※本ページ内の情報は2026年4月時点のものです。

コールセンターやインサイドセールス向けのクラウド型システムを軸に、企業の営業活動を支える株式会社Scene Live。同社は設立以来、徹底した現場目線での開発を続け、現在では国内トップクラスの導入シェアを誇る。そんな同社を率いる代表取締役社長の磯村亮典氏は、高校時代は音楽の道を志していた。なぜ、音楽を愛する若者が21歳で起業し、IT企業を急成長させることができたのか。そこには、世の中の「不合理」に対する強烈な反発心と、ビジネスの本質を見極める独自の信念があった。

音楽で生きる道から一転し、21歳で起業へ 「不合理」への怒りが原動力

ーーまずは、キャリアのスタートについてお聞かせください。

磯村亮典:
私は高校の時から音楽の専門学校に通っており、当時は「音楽でどうやってご飯を食べていこうか」とずっと考えていました。普通の高校生が大学進学を目指す時期に、私はどうやってお金を稼ぐかという就職活動に近い思考を持っていたのです。音楽だけでは生活できないため、バンド活動と並行して通信系ベンチャー企業でアルバイトを始めました。そこで音楽活動を通じて培った「多様な人々と信頼関係を築く力」を営業の現場で活かすうちに、単にお金を稼ぐ作業ではない、戦略的な「商売の面白さ」に触れ、一気に世界が広がったのです。その後、19、20歳の頃には正社員となり、梅田支店の立ち上げなどにも携わりました。

ーーそこから21歳という若さで独立を決意されたのはなぜでしょうか。

磯村亮典:
私の根源には、「なぜこうなっていないのか」という、世の中の合理性に欠ける部分に対する強烈な怒りや反発心がありました。結果だけ見ればもっと良いやり方があるのに、なぜ変わらないのか。これを丸呑みにしてサラリーマンを続けるのは自分の性格上向いていないと感じました。

また、中間管理職として上からの強烈な指示と、下で必死に頑張る社員の板挟みになるジレンマも味わいました。そこで、世の中に認められるサービスをつくり、売る人たちにとっても売りやすいものをつくろうと決意し、21歳で独立して起業したのです。

現場の課題解決から生まれた「lisnavi」と飛躍の第二創業期

ーー現在の主力サービスについて教えてください。

磯村亮典:
メインとなるのは「lisnavi(リスナビ)」というCTIツールで、営業担当者のファーストコンタクトである電話業務を効率化・データ化するサービスです。起業した当時、業界では全通話録音の義務化などが進む一方で、数百万円かかるオンプレミス型(※1)のシステムが主流でした。そこに私たちが初期費用無料で安価なクラウド型システムを出したことで、一気に広まりました。

現在では、「lisnavi」のみで2,700社、インバウンドコールシステム「OSORA(オソラ)」などを含めた全体累計では3,400社(2026年2月時点)に導入いただいています。

(※1)オンプレミス型:企業がサーバーやネットワーク機器、ソフトウェアなどのITインフラを自社内の施設に設置・保有し、自社で構築・運用管理するシステム利用形態。

ーー事業が大きく飛躍した転換点はどこだったのでしょうか。

磯村亮典:
2018年4月に、当時総代理店であった株式会社クロスワンと合併したことが、まさに「第二創業期」と呼ぶべき大きな転換点となりました。彼らは他社の商品を売ることに疲れており、絶対に信頼できる自社商品を持ちたいと考えていました。そこで、開発を担うエンジニアと、販売を担うセールスが同じ会社になりタッグを組んだことで、現場のフィードバックを受けながら開発するスピードが劇的に上がり、売上高も大きく伸びていったのです。

価値を循環させる組織づくりと新たな挑戦「bq-Recruit」

ーー社内の文化や社員の皆様に伝えていることはありますか。

磯村亮典:
私はよく「価値の循環」という話をします。価値というのはお金だけではありません。お客様からの感謝や、失注してしまった際の「こんな機能が欲しい」という要望のヒアリングも、すべてが価値です。その価値を社内に伝達し、エンジニアが開発して提供できれば、最終的にお金という価値になって還元されます。ですので、社員一人ひとりが、「自分が誰のどんな気持ちに対して価値を提供できているのか」を俯瞰して捉えることを大切にしています。

また、社内の人材育成として、「ピープルマネジメント制度」を導入しています。これは、事業のマネージャー(部長)とは別に、「PeM(ピーマネ)」と呼ばれる担当者が社員のキャリア支援を行う仕組みです。「PeM」が社員の成長にしっかりと伴走することで、チームの結束力と心理的安全性を高め、働きやすい環境を醸成しています。

ーー新たなサービスの開発も進んでいらっしゃるんでしょうか。

磯村亮典:
2026年4月に「bq-Recruit」という新サービスをリリース予定です。これは、面接やコミュニケーションをアシストするツールです。面接の最中に、リアルタイムで「この話題はもっと深掘りした方がいい」「この人はお金よりも働きがいを求めている」といった分析をAIライブアシストが行います。単なる事後の議事録や文字起こしではなく、面接というその瞬間の質を劇的に向上させ、企業と求職者の本質的なマッチングを実現したいと考えています。

ーー最後に今後のビジョンをお話いただけますか。

磯村亮典:
弊社のミッションは「“New Standard” (新しい基準)を創出し、社会の不合理をなくす。」です。コミュニケーションという領域において、これまでは担当者の所感や曖昧な基準で判断されていたものを、しっかりとデータに基づいた新しい基準へと変えていきます。私たちが独占して支配するのではなく、私たちがつくった正しい基準にみんなが共感して乗っかってくれるような、世の中の良いスパイラルを生み出していきたいと考えています。

編集後記

「なぜこうしないのか」という素朴な疑問と怒り。それが、磯村氏の経営の原動力だ。21歳での起業から数々の壁を乗り越え、現在は高度な音声解析を用いた新領域へと足を踏み入れている。自社で開発から販売までを一貫して行う強固な組織力と、社員の心理的安全性を担保する「ピープルマネジメント制度」の存在は、同社が掲げる「新しい基準」づくりを力強く裏付けるものだろう。社会の不合理に挑み続ける同社の挑戦は、これからも続く。その先に広がる未来に注目していきたい。

磯村亮典/1987年、兵庫県宝塚市生まれ。音楽系の専門学校へ進学後、2008年に通信系ベンチャー企業へアルバイトとして入社。テレマーケティング部門のマネジャーを経て、2010年に営業組織としてScene Liveを創業。翌2011年にはIT事業へと転換し、株式会社Scene Liveを設立。代表取締役社長に就任。