
電子商取引市場の拡大に伴い、社会インフラとして重要性が増す物流業界。一方で、人手不足や古い業務慣習などの課題も山積している。ITの知見とグループ連携を駆使し、この領域で新たな形を模索するのが株式会社ロジテックだ。同社を率いるのは、精密機器に命を吹き込む「組み込みエンジニア」としてキャリアを積んだ縄田崇氏。ハードウェアを動かす論理的な思考回路と、キャムコムグループの社風の中で磨いた柔軟な対応力を武器に、現在はグループ3社の代表を兼務している。キャリアの変遷と業界にかける思い、独自の組織論まで話を詳しく聞いた。
職人気質の開発現場から変化の激しい営業組織への転身
ーーこれまでのキャリアについて教えてください。
縄田崇:
私は長野県の製造メーカーで約7年間、組み込みエンジニアとして働いていました。組み込みエンジニアとは、家電や産業機器などのハードウェアを制御するための専用プログラムを開発する仕事です。当時は大手電機メーカーや重工業系の案件が中心で、人工衛星の試験装置や、海流を計測する観測機器など、公共性の高い特殊な装置開発に携わっていました。
大学の研究機関と共同で、電波照射によって表層海流を測る実験を行うため、五島列島などの離島へ出張した経験もあります。仕様書に基づき、寸分の狂いもない正確な成果物を作り上げる。現場へ足を運び、地道な検証を繰り返しながら完成度を高めていく、静かで職人気質な世界でした。
ーー貴社へ入社した経緯と、入社時の心境についてお聞かせください。
縄田崇:
前職のメーカーで7年目を迎えた頃、ご縁があってお誘いをいただき、現在のグループへ入社しました。それまでとは全く畑違いの環境で、最初は強烈なカルチャーショックを受けました。前職の製造業は、あらかじめ決まった仕様に基づいて正確にモノをつくる仕事でしたが、弊社は営業色が極めて強い組織です。現場の勢いがすごく、入社当初はそのスピード感に圧倒され、戸惑うことも少なくありませんでした。
しかし、社内の人事システム導入などを通じて各部門と関わるうちに、考え方が変わっていきました。営業拠点と開発現場が近く、お客様や営業担当者の声がダイレクトに届く環境では、日々めまぐるしく状況が変化します。トラブルも含めて「変化し続ける日常」を面白いと感じるようになり、決まったものをつくるだけでなく、自ら提案して価値を提供していく面白さに気づいたのです。この、変化そのものを楽しむ姿勢が、現在の経営判断における基盤となっています。
アナログな物流現場をアップデートする「IT×物流」の構想

ーーグループ3社の代表を兼務することになった経緯をお聞かせください。
縄田崇:
まず2023年5月に、技術系企業である株式会社キャムテックの代表に就任しました。続いて、スキマバイトアプリを展開する株式会社デイワークスの代表を引き継ぎ、昨年末に株式会社ロジテックの代表を兼任することになりました。
ロジテックの代表就任については、グループ代表から突然電話で「やってみないか」と打診されたのがきっかけでした。当時は驚きましたが、物流領域にこそITの知見が不可欠だと判断されたのだと思います。物流業界には、アナログな慣習が色濃く残っており、デジタルの力で効率化できる余地が非常に大きい領域です。グループ代表は、私がエンジニア出身だからこそ、システムやアプリといった技術的側面から、物流というインフラを刷新できると考えたのでしょう。
ーー物流業界が抱える課題に対し、現在はどのような展望を描かれているのでしょうか。
縄田崇:
物流業界に対して「きつい」「大変」といったイメージを持つ方は多いかもしれません。しかし、私が代表に就任してから実際に倉庫へ足を運ぶと、そこには意外なほど活気がありました。重い荷物を運ぶことを「筋トレみたいで楽しい」とポジティブに捉えて楽しむ若手社員たちの姿を見て、現場を知ることの大切さを痛感したのです。そうした現場の熱量を大切にしながら、アナログ中心の業界をテクノロジーで変えていく。若い世代が「ここで働きたい」と魅力を感じられる環境をつくることが、私の役割だと考えています。
