※本ページ内の情報は2024年7月時点のものです。

地震や台風などの自然災害が多い日本において、企業の防災に対する取り組みは必要不可欠となっている。2000年の創業以来、災害時の安否確認や鉄道の遅延情報など、人々の生活や企業活動に影響を及ぼす「危機管理情報」のパイオニアとして成長を続けているのが、株式会社レスキューナウだ。

防災関連サービスで、大企業をはじめとした500社を超える企業に採用されている同社の「選ばれる理由」とは。北海道庁勤務から都内のレスキューナウに転職し、社長に就任した朝倉一昌氏に、同社との出会いや転職の決め手、事業内容についてインタビューをおこなった。

必要な情報を必要な人に届けるために、官公庁から民間企業へ

ーーレスキューナウに入社するまでの経緯を教えてください。

朝倉一昌:
東京の大学を卒業した後は、故郷である北海道で働きたいと思い、北海道庁に就職しました。1年目に道路を管理する部署に配属され、道路のメンテナンスや除雪作業をおこなったことが、今の仕事につながるきっかけになったと思います。

北海道の除雪作業は、限りある財源で効率的に行わなければならず、降雪や風の状況によっては、除雪を一時見合わせて通行止めをすることも頻繁にありました。今では変わっていると思いますが、20年以上前の当時は、通行止めについての情報はファックスを使って現場の事務所から関係各所に連絡をしており、1件の通行止めの情報を全ての機関に連絡を終えるまでの通信に1時間程度要していたこともありました。

また、そうやって周知した通行規制の情報でも、高速道路や国道などと違って、道道(北海道所管の道路なので略して「道道」と言います)ではメディアで取り扱ってくれないことも多く、地域の交通網維持のために最小限に抑えようとしつつも行わなければならない通行規制情報が伝えられない状況を数多く経験し、「必要な情報が必要な人に届けられるようにしたい」という思いを強く抱くようになっていきました。

そんな時にふと書店で目にしたのが、創業したばかりのレスキューナウのインタビュー記事でした。各自治体や企業が個別に災害対応システムをつくるのではなく、共通のシステムを普段から利用しながら随時アップデートしていくという新しい発想に興味を持ち、会社に連絡を取って創業者にお会いしたことが最初の出会いです。

その後、北海道庁から白糠町に派遣されていた際に十勝沖地震が起こり、私は逃げ遅れている方がいないかどうか、リストを基に沿岸の高齢者宅を1軒1軒確認して回りました。防災無線なども流れていましたが良く聞き取れず、いつ津波が来るかも分からない状況で、情報がないことの怖さを改めて痛感しました。

そこで、北海道庁には官公庁として比較的早い段階で取り組んでいた「災害情報メール配信システム」を扱う部署があったため、異動希望を出しました。とはいえ北海道のみでおこなう情報配信では限界があり、必要な情報を必要な人に必要なタイミングで届けるために、北海道や行政といった枠組みを越えてより良い仕組みをサービスとして形にしたいと思い、2006年にレスキューナウへ転職したのです。

24時間365日有人体制で災害時のトータルサポートに徹する

ーー貴社の事業内容について教えてください。

朝倉一昌:
弊社は、リアルタイム危機管理情報の配信、危機管理サービスの提供、防災備蓄品の提供という主に3つの事業を展開しています。

私たちは、「危機」とは「予定していた行動が外的要因で阻害されてしまうこと」と定義しており、それを未然に防いだり影響を軽減したりすることのできる情報を「危機管理情報」としています。このような広義での危機管理をもとに、個人レベルでは鉄道の運行情報の配信や、企業向けには災害時の従業員の安否確認、被害情報の集約、防災のアドバイザリーなどのサービスもおこなっています。

また、企業でよく採用されているA4サイズの段ボール箱に入った防災用品がありますが、こちらを最初に考案したのは弊社です。こうした情報やモノを、個人・企業問わず提供することで、危機管理のための「あったら良いな」を実現させてきた会社です。

ーー他社と比較したときの強みは何ですか?

朝倉一昌:
まずは、企業向けの危機管理支援においては、多様なサービスによって、災害発生前から収束するまでをトータルカバーしていることです。これは強みでもあり弱点にもなり得るのですが、1つ1つのサービスを比べれば他社の方が優れている部分もあります。

ただ、レスキューナウを利用していただければ、災害への備えや、実際に災害が起こった際の安否確認、拠点の被害情報収集など、一気通貫で災害への対応を完結することが可能になるのです。

さらに、危機管理情報センターが24時間365日有人体制で稼働しており、常に情報収集や配信をおこなっていることが、弊社の最大の強みだと考えています。国内でこのレベルまでの体制を敷いて運営しているところはないと思います。

弊社ではCODE:GREEN・CODE:YELLOW・CODE:REDの3つのコード体制でセンターを運営しており、平時から急な災害時にも滞りなく情報収集・配信が行えることから、多くのお客様からご信頼をいただいています。

ーーこれまでのさまざまなサービスを集約させた「imatome(イマトメ)」を2023年にリリースされていますね。

朝倉一昌:
これまで安否確認や拠点の状況確認など、ユーザーニーズに応じて危機管理サービスをつくり提供していましたが、災害の始まりから終わりまでを一気通貫で支援し、企業の防災・BCP対応をスムーズに運用できる「imatome(イマトメ)」を開発しました。

防災・BCP対応において、安否確認や災害情報収集配信などの複数のサービスを使ったり、人海戦術でホワイトボードに状況を記録したりするやり方がよく見られますが、それだと「いつ、どこで、どうなっているのか」という情報がバラバラになってしまいがちで、今の自社を取り巻く状況を把握することが難しいