※本ページ内の情報は2026年4月時点のものです。

医療法人水の森美容外科は、目先の利益を追わず、誠実な医療を提供することで患者からの厚い信頼を獲得してきた。コンプレックスビジネスとも言われる美容外科業界において、「損して得取れ」の精神で無料モニター制度などを積極的に導入し、若手医師の育成と患者の安心を両立させている。バブル崩壊による実家の倒産、父の死という困難を乗り越え、自らの手で道を切り拓いてきた総院長の竹江渉氏に、これまでの歩みと揺るぎない経営信念についてうかがった。

敷かれたレールからの脱却と「闇の10年」

ーーまずは、医療の分野に進まれた経緯を教えてください。

竹江渉:
私の父は開業医で、祖父は北海道で財閥のように大きな企業を経営していました。そのため若い頃は敷かれたレールの上を歩いており、自分も自然と医師になるものだと思っていました。しかし医学部に入る前の年に父が他界し、同時期にバブル崩壊で祖父の会社も倒産してしまったのです。医学部進学を目前にして苦学生活を強いられることになりました。

これまで準備されているレールを歩いてきた私でしたが、「これからは自分で決めて自分の力で道を切り拓くしかないんだ」と決意した瞬間でした。それでもなかなか進むべき道が決めきれず、美容外科の道に目覚めるまでは暗闇の中を彷徨うような「闇の10年」を過ごしました。

ーーそこからどのようにして美容外科の道を選ばれたのでしょうか。

竹江渉:
「再起するには」という考えで、何科に進むべきか悩みました。当時は一度入った科から転職するのはタブーとされていた時代でしたが、麻酔科だけは2年経って標榜医の資格をとった後に他科へ移ることが唯一認められていました。そこでまずは麻酔科を選んだのです。その後、2年経って免許が取得できるギリギリのタイミングで美容外科という選択肢に出会いました。

通常の医療がマイナスをゼロに戻すものだとすれば、美容医療はプラスにしていく世界であり私にとってまさに光明でした。「好きこそ物の上手なれ」と言いますが、この仕事に私はどんどん引き込まれていきました。同時に、自分がそう思うからこそマイナスをゼロにする通常医療に携わる医師たちへのありがたみを強く感じます。全員が自分と同じ考えだったら医療は成り立ちませんからね。

開業の苦労を越えワンマンから組織的なマネジメントへ変化

ーーご自身でクリニックを開業されるにあたって苦労されたことはありましたか。

竹江渉:
資金調達には苦労しました。もともと開業は考えていたので、開業資金はいくら必要か常に計算していました。しかし自分の力で貯めるには開業が45歳になってしまいます。金融機関に相談に行っても、保証人がいないため門前払いされる日々でした。

そんな折、当時勤めていたクリニックの経営者が保証人になると言ってくださったのです。結果的にその申し出はお断りしたのですが、その方が商工中金を紹介してくださり無事に審査を通過できたのです。そこから他の金融機関も融資してくれ、開業を成功させることができました。

ーー経営スタイルについてこれまでに変化はありましたか。

竹江渉:
経営とは、課題が道を塞ぎそれを乗り越えて変化して進んでいくことの繰り返しです。その課題が道しるべになります。「大変」という字は「大きく変わる」と書くように、痛みを伴う脱皮が必要です。昔は規模が小さかったこともあり、自身の強い発信力で周囲を牽引する「俺についてこい」というワンマン経営でした。しかし規模が大きくなるにつれて人がついてこない時期がありました。そこから相手を諭したり意見を求める傾聴型のマネジメントへ、そして組織的な役割ごとに権限や実務を任せるスタイルへと変化していったのです。

誠実な美容医療へのこだわりと「損して得取れ」

ーー貴院の事業における強みや大切にされているコンセプトを教えてください。

竹江渉:
美容整形はコンプレックスビジネスですから、つけこめることはたくさんあります。しかし私は亡き父に恥じないよう、絶対に誠実な医療を提供すると決めています。アップセルを行わず、難しいことははっきりとお断りする。患者さんに安心を届けられる医療を提供することで、20年間かけて「水の森なら安心」という信頼を構築してきました。

また「損して得取れ」の考え方で、目先の利益に飛びつかないことも大切にしています。たとえば当院には若手医師の育成を目的とした無料モニター制度があります。どんなプロでも初めての手術は存在しますが、それをこそっとやるのではなくしっかりやる。この制度により患者さんは高額な美容医療を無料で受けられ、当院としては目先の利益は減りますが確実に良い医師が育ちます。

ーー「水の森」というお名前にはどのような由来がありますか。

竹江渉:
水のように、森のように、澄んだ心で接し合える空間でありたいという思いを込めています。患者様も働くスタッフも、誠実な心を持って接し合えるクリニックにしたいのです。ですので採用においてもこのコンセプトに共感し、真っ当な医療を一緒にやってくれるお医者さんに来てほしいと思っています。

ーー最後に、今後の展望をお話いただけますか。

竹江渉:
大きく発展させることよりも、誠実なクリニックを地道につくり、コツコツと積み上げていく。そのスタンスを守り続け、ブランドイメージを確固たるものにしていきたいと考えています。

編集後記

美容外科という利益を追求しやすい業界において、竹江氏が貫く「誠実さ」は際立っている。父の死や実家の倒産という壮絶な原体験を持ちながらも、それを糧に「闇の10年」を抜け出し、自らの力で道を切り拓いた強さが、確固たる経営信念を生んでいるのだろう。目先の利益に惑わされず、患者と真っ直ぐに向き合う「水の森ブランド」は、これからもコツコツと確かな信頼を積み上げていくはずだ。

竹江渉/1972年北海道生まれ。1998年に東京医科大学医学部を卒業後、翌年に麻酔科へ入局。その後は大塚美容外科、他院大手美容外科での院長を経て、2006年に水の森美容クリニック 名古屋院を開院。それを皮切りに大阪・銀座・福岡などの主要都市に拠点を広げ、現在は全国に8院を展開している。