※本ページ内の情報は2026年3月時点のものです。

千葉県を中心に認可保育所と児童発達支援施設を185拠点を展開する、AIAIグループ株式会社。同社は、単に子どもを預かる“保育”に留まらず、小学校就学を見据えた独自の幼児教育プログラムや、発達障害児への療育を導入し、業界内で独自のポジションを確立している。19歳で起業を志し、数々の困難を乗り越え2019年に東京証券取引所マザーズ(現グロース)上場を果たした代表取締役社長兼CEOの貞松成氏に、その原動力となった思いや事業のターニングポイント、そして“日本式の幼児教育を世界へ輸出する”という壮大なビジョンについて話をうかがった。

渡邉美樹氏との出会いが原点 起業を志した青年時代

ーー社会人としてのキャリアはどのようにスタートされましたか。

貞松成:
19歳くらいのころから、坂本龍馬などの歴史上の人物の生き方に触発され、「起業して何かを成し遂げたい」と考えていました。当初は具体的な事業内容は定まっていませんでしたが、当時大きく取り上げられていた「少子高齢化」という社会課題に関心を持ちました。環境事業なども検討しましたが、待機児童や介護の問題は、一人をお預かりすることで目の前の人が直接助かるという“社会貢献の実感”が湧きやすい。その点に強く意義を感じ、保育の道に進むことを決意しました。

ーーそこから、実際に起業されるまでにはどのような経緯があったのでしょうか。

貞松成:
起業する前に、まずは組織運営に必要な経理やマネジメントを学ぶべきだと考えました。そこで、若いうちから管理職として経験を積める環境を求め、ワタミ株式会社へ入社しました。保育と関係のない業種ではありましたが、創業者の渡邉美樹氏との出会いで衝撃を受け、ここで学びたいと考えました。彼は私の想像を超える壮大なビジョンを語り、人を惹きつける圧倒的な熱量を持っている。そのリーダーシップに直接触れられたことは、私にとって非常に大きな経験となりました。その経験を糧に、25歳で独立を決意。2007年、かねてからの志であった保育事業で起業を果たしました。

外部資本導入で急成長。苦難の7年から上場までの軌跡

ーー創業当初は、どのような状況だったのでしょうか。

貞松成:
2007年に1園目を開設し、当初は私自身が園長をしながら、夜は事務作業をして朝の2時まで働き、事務所のソファで寝るような生活でした。その後、介護事業も始めましたがなかなか軌道に乗らず、いつ会社がなくなってもおかしくない状況が7年ほど続きました。そんな自転車操業の末に、「本来この会社で何を成し遂げたかったのか」を自問自答し、もう一度ゼロから事業計画を立て直すことにしたのです。

ーーそこからどのようにして現在の成長へとつながっていったのですか。

貞松成:
計画を立て直したことで、掲げた目標を達成するには資金が圧倒的に足りないことが明確になりました。そこで2014年、初めて外部資本を導入したことが最大のターニングポイントとなりました。資金を得てからは拡大のスピードが一気に加速し、それまでは7年間かけても数園しか展開できませんでしたが、2014年からの5年間で約80園を開設しました。そして資金調達から5年後の2019年には、東証マザーズ(現・グロース市場)への上場を果たすことができました。

「保育」に「教育」と「療育」を 独自の価値で業界をリード

ーー貴社の事業内容と、その強みについて教えてください。

貞松成:
私たちの事業の柱は、認可保育所と児童発達支援です。特に千葉県内では、県の子どもの約2%が弊社の卒園児という高いシェアを占めています。保育園事業と児童発達支援事業をこの規模で両立している企業は、業界でも数少ないと思います。一般的な保育サービスに、「療育」や「教育」という付加価値を加え、それを標準化してグループ内のどの園でも再現可能にしている点が、弊社ならではの強みです。

ーー「教育」という付加価値について、具体的にはどのようなプログラムが導入されているのでしょうか。

貞松成:
私たちの提供する幼児教育は、小学校入学後の学習にスムーズに適応するための“就学準備”を目的としています。AIAI NURSERYでは学習専用の部屋があり、年齢に合わせた時間割に沿って、週に2回、1回40分程度の幼児教育を提供するカリキュラムを提供しています。算数やひらがなの読み書き、英語などをプログラム化することで、専門講師ではなく、普段接している保育士が質の高い教育を提供できる仕組みを構築している点が大きな特徴です。

