQ(スタンダード)上場を果たす。現在は子会社3社の代表にも就任。