※本ページ内の情報は2026年4月時点のものです。

「プラージュ」の屋号で全国に理美容室を展開し、創業65年の歴史を持つ阪南理美容株式会社。全国に直営店舗網を広げ、業界トップクラスのシェアを誇る同社は、リーズナブルな価格設定ながら高い技術力で多くの顧客から支持を集めている。長きにわたり業界を牽引してきた同社だが、近年は旧来のイメージを刷新すべく、大規模なリブランディングを実行し、新たな挑戦を続けている。その変革を牽引するのが、2022年に2代目として代表取締役社長に就任した濱屋雄大氏だ。

「継承と変革」をリブランディングのテーマに掲げた同社は、店舗オペレーションという強固な土台は守りつつ、社員のマインドセットや企業文化の改革に果敢に挑んでいる。その根底にあるのは、社員一人ひとりの成長と幸福を願う「人への投資」を第一とする経営姿勢だ。新生プラージュが目指す未来と、業界の常識に挑む若きリーダーの情熱に迫った。

「たかが1500円」の重みを知った現場での3年間

ーー社会人としてのキャリアはどのようにスタートされたのでしょうか。

濱屋雄大:
大学卒業後、家業である弊社に入社しました。最初の3年間は現場で働き、その後は本社の管理部門も経験するなど、会社の全体像を把握することに努めました。

正直なところ、入社する前は「理容室は少し古風で入りにくい」といったイメージを抱いており、家業でありながら事業の内容を深く理解していませんでした。理容室といえば「みんな刈り上げにされる」「丸坊主のようなスタイルばかりではないか」といった、勝手な偏見さえ持っていたほどです。

しかし、実際に現場に立ってみると、その認識は完全に覆されました。お子様からご年配の方まで多様なお客様が来店され、流行のスタイルから定番のカットまで、思い思いのヘアスタイルを楽しんできれいになって帰られます。その光景を目の当たりにし、自分が抱いていたイメージがいかに狭いものであったかを痛感しました。

同時に、当時のカット料金であった1500円という金額の重みにも気づかされました。「たかが1500円」と思われるかもしれませんが、その積み重ねがこれほど大きな売上高をつくり、全国規模の事業を支えています。「お一人おひとりのお客様にご満足いただき、その対価としていただく料金の積み上げで会社が成り立っている」という事実に、改めて深く感銘を受けました。父と本格的に仕事の話をするようになったのは、現場の厳しさと面白さを肌で感じた3年間があったからこそです。

ーー管理部門に移られてからは、どのような視点で会社を見ていましたか。

濱屋雄大:
現場の苦労やリアルな空気感を経験したからこそ、本社から会社全体を俯瞰したときに、もっと良くできる部分が数多くあることに気づきました。現場のスタッフと話していると、「ここをこうすればもっと働きやすいのに」「会社からは見えにくいけれど、店舗ではこういう問題が起きている」といった率直な意見を聞くことができます。そうした声に耳を傾ける中で、改善すべき点が多く見えてきました。

たとえば、以前は大晦日も夕方まで通常通り営業していましたが、実際には帰省シーズンということもあり、午後はそれほどお客様が多くありません。それならば、少しでも早く店を閉めて、スタッフが年末年始を家族とゆっくり過ごせるようにしたほうが良いのではないか。そう考え、31日は午前中だけの営業に変更しました。これは働きやすさを重視したいという、現場の声から生まれた改善の一つです。

新生プラージュの幕開け 大規模リブランディングの真意

ーー2022年に社長へ就任された際は、どのような思いがありましたか。

濱屋雄大:
現場における技術やオペレーションは、すでに創業からの積み重ねによって確固たる土台が築かれており、私が改めて手を加える必要はないと感じていました。しかし、変化する時代の中で選ばれ続ける企業であるためには、イメージ刷新が不可欠であるという強い思いがありました。

そこで私は、現場のやり方を変えるのではなく、対外的な見せ方や組織としての共通認識といった「ブランドの在り方」そのものを再定義=リブランディングすることにしたのです。

