※本ページ内の情報は2026年5月時点のものです。

2001年に地元新潟の国内SIerでキャリアをスタートさせた鈴木淳一氏。システム開発の壁に直面する中、「世界標準の開発手法」への好奇心から2008年にアバナード株式会社へ入社した。少数精鋭による圧倒的な技術力と、世界規模の「知の共有」に衝撃を受け、やがて多国籍企業の経営へ興味を移し、2022年9月に代表取締役社長に就任。アクセンチュアとマイクロソフトのDNAを受け継ぐ同社が、AI時代に日本や世界へもたらす変革の軌跡と未来の展望をうかがった。

世界標準を知るための越境 圧倒的な技術力と「知の共有」への衝撃

ーーまずはご自身のファーストキャリアについてお聞かせいただけますか。

鈴木淳一:
私は新潟県出身で、2001年にそのまま地元の国内SIerに就職しました。インターネットが世の中に出始めたタイミングで、仕事の仕方や企業間の取引が変わっていくのを感じ、IT業界でやっていく道を選んだのです。プログラマーからスタートし、システムエンジニアとしてキャリアを積んでいきました。

ーー貴社へ転職されたのはどのような理由があったのですか。

鈴木淳一:
システム開発は思い通りにいかないことも多く、予算の超過や納期の遵守が難しいという課題に、常に直面していました。そこで、「日本国外や世界の人はどうやってシステムをつくっているのか」「何か違うやり方があるのではないか」といった、世界標準の開発手法や世界レベルのエンジニアの働き方に対する強い好奇心が抑えられなくなり、転職を決意しました。

ーー実際に入社されてどのような違いを感じましたか。

鈴木淳一:
一番驚いたのは、少数精鋭でありながらエンジニアが持つ圧倒的な技術力とスピードです。最初に関わった公共系の大きなプロジェクトでも、「こんな少人数でやれるのか」と驚かされました。

また、当時は日本法人が150名ほどの規模でしたが、世界を見渡せば数千人のメンバーがおり、彼らの間で「知の共有」が当たり前に行われていました。圧倒的な力を持つコンサルタントやエンジニアが知恵を共有するのですから、早く強いのは当然です。この環境でグローバルな視点と仕事の進め方を身につけられたことは、私にとって大きなターニングポイントになりました。

グローバル標準の探求から「経営」への視点の変化とアバナードの強み

ーー現場のエンジニアから経営トップへと歩まれていますが、元々経営者を目指していたのですか。

鈴木淳一:
2022年9月に代表取締役社長に就任しましたが、最初からその肩書きに憧れていたわけではありません。アバナードで経験を重ねる中で、「アバナードのような多国籍企業は、どのように意思決定し、人を育て、成果を出しているのか」というグローバル企業の経営の仕組みに興味がシフトしていったのです。日本法人をより強くし、日本の知見をグローバルに発信していく役割を自ら担いたいと考え、社長というポジションを意識するようになりました。

ーーお客様から選ばれる理由や競合他社との違いはどこにあるとお考えですか。

鈴木淳一:
弊社はアクセンチュアとマイクロソフトとの戦略的合弁企業として立ち上がりました。アクセンチュアが持つビジネスの「変革力」、マイクロソフトが持つ製品の「技術力」、そしてそれを形にする私たちの「実装力」を束ねて提供できるのが最大の強みです。AIを活用するにはデータや業務アプリケーション、セキュリティ、ガバナンスが不可欠ですが、これらを全て包括して提供できるのです。

また、全世界で共有されているナレッジや成功事例を、日本のお客様に対して高い品質とスピードを維持し、かつ再現性をもって提供できる環境が整っています。システムは上流や下流フェーズで区切るのではなく、導入後にお客様の現場でしっかりと成果が出るよう定着化するまで最後までやり抜く伴走力が、私たちの競争優位性だと考えています。

日本で磨いた「変革モデル」を世界へ ピープルファーストで挑む未来

ーーこれからの展望についてお聞かせいただけますか。

鈴木淳一:
単に売上高や規模の拡大を目指しているわけではありません。日本市場は品質に対する要求が非常に厳しく、業務も複雑です。労働人口の減少という課題を抱える製造業などへのAI実装に注力し、人とAIが協働するモデルを実現できれば、それは日本だけでなくアジアや全世界に向けて発信できる変革モデルになります。

また、今後は超大企業だけでなく、中堅・中小企業のお客様へもAIやデータ活用の成功パターンを広げていき、社会課題の解決に貢献していきたいと考えています。

ーー最後に、変革を推進する上で組織づくりにおいて大切にしていることは何ですか。

鈴木淳一:
「社員が幸せでなければ、お客様を幸せにすることはできない」というピープルファーストの信念を大切にしています。社員にとっての幸せとは「成長の実感」を得ることだと考えており、そうした環境を整えることが私の重要な役割です。そのため、私自身が「実践者」であることを重視し、AIを用いた経営判断のプロセスを自ら社員に公開しています。社長への率直な意見も歓迎する風通しの良い環境があり、正しい信念があれば、グローバルへ直接働きかけ、プロジェクトを推進することも可能です。

この環境を通じて、日本からグローバルで活躍するプロフェッショナルな人材を一人でも多く輩出していきたいと考えています。好奇心が強く、変化を面白がり、自分自身も会社も変えていきたいという思いを持つ方にとって、非常に面白みを感じていただける会社だと確信しています。

編集後記

地方のSIerで直面したシステム開発への課題感から始まり、世界標準を求めて外資系企業へ飛び込んだ鈴木氏のキャリアは、自身の知的好奇心と行動力に裏打ちされている。アバナードが持つグローバルな知見と技術力を背景にしながらも、根底にあるのは「お客様の現場で成果が定着するまで伴走する」という泥臭くも誠実な姿勢だ。日本特有の厳しい品質要求の中で磨き上げたAIの変革モデルを、世界へ輸出していく。その壮大なビジョンを実現するため、「ピープルファースト」を掲げ、社員の成長と幸せを第一に考え、グローバル人材の輩出を目指す同社の風通しのよい社風は、次世代のプロフェッショナルを惹きつける力強い磁力となっている。

鈴木淳一/大学卒業後、国内系SIを経て、2008年にアバナード株式会社に入社。日本におけるソリューション領域を統括し、事業戦略およびデリバリーを主導。通信・ハイテク、パブリックセクターを中心にIT企画、エンタープライズアーキテクチャ、プロジェクトマネジメントを経験。2022年9月に代表取締役社長に就任。