
「嘘をつかない」という信念を貫き、情報の可視化を徹底することで、中国貿易業界において信頼を築くゴールドバッハ株式会社。代表取締役の和田太郎氏は、20代で中国の生産現場の全工程を網羅した圧倒的な現場知見を武器に、日本企業の中国仕入れを根底から変えようとしている。2026年4月にはアリババグループの卸売サイト「1688」の日本地区公式総代理店「1688Japan」の運営参画も決定。さらなる飛躍を遂げる同社。アナログな貿易業務を最新DXや生成AIでアップデートし、「中国貿易ならゴールドバッハ」と呼ばれるプロ集団をつくり上げる軌跡と未来の戦略に迫った。
20代で体得した地道な全工程と誠実さへのこだわり
ーーまずは、中国貿易の道に進まれたきっかけから教えてください。
和田太郎:
私は上海の大学を卒業したのですが、中国の卒業シーズンである6月は日本の新卒採用のタイミングと合わず、通常の就職活動ができませんでした。そんな折、中国語ができる人材を探していた日本のアパレル企業に縁あって入社することになりました。そこでは、物の手配から自社工場の管理、生産計画、人事、さらには現地の法律の勉強やストライキへの対応まで、本当にさまざまな業務を任されました。貿易における地道な全工程を20代で体得できた経験は、現在の大きな基盤となっています。
ーーそこから独立し、今の事業を立ち上げようと思った理由は何だったのですか。
和田太郎:
いずれは自分で事業をやりたいという思いは20代半ばからありましたが、まずは10年ほどサラリーマンとして実務経験を積みました。事業として中国貿易の支援を選んだのは、当時の中国貿易業界に蔓延していた情報の不透明さに強い課題感を持ったからです。当時は現地の工場や貿易の仕組みを知らない日本のEC事業者に対し、不当に利益を得ようと不誠実な対応をする業者が少なくありませんでした。
だからこそ私は、情報のオープン化や第三者検品を徹底し、「嘘をつかない」「誠実に取り組む」ことをビジネスの根幹に据えたのです。不良品が多ければ、お客様のビジネスは続いていきません。この「誠実さ」と「可視化」こそが、私がこの事業を立ち上げた理由であり、現在の最大の強みでもあります。
圧倒的コスト力と生成AIで変革する次世代の貿易DX

ーー現在展開されている事業の強みについて教えてください。
和田太郎:
弊社は日本のEC事業者様向けに、世界最大の卸売市場がある義烏拠点の強みを活かしたアテンドや、中国のサイトからの代理購入などを、川上から川下までワンストップで提供しています。
さらに大きな強みとして、2026年4月よりアリババグループの卸売サイト「1688」の日本地区公式総代理店である「1688Japan」の運営に参画することが決まっています。これにより、同業他社を凌ぐコスト競争力と信頼性を確立し、さらに強力な体制でお客様をサポートできるようになります。
私たちは網羅的なサービスを提供しながらも、トータルコストにおいて他社を凌ぐ圧倒的なコストパフォーマンスを実現できるスキームを構築済みです。単なる代行ではなく、手数料の安さに加えて運賃や為替の最適化、現地での価格交渉も含めてお客様に還元しているからです。日本社会にはまだ「中国仕入れ=不安、品質が悪い」という偏見がありますが、私たちはこの圧倒的な実力と誠実な仕組みでその誤解を解消し、よい商品とお客様をつなぐというよい循環をつくっていきたいと考えています。
ーー今後、事業をどのように進化させていくお考えですか。
和田太郎:
貿易という極めてアナログな業界に、生成AIや最新ツールを導入し、DXを推進していくことが重要だと考えています。たとえば、アリババグループが提供している「DingTalk(ディントーク)」というスマートワークスペースの活用です。これはチャットからビデオ会議、AIによる議事録作成、ドキュメント管理までが一つになった非常に強力なツールで、中国ではすでに数千万社の企業で使われています。
私たちはこの「DingTalk」の普及を推進するとともに、そこに生成AIを組み込み、商品の選定からEC運営、マーケティングまでをシームレスに行える環境をお客様に提供しようとしています。中国の最先端技術を日本向けにカスタマイズし、誰もが「簡単・正確」に仕入れを行えるようにすることで、DX推進のトップランナーを目指し、お客様のビジネスをさらに加速させていきたいですね。
中国貿易の正しい知識を発信し業界の常識をアップデート
ーーマーケティングや情報発信について、現在の業界にはどのような課題があると感じていますか。
和田太郎:
現在、SNSなどで情報発信をしている講師やコンサルタントが、実態を知らないまま、顧客の為ではなく、自身の為にキックバックを受け、他社を宣伝しているケースが多く見受けられます。これから中国輸入を始めようとする方々が、そういった情報に流されてしまう現状に強い危機感を抱いています。たとえば、個人輸入の免税措置を悪用した転売(脱税行為)や、よく分からないまま偽物を仕入れて販売してしまうといった、誤った知識で始めてしまう方もいらっしゃいます。
私たちは、お客様の仕入れコストが高くなるような形で宣伝はしたくありません。だからこそ、私たち自身がSNS等を活用し、正しい知識を優しく分かりやすく発信していく必要があると考えています。せっかく中国貿易に興味を持った方が変な業者に食い物にされないよう、最初の段階で正しく比較・理解してもらうためのストッパーになりたいですね。
ーー最後に、今後の会社の目標と求める人物像についてお話しいただけますか。
和田太郎:
事業の目標としては、この3年間で売上高を現在の5倍規模にまで拡大させる計画です。そのためには、「中国貿易のことならゴールドバッハに聞けば間違いない」という圧倒的な認知を獲得することが最優先事項です。組織としては、社員一人ひとりが「顧客の課題を解決するプロ」として能動的に動ける集団でありたいと思っています。ただ言われたことをやるのではなく、業界やお客様のビジネスを深く理解し、自ら提案して価値を生み出していく。AIや最新システムを活用しながらも、最後は「人」としてのプロフェッショナルな知見が勝負を分けます。誠実に、そして能動的に商売を面白がれる仲間とともに、業界の常識をアップデートし続けていきたいですね。
編集後記
不透明な業界の慣習に染まることなく、「嘘をつかない」という真っ直ぐな信念で顧客との信頼を築いてきた和田氏。20代での泥臭い現場経験が、圧倒的なコスト競争力とワンストップのサービス体制という確固たる強みを生み出している。さらに、「1688」の日本総代理店参画や「DingTalk」を活用したDX推進など、次々と先手を打つ姿勢はまさに「ベンチャー」の趣だ。誠実さと最先端テクノロジーの融合により、同社が日本の中国貿易の新たなスタンダードとなる日は近いだろう。

和田太郎/1980年生まれ、埼玉県出身。上海の復旦大学卒業。日本のアパレル問屋、アパレル雑貨企業にて中国現地法人の工場や貿易会社の管理など経験ののち、2014年中国浙江省義烏市と東京上野に貿易会社を設立し、中国仕入れ代理購入サービス「淘太郎(タオタロウ)」を展開。多くの日本EC事業者、商社、アパレル企業等に対し商品供給を行う。