ーーリブランディングでは、どのような変化を促そうと考えましたか。

濱屋雄大:
大きく分けて、社外へ向けたイメージの刷新と、社内向けの意識改革という2つの変化を目指しました。

まず社外についてですが、弊社の店舗はグループのスケールメリットを活かすことで、リーズナブルな価格ながらも、確かな技術と厳選した薬剤による充実したサービス内容でお客様をお迎えしています。しかし、これまでの外観やイメージではその価値が十分に伝わらず、「安かろう悪かろう」という誤った印象を与えてしまっていました。そこで、リブランディングを通じて私たちの本当の価値を正しく伝え、お客様へのアピールはもちろん、採用面でも若い世代に魅力を感じてもらえる存在へ変わろうと考えたのです。

同時に、社内に向けては全社員が共有できる軸をつくることを目指しました。以前は会社の方針が十分に浸透していない課題があったため、社員が現場で自然と実践してきた素晴らしい行動や考え方を言語化し、ミッション・ビジョン・バリューやクレドとして明文化しました。これにより、社員一人ひとりが「日本一の理美容室で働いている」という誇りと自覚を持って仕事に取り組めるよう、意識の変革も促しています。

他サロンの経験者が驚く圧倒的な技術力と実践機会

ーー貴社の最大の強みをお聞かせください。

濱屋雄大:
最大の強みは、スタッフ一人ひとりの技術力の高さです。これは、他のサロンから移ってきたスタッフが皆、口をそろえて驚く点でもあります。現在、全国で600を超える店舗を展開していますが、これだけの店舗数を直営で運営し、多くのお客様にご満足いただくには、相当な技術力がなければ不可能です。

また、グループ内に関連会社を持ち、店舗で使用する薬剤や備品の製造・流通を自社で行っている点も決定的な強みです。これにより中間コストを大幅にカットできるため、価格は抑えつつも、品質の高いサービスの提供が可能になります。この「価格と品質の両立」こそが、多くのお客様に選ばれ続けている理由だと自負しています。

ーー高い技術力を維持するために、どのような体制を整えていますか。

濱屋雄大:
教育面でのサポート体制強化と、現場での豊富な実践機会の提供という両輪で取り組みを進めています。まず教育については、専門のマネージャーを配置し、研修動画の配信や主要都市での対面講習、大阪のトレーニングセンターでの専門的な技術講習などを実施しています。

それに加えて、習得した技術を活かすアウトプットの場が圧倒的に多いことも重要です。どれだけ練習を重ねても、実際のお客様は一人ひとり髪質も要望も異なります。日々多くのお客様にご来店いただいているからこそ、スタッフは学んだ技術をすぐに実践で試して経験値に変えることができ、それが高い技術力の維持・向上に直結しているのです。

現場の声を形にする全社員との対話を通じた意識変革

ーー経営者として、特に大切にされていることは何ですか。

濱屋雄大:
最終的な意思決定をするのは私の役目ですが、そのプロセスではみんなの声を聞くことを何よりも大切にしています。私一人の頭で考えるよりも、多くの社員の知恵を結集した方が、より良いアイデアが生まれると確信しているからです。そのため、できる限り現場に足を運び、直接コミュニケーションを取ることを心がけています。

具体的には、全国の店長たちにエリアごとに集まってもらい、食事をしながら会社の方向性や新しい施策の意図を直接私の言葉で説明する機会を設けています。また、本社でも事務スタッフとランチをしながら最近の様子を聞くなど、立場に関わらず対話をするようにしています。自分の言葉で伝えることが最も深く理解してもらえる方法であり、社員が考えていることを直接聞ける貴重な機会です。この対話の中から、新たな施策のヒントが生まれることも少なくありません。

ーー社員の働きがい向上のために、他にどのような取り組みをされていますか。

濱屋雄大:
これまで不明瞭だった評価制度を刷新し、何をどう頑張れば評価され、給与や役職に反映されるのかを明確化しました。目標がクリアになったことで、社員一人ひとりがモチベーション高く業務に取り組めるようになったと感じています。