ーー幼児教育の導入によって、どのような効果がありましたか。

貞松成:
保護者の皆様からは極めて高い支持をいただいております。入園説明会のアンケート結果を見ましても、単なる「預かりの場」ではなく、「教育機能を備えた保育園」への潜在的な需要は非常に大きいと実感しています。実際、当社独自の幼児教育プログラムを受講した子どもたちは、年に1度おこなう模擬試験において、私立小学校の合格ラインに達するほどの学力を身につけています。就学前に「学ぶ楽しさ」や「基礎学力」を養うことが、お子様の将来の可能性を広げる確かな一歩になると確信しています。

目指すは国内300園、そして世界へ 日本式教育を輸出する未来

ーー今後の事業の展望について、どのようにお考えでしょうか。

貞松成:
まず国内ですが、保育業界は成熟期に入り、今後は統廃合が進んでいくと予想されます。その中で私たちは独自の付加価値を武器に成長を続け、まずは国内300園の展開を目指します。この規模があれば、業界を代表して政策提言を行えるだけの影響力を持つことができると考えています。また、視野は海外にも向いています。私は日本の保育の質は世界最高水準だと確信しています。教育先進国といわれる国々も視察しましたが、質と規模をこれほど高いレベルで両立している国は他にありません。この誇るべき「日本式の幼児教育」を、今後はASEANやインドなどを中心に輸出していきたいと考えています。

ーーそうした事業活動を通じて、どのような社会を実現したいですか。

貞松成:
究極の目標は、「少子化」という大きな社会課題の解決に貢献することです。そのためには、多くの人が「子どもを産みたい」「子育ては楽しい」と心から思える社会環境をつくらなければなりません。私たちが質の高い保育と教育を提供することで、保護者の負担を軽減し、仕事と子育てを両立できる環境を整える。それが結果として、日本の未来を明るくする一助になればと考えています。

挑戦が成長を促す 次世代へ託すメッセージ

ーー組織の活性化や人材の定着に向けて、最も重視されていることは何でしょうか。

貞松成:
最も重要なのは、事業の生産性を高め、その成果を給与として社員に還元することです。保育業界は待遇が良いとはいえない状況ですが、私たちは療育や教育といった付加価値によって高い収益性を実現し、それを原資に業界でも高い水準の給与を支払うことを目指しています。それが社員の働きがいや定着につながると考えています。

ーー最後に、これから社会に出る若い世代へメッセージをお願いします。

貞松成:
私自身の経験を振り返ると、新卒で入社した会社で、23歳にして売上高1億8000万円規模の店舗運営を任されたことが大きな原点になっています。当時は実力以上の仕事内容でしたが、その「挑戦」こそが飛躍的な成長をもたらしてくれました。これからの若い方々にも、失敗を恐れずに早くから挑戦し、結果を出すプロセスを経験してほしいと願っています。当社としても、入社3年目で事業責任者を任せられるような、圧倒的な成長の機会を提供し続ける企業でありたいと考えています。

編集後記

青年期から起業を志し、社会の大きなうねりである「少子高齢化」に事業機会を見出した貞松氏。その道のりは決して平坦ではなかった。7年間の苦闘の末に掴んだ飛躍のきっかけ、そして“保育”に“教育”という新たな価値を掛け合わせることで築いた独自の強み。その言葉の端々からは、社会課題を解決するという強い意志と、未来を見据える冷静な戦略家の視点がうかがえる。国内300園、そして日本式教育の世界展開へ。AIAIグループの挑戦は、日本の未来を担う子どもたちの可能性を大きく広げる挑戦である。

貞松成/AIAIグループ株式会社代表取締役社長兼CEO。博士(教育学)。学生時代より少子高齢化問題に関心を持ち、2007年に株式会社global bridge(現AIAI Child Care株式会社)を設立。千葉県にて保育事業を創業する。2017年のTOKYO PRO Market上場を経て、2019年に東証マザーズ(現グロース市場)への上場変更を果たす。現在は東京・千葉・大阪を中心に、認可保育所「AIAI NURSERY」や児童発達支援事業所「AIAI PLUS」など、合わせて185拠点を展開する。