
アパレルの二次加工を軸に、ブランドからクリエイター、スポーツチームまで幅広い顧客のものづくりを支える株式会社グッドスミス。同社は「モノづくりに妥協なし。」というスローガンを掲げ、高度な技術力と短納期を武器に成長を遂げてきた。夫婦2人で立ち上げた会社は、現在50名規模の組織へと拡大している。今回は、さまざまな職業を経験した後に独立を果たした代表取締役の添田慎也氏に、同社の強みや人を大切にする経営方針、今後の展望について話をうかがった。
多様な経験から学んだ「顧客を喜ばせる」商売の基本
ーー起業されるまでの経緯について教えてください。
添田慎也:
アパレルの専門学校卒業後、建築現場や居酒屋で働きましたが、建築は朝が早く、居酒屋は深夜まで及ぶ勤務形態でした。特に、夜の業務が中心となる飲食業では、将来、子どもができたときに一緒に過ごす時間を確保できないのではないか、と葛藤していたのです。そこで、本来志していた洋服の世界へ戻る決意を固めました。
その後、プリント工場に10年間勤務し、職人として技術を磨く傍ら、営業や生産管理など経営の実務も担いました。異業種を含めたさまざまな仕事を経験したからこそ、現場の過酷さや自身の適性を見つめ直すことができ、そのすべてが現在の糧となっています。
ーー前職での10年間の経験は、現在の経営にどう活きているのでしょうか。
添田慎也:
根底にあるのは「お客さんを喜ばせること」です。一生懸命に仕事をして、「ありがとう」と言われるのがやはり一番嬉しいんですよね。発注の規模は関係ありません。たとえ弊社にとっては全体の1パーセントに過ぎない小さなお仕事であっても、依頼されたお客様から見れば、その1着が「100パーセント」のすべてだからです。そのため、どんな小ロットの注文であっても、誠心誠意向き合うようにしています。
この姿勢は営業担当にも伝えており、小さなお客様でもすべて大事にしようと徹底しています。そうやって真摯に向き合っていれば、必ずお客様の笑顔や次のリピート依頼につながっていくと確信しているんです。そうやって目の前のお客様と真摯に向き合い、信頼を一つひとつ積み上げてきた結果、現在は約50名の職人を抱える体制にまで成長しました。
強みは「技術力」と「スピード」妥協なき姿勢で価値を生み出す

ーー貴社の事業内容と、他社にはない強みについて教えてください。
添田慎也:
弊社は、シルクスクリーンプリントをはじめ、刺繍やインクジェットなど、アパレルの二次加工全般を自社工場で手がけています。洋服だけでなく、アニメやアイドルのグッズ、スケートボードなどオールジャンルで対応できるため、頼まれたら何かしら形にするスタンスをとっています。
最大の強みは「技術力」と「短納期」です。無理な価格競争はせず、適正な値段を守る代わりに、スピードとクオリティを上げることで、お客様の販売タイミングを早め、回転率の向上や売り逃しの削減に貢献しています。また、毎年積極的に設備投資を行っています。スピードやクオリティを高めてお客様の売り時を逃さないことはもちろん、最近は環境に配慮した機械の導入も進めています。CO2削減などは大手企業様が取引において重視されるポイントでもあり、そうした時代のニーズにもしっかり応えていきたいですね。
ーースローガンの「モノづくりに妥協なし」には、どんな思いがあるのでしょうか。
添田慎也:
実はこれ、もともと私が普段から口にしていた言葉を、社員たちが自発的に拾ってスローガンに掲げてくれたものなんです。人間ですから、仕事中にふと「ちょっとサボろうかな」とか「これくらいでいいか」と甘えが出そうになる瞬間って絶対にあると思います。でも、その時にこの言葉を思い浮かべることで、「あ、今、自分は妥協しようとしていたな」と気づいて、もうひと踏ん張りできる。技術に妥協したり、自分に甘えたりせずに、「もっとチャレンジできたんじゃないか」と振り返るための、私たちにとって大切な指針になっているのです。
日本製品の展開と嘘をつかない組織づくり

ーー今後、事業として注力していきたいことはあるのでしょうか。
添田慎也:
商社やブランドが既に在庫として持っている、いわゆる「ありボディ」(※)事業の拡大です。インバウンド需要の増加もあり、日本製の品質は確かな競争力になります。他社と同じ土俵で価格を競うのではなく、高度な技術、洗練されたデザイン、そして縫製の精緻さで勝負する。将来的には、この日本製「ありボディ」を海外市場へ展開することも視野に入れています。
(※)ありボディ:アパレル業界において、商社やブランドが既に在庫として持っている、またはすぐに出荷可能な、未加工の製品。
ーー組織づくりや経営において、大切にしている方針は何でしょうか。
添田慎也:
経営で最も重視しているのは「人」です。結局、人がいないと会社は成り立ちませんから。そのために、私自身が「嘘をつかない」ことを何より大切にしています。向き合えば嘘は必ず伝わってしまいますし、社員に対してもお客様に対しても、常に誠実でありたいと考えているからです。
また、社員には失敗を恐れず挑戦するよう促しています。成長の過程に失敗はつきものです。会社員時代、部下を厳しく指導しすぎて人が離れてしまった苦い経験があります。その反省から、現在は一人ひとりの意見に耳を傾け、どうすれば状況が好転するかを対話を通じて模索するようにしています。
強い信頼で結ばれた 頼りがいのある会社へ

ーー最後に、会社として目指す将来像を教えていただけますでしょうか。
添田慎也:
急激な成長や、数値目標を追うことは考えていません。会社というのは、結局のところ地道な積み重ねだと思うからです。「一つずつできることを増やしていく」という気持ちでお客様や従業員としっかり向き合っていれば、人も続いてくれますし、技術も向上して、自ずと大きくなっていくのかなと思います。その結果として、お客様から「頼りがいがある会社」だと思ってもらえる存在でありたいです。仕事をする上で信頼関係はとても重要ですから、これからも信頼され、いざという時に頼って取引をしてもらえるお客様を一人でも多く増やしていければと思っています。
編集後記
多様な職種を経験し、現場の最前線から経営の実務までを体得した添田氏。言葉の端々から、ものづくりへの情熱と周囲への深い愛情がにじむ。安易な価格競争を避け、技術力とスピードという本質的な価値を提供する姿勢は、多くの企業にとって一つの道標となるはずだ。日本製「ありボディ」の展開という新たな挑戦に踏み出す同社の、飛躍が楽しみだ。

添田慎也/1982年東京生まれ。アパレルの専門学校を卒業後、プリント加工の会社で10年学び、2013年に株式会社グッドスミスを創業。現在に至る。