その第一歩として、直近では配送状況を可視化するアプリをリリースしました。これまで紙の帳票などアナログな手法に頼っていた配送経路の管理をデジタル化することで、荷主様へ正確な情報を届けられるだけでなく、現場スタッフの事務作業や管理の手間を大幅に削減できます。
物流は「倉庫」「配送」そして「人」が揃って初めて機能するインフラです。グループが持つ人材サービスや技術、事業をかけ合わせ、ワンストップで課題を解決できる仕組みを提供することで、社会課題の解決に寄与したいと考えています。
スキルよりも「人間力」AI時代に求められる価値
ーー組織づくりにおいて、大切にしていることは何ですか。
縄田崇:
「人としての土台」をつくることです。これはグループ全体に根付く文化ですが、私たちは職能上のスキル以上に「人格」や「人間力」を重視しています。たとえば、毎朝の清掃や、オフィスに飾る生花への水やり。一見、業務と無関係に映るかもしれませんが、こうした「誰かがやらなければならないこと」に気づき、自発的に動ける感性を養うことが肝要です。来訪者が明るくなるように花を生けることや、次に来る人が使いやすいよう整える配慮は、そのままお客様へのサービス精神に通じると考えています。
ーーなぜ「人間力」を重視されているのでしょうか。
縄田崇:
技術や知識といったスキルは、どの会社でも習得可能です。しかし、人としての魅力や働く姿勢は、一朝一夕には身につきません。
私は常々、「たとえ明日、会社という箱がなくなってしまったとしても、周囲から『あなたと一緒に働きたい』と慕われるような人になってほしい」と社員に伝えています。AIが進化し、多くの仕事が自動化されていくこれからの時代。最後に残る価値は、マニュアル化できない「人間臭い魅力」や「気遣い」だと確信しているからです。
ーー最後に、今後の展望をお聞かせください。
縄田崇:
ロジテックに関しては、私が指示を出さずとも、社員一人ひとりが自律的に判断し、現場が自走する組織にしていきたいですね。だからこそ社員には、上司の顔色をうかがって仕事をするのではなく、常にお客様や仲間のために何ができるかを考え、行動できる人になってほしいと願っています。そうして育った「人としての土台」こそが、どんな環境の変化にも負けない、真の強みになると考えています。
物流業界は社会に不可欠なインフラであり、まだまだ改善できる余地がたくさんあります。スピード感を持って新しい技術を取り入れ続けるのはもちろんですが、その中心にあるのはやはり「人」です。
弊社で「人として生きる力」を蓄えた若手たちが、5年後、10年後に業界を支えるリーダーへと育っていく。たとえ将来的に別の道へ進んだとしても、どこでも通用するような魅力ある人材を一人でも多く輩出できる、そんな組織であり続けたいですね。
編集後記
「変化が激しいからこそ面白い」と語る穏やかな表情の奥に、技術者としての緻密さと経営者としての熱情が共存している縄田氏。特に「スキルよりも人格」という言葉からは、人材輩出企業としての強い信念が窺える。AIが進化する今だからこそ、あえて「人間力」を重視する同氏の経営スタイルは、無機質になりがちな物流改革の現場に温かな血を通わせ、新たな未来を切り拓いていくに違いない。

縄田崇/1979年2月19日生まれ。滋賀県出身。2001年信州大学工学部情報工学科卒業。同年長野市内のエレクトロニクス企業に就職しエンジニアとして勤務。2008年に綜合キャリアグループ(現・キャムコムグループ)に入社。グループ内のエンジニアとして、人事給与基幹システム開発に携わった後に、求人メディアの開発やマーケティング事業の立ち上げに携わる。現在は、グループ内のテクノロジー系企業3社の代表を務めている。