※本ページ内の情報は2025年1月時点のものです。

ホテルやフライトの予約、旅行保険の加入、入出国時の手続きなど、手間のかかる作業が多い海外旅行。そんな中、アプリ上ですべての手続きを行える旅行アプリ「NEWT(ニュート)」を運営するのが、株式会社令和トラベルだ。

2つの会社を立ち上げた経歴や、コロナ禍で海外事業の立ち上げに踏み切った理由、シンプルな操作にこだわったアプリ開発などについて、代表取締役CEOの篠塚孝哉氏にうかがった。

震災を機に起業し、高級宿泊施設に特化した予約サイトを開設

ーーまずは篠塚社長の経歴についてお聞かせください。

篠塚孝哉:
大学卒業後はリクルートに入社し、旅行事業部に配属されました。この会社を選んだのは、日常生活で同社のサービスに触れる機会が多く、興味を持ったからでした。入社してから初めて、同社に起業する方が多いことや、自由度の高い社風があることを知りましたね。

ーーそこから1社目を起業したきっかけは何だったのですか。

篠塚孝哉:
2011年に起きた東日本大震災です。日常が一瞬にして崩れ去る状況を目の当たりにし、ふと「これまで自分はチャレンジをしてこなかったな」という思いが湧いてきたのです。そこで地方の方と一緒に何かビジネスをしたいと思い立ち、株式会社Loco Partnersを立ち上げました。

当時はスタートアップへの投資環境が整っていなかったため、企業の立ち上げに関する情報も少なく大変でしたね。それから宿泊予約サービス「Relux」を立ち上げ、6,000万円の資金調達をしました。その後KDDIグループの傘下に入り、3年間同グループ会社の代表を務めました。

コロナ禍で決断した海外旅行事業への進出。アプリ開発でとことんこだわった使いやすさ

ーー令和トラベルの創業に至った経緯を教えてください。

篠塚孝哉:
任期満了を迎え、KDDIグループ会社の代表を退任後、次は何をしようかと考えていたタイミングが、ちょうどコロナ禍で、海外旅行が規制されていた時期でした。そうした中で旅行事業社が苦戦する状況を見て、これはチャンスだと思いましたね。

他社が足踏みしている間に資金調達して、準備に時間をかければ勝ち目があると思ったからです。また、他社は採用活動も控えていたため、人材を確保しやすいと考えました。こうして自分の持てる知見を活かして、海外旅行サービスの立ち上げを決意したのです。

ーー他社との差別化ポイントはどこにあるのでしょうか。

篠塚孝哉:
とにかく「簡単に操作できること」に徹底的にこだわっています。起業するにあたり、FacebookやLINE、メルカリなど、業界にイノベーションをもたらしたサービスを研究しました。するとこれらのサービスはすべて、今までのツールよりも使い方がシンプルだという共通項を見つけたのです。

そのことを踏まえて他社のサイトを見に行くと、手続きの動線の複雑さが目につきました。つまり、簡単に使えることを追求すれば、多くのカスタマーを集められると確信しましたね。

特に海外旅行の場合はさまざまな規約や法律があり、保険の申し込みや入国手続きなど、アナログ作業が多くあります。そこでホテルやフライトなど、すべての手続きをアプリ上で完結できるように工夫しました。

サービスの強みと毎月500人超の応募がある採用面について

ーー貴社のサービスの特徴について教えてください。

篠塚孝哉:
社内では「かおえあ」と呼び、「かんたん・おトク・えらべる・あんしん」の4つを軸にしています。ツアー検索やホテルなどの比較を簡単にできること、価格の手頃さや高いポイント還元率などのお得さはかなり重視しています。

その他、パスポート情報の入力をスマホから一瞬で自動でできる「パスポートスキャナ」機能や、予約日から2日間価格をキープできる「プライスキープ」など、海外旅行の予約をスマートにする様々なサービスを提供しています。

