※本ページ内の情報は2026年3月時点のものです。

2013年の設立以来、プラント事業を主軸に事業領域を拡大し続けている株式会社京浜総工。代表取締役の石井伸武氏は、毎年初心に帰って挑戦を続ける「毎年が創業1年目」の姿勢を貫いている。建設業という堅実な基盤を持ちながら、社内ビジネスコンテストでの新規事業創出や全国からの人材採用など、柔軟な組織づくりを進める同社。なぜ、安定した収益源がありながら、あえて変化と多角化を選び続けるのか。建設業の枠を超えて進化を続ける同社の歩みは、これからの組織のあり方にどのような可能性を示すのか。変化を恐れず突き進む、その核心に触れた。

物流から建設へ 過酷な現場で培った「やりきる力」

ーーまずは、起業に至るまでの経緯をお聞かせください。

石井伸武:
高校卒業後、最初は父が経営する物流会社に入社しました。しかし、すでに内情をよく知っている環境で働くことに物足りなさを感じ、それまでとは全く違う分野へ飛び込みたいと考えるようになりました。当時はまだ若く、「まずは自らの力で、ゼロから何かをつくり上げてみたい」という純粋な衝動から、2000年に建設業界への転身を決めました。

そこから約10年間、現場監督や営業所長、営業部長、さらには取締役としてキャリアを積みました。その中で、誰かの指示に従うだけではなく、自身の理想とする組織を自らの手で形にしたいという思いが確信に変わり、2013年に弊社を設立しました。

ーー独立前の経験で、今の経営に生きていることはありますか。

石井伸武:
現場で過ごした10年以上の歳月は、今の私の原点です。当時の建設業界は、今では考えられないほど過酷な環境でした。「見て覚えろ」が当たり前の世界で、誰も手取り足取り教えてはくれません。そんな中で生き残るには、自分で必死に研究し、実践するしかありませんでした。非常に厳しい時代でしたが、そこで「何があっても最後までやりきる力」がついたと思います。無理難題に対しても「できません」とは言わず、どうすれば実現できるかを考え抜く。その精神的なタフさは、経営者となった今でも私の土台になっています。

「多角化」は社員のため 安定と挑戦を両立させる生存戦略

ーー現在の具体的な事業内容とその広がりについてお聞かせください。

石井伸武:
弊社の核となるのは、創業当初から手がけている石油化学プラント内でのメンテナンスや補修工事です。常に危険と隣り合わせの特殊な環境下での施工には、極めて厳格な安全基準と高い技術力が求められます。その分、参入障壁が非常に高く、景気に左右されにくい安定した収益基盤となっています。

この強固な主軸事業を足場に、現在は、M&Aを通じた一般住宅のリフォーム事業や、建設資材の卸売事業なども展開しています。

ーーなぜ、事業の多角化に取り組まれているのでしょうか。

石井伸武:
あえて多角化を推し進めているのは、特定の市場だけに依存することのリスクを回避し、会社を永続させるためです。変化の激しい時代において、1つの事業が停滞しても他で支え合える体制を築くことこそが、社員の雇用を守り抜くための最善の生存戦略だと考えています。

また、多角化することで、社員のキャリアパスも広がります。たとえば、現場の施工管理から営業へ、あるいはドライバーへといったように、グループ内で職種転換ができれば、社員は会社を辞めずに新たな挑戦ができます。1つの軸にとらわれすぎず、チャンスがあれば異業種にも挑戦し、グループ内で人が循環するような組織を目指しています。

全員が「今日からスタート」 意欲ある人の挑戦を支える組織へ

ーー採用や人材育成において、特に力を入れている取り組みはありますか。

石井伸武:
採用面では、現在地元の川崎だけでなく、全国から幅広く仲間を募るために社内規定の整備を進めています。今年は全国500校に求人を出し、借り上げ社宅を用意し、地方の若者が安心して川崎で働ける環境を整えています。また、社員が長く健康に働けるよう、「健康経営優良法人(中小規模法人部門)」の認定を取得し、働きやすさの整備にも余念がありません。

人材育成について、中途採用の方に対しては、これまでのキャリアに関わらず、一度入社年次をフラットにするよう伝えています。弊社は「毎年が創業1年目」という姿勢を貫いているため、全員が「今日からスタート」という気持ちで、ともに切磋琢磨できる人を求めているからです。

また、社員の「やりたい」を形にするため、社内でビジネスコンテストを開催しています。昨年は47件ものアイデアが集まりました。実現可能な案には予算をつけ、発案者を責任者に抜擢して事業化を目指します。実際、今年の夏から始まる新事業も、このコンテストから生まれたものです。建設業の枠に囚われず、社員がワクワクするようなアイデアを実現できる環境を整えています。

ーー求める人物像について教えてください。

石井伸武:
一言でいえば「型にはまらない人」です。もちろん工事の専門知識があるに越したことはありませんが、それ以上に、枠に収まらない柔軟な発想を求めています。たとえば、工事の管理をしながら営業の視点を持っていたり、全く違う業界の経験を新しいビジネスに結びつけたりできるような、多才なアイデアを持つ人が理想的です。

弊社には社内でのキャリアチェンジ制度もあり、本人の意欲次第でさまざまな職種に挑戦できるため、好奇心旺盛で自分の可能性を広げたいという方には、非常に面白い環境だと自負しています。

ーー最後に、今後の展望についてお聞かせください。

石井伸武:
まずは2035年までに、売上高100億円、社員数100名から150名体制を目指しています。単純計算ですが、100人で100億円売り上げれば、一人当たりの生産性は1億円になります。それだけの付加価値を生み出すことができれば、社員へも十分に還元できるはずです。

また、将来的にはオフィスをもっと楽しい場所にしたいと考えています。具体的には、社内にバーをつくったり、バスケットコートをつくったりして、社員が仕事終わりに集まって楽しめるようなスペースを設けるのが夢です。直近では、建設工具や食品、日用品まで扱い、リフォーム相談所も兼ねた店舗の出店も計画しています。

真面目な建設業の顔を持ちながら、中身は遊び心あふれる「老舗ベンチャー」でありたい。そんな会社を、社員みんなでつくっていきたいと考えています。

編集後記

「型にはまらない人」を求め、社員の「やりたい」という意欲をビジネスコンテストで次々と形にする石井氏。その柔軟な姿勢の根底には、過酷な現場で培われた「最後までやりきる力」という強固な土台があると感じた。プラントメンテナンスという堅実な事業を柱に据えつつ、小売業やリフォーム事業など、建設業の枠を超えて新しい「場」を広げ続ける同社。社員を守るための多角化と、全員が「今日からスタート」という熱量を持って挑む「老舗ベンチャー」としての風土は、既存の業界イメージを大きく塗り替えていくだろう。「売上高100億円」という高い目標を掲げ、遊び心を忘れずに進化を続ける同社の飛躍が楽しみだ。

石井伸武/1977年神奈川県川崎市生まれ。神奈川県立大師高等学校卒業後、物流会社へ入社。2000年に川崎市の建設会社へ転職。工事監督・事業所長・営業部長・取締役を務める。2013年5月に株式会社京浜総工を創業し、代表取締役社長に就任。