また、弊社では個人のノルマがありません。理美容業界では個人のノルマが課されることも多いですが、それよりも店舗全体の成果を重視します。全員で協力して多くのお客様をお迎えし、その成果を歩合として全員に還元する仕組みです。だからこそ、シャンプー、カラー、カットといった分業制がスムーズに機能し、チームワークで効率よくお客様に対応できます。「仲間で頑張る」という文化が根付いているため、ギスギスした競争がなく、定着率の高さにもつながっています。

実は弊社には、親子や親戚で働いてくれているスタッフが非常に多く、中には親子三代にわたって勤務してくれている方々もいます。自分の子どもに紹介できる会社であるということは、労働環境や待遇、そして会社の将来性を信頼してくれている証だと自負しており、私たちにとって大きな誇りです。

ーー直近で新たに注力していることはありますか。

濱屋雄大:
1年半ほど前から、訪問理美容サービスを開始しました。これは高齢や病気などの理由で美容室に来られない方々のために、施設へ訪問してカットなどを行うサービスです。もともと弊社の店舗をご利用していたお客様から、「施設に入ってからは行けなかったけれど、またプラージュで切ってもらえて本当にうれしい」というお言葉をいただいた時は、胸が熱くなりました。

また、社員の中からも「自分も福祉や社会貢献に関わる仕事がしたかった」という声が多く上がり、彼らの新たなやりがいにもつながっています。単にリーズナブルで質の良いものを提供するだけでなく、こうした活動を通じて地域社会に貢献したいと考えています。理美容師という職業の価値をさらに高め、誰もが当たり前に「良い仕事だね」と言ってもらえるような業界の未来を、弊社が率先してつくっていきたいと願っています。

理美容師という職業を誰もが憧れる存在へ変える挑戦

ーー今後、会社をどのような姿にしていきたいとお考えですか。

濱屋雄大:
理美容は、どこまでいっても「人」が主役の仕事です。ですから、これからも人材への投資は惜しみなく続けていきます。その一環として、2026年4月に理容師養成施設を開校し、人材の育成から現場での活躍まで、一貫してサポートできる体制を整えていきたいと考えています。私たちの取り組みを通じて理美容業界全体の地位を高め、理美容師がより魅力的な職業だと認識されるよう貢献していきます。

ーー最後に、これから貴社で働くことを考えている方々へメッセージをお願いします。

濱屋雄大:
弊社は今、大きな変革の時期を迎えています。「プラージュ」に対して昔ながらのイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、今の私たちは良い伝統を守りつつ、常に新しいことへの挑戦を続けています。テレビCMの放映やSNSでの発信、大学のイベントへの参加など、弊社の技術や魅力を知っていただくための活動に、積極的に取り組んでいるところです。

理美容業界でナンバーワンであるという誇りを胸に、これからもビジネスの枠を超えた社会貢献や人材育成にも全力で取り組んでいくつもりです。「理美容師という仕事は素晴らしい」と誰もが胸を張って言える未来を、共につくっていければうれしいですね。進化を続ける阪南理美容、そして「プラージュ」のこれからに、ぜひご注目ください。

編集後記

「日本一の理美容室で働いている誇りを持ってほしい」という濱屋氏の言葉は、社員への深い敬意が込められている。今回のリブランディングは、単なるイメージ戦略ではない。自社の価値を再認識することで、社員一人ひとりが自信を持って働ける環境を構築することこそが、真の目的といえる。実際に社長自らが全国の現場へ足を運び、直接声に耳を傾ける姿勢が、この方針を何より裏付けている。専門学校の設立計画に象徴される「人への投資」を最優先する戦略は、一企業の枠を超え、理美容業界全体の発展に大きく寄与することだろう。伝統を守りつつ革新を続ける同社の歩みから、今後も目が離せない。

濱屋雄大/1993年大阪府生まれ。2016年関西大学商学部卒業。同年に阪南理美容株式会社に入社し、店舗での施術や接客などの業務に従事。専務取締役就任後は、店舗開発やスタッフ教育などを行う。2022年5月より代表取締役社長に就任。