またキャンセル補償や、スタッフの24時間対応サポートなど、旅行代理店として安心安全な旅を提供できるように心がけています。このように簡単でお得に海外旅行を楽しめることから、カスタマーの約6割が29歳以下の方々であることも大きな特徴ですね。

もちろん低価格なツアー以外にも、高級ホテルの宿泊や、人気店でのディナーを楽しめるプレミアムプランも用意していますので、あらゆるカスタマー層に適したプランが充実していると言えるでしょう。

特筆すべきは、システムをオートメーション化している点です。たとえばツアープランの作成は通常2時間ほどかかりますが、弊社ではほぼ全自動でつくれるため10分程度で作成できます。これにより他社と比べて10〜20倍の生産性向上を実現しています。

そして、実は弊社の新たな第一歩として2025年より「国内宿・ホテルの予約サービス」がスタートしました。今日まで培ってきたデジタル化の技術や新しい旅行予約体験を通じて、より多様な旅の選択肢をカスタマーの皆様に提供していければと思っています。サービス全体の外国語対応強化も図り、グローバルでシームレスな体制を構築中です。

ーー採用面で重視しているポイントを教えてください。

篠塚孝哉:
「令和時代を代表する、‍‍‍デジタルトラベル‍エージェンシーを創る。」という大きなビジョンに賛同いただけることです。競合が多いこの業界でトップを達成するのは、非常に難易度が高いことだと思います。一方で、こうした高い目標を掲げているからこそ、社員の士気を高められているとも言えます。

また弊社では「LEARN NEW」「OWNERSHIP」「GO FAST」の3つのバリューを掲げています。つまり好奇心を持って学び続ける人、当事者意識が高い人、スピード感を持って働ける人ですね。

現在は月に500〜600人の応募がありますが、さらなる採用強化を進めています。特に事業企画のメンバーやエンジニア、そしてPdM(プロダクトマネージャー)やCFO(最高財務責任者)に適任の方を求めています。

さらなる市場開拓とサービスの向上を進め、アジアNo.1を目指す

ーー今後の展望についてお聞かせください。

篠塚孝哉:
日本人観光客向けの主要なホテルやツアーを、今後3年間でほぼすべてカバーすることを目指しています。現在は半数以上の航空会社と提携していますが、ホテルとの提携率に関しては全体の5〜10%に留まっているため、さらに開拓していきたいですね。

また、カスタマーの傾向に合わせておすすめのプランを提示するレコメンド機能を2、3年以内に実装したいと考えています。そのために、蓄積したデータをもとに分析や予測を行うマシンラーニング(機械学習)に注力しています。

そして弊社の最終的な目標は、アジアNo.1の旅行代理店になることです。今まさに海外旅行だけでなく、国内旅行への需要が高まっているという旅行市場の動向を捉え、新たに国内宿・ホテルの予約も始めたばかりです。より優れたカスタマーサポート体制の構築など、まだ残る多くの課題を解決し、旅行を手軽に楽しめるサービスの拡充に貢献していただける方をお待ちしています。

編集後記

企業への投資が一般的でない時代に6,000万円を調達した当時のことを「ただひたすら結果を出し続けただけです」とさらりと答えた篠塚社長。その後も数々の偉業と言える功績を話してくれたが、終始淡々と冷静に話す姿が印象的だった。株式会社令和トラベルは旅行をもっと手軽なものにし、人々が各国を気軽に行き来できる世界を実現していく。

篠塚孝哉/2007年、株式会社リクルートに入社。2011年、株式会社Loco Partnersを創業。2017年、KDDIグループにM&Aにて経営参画し、2020年にLoco Partnersの社長を退任。2021年に株式会社令和トラベルを創業。「あたらしい旅行を、デザインする。」をミッションに海外旅行代理業を展開。2022年、海外旅行予約アプリ「NEWT(ニュート)」をリリース。2024年、シリーズAラウンドにて、総額約48億円の資金調達を実施。累計調達額は約70.2億円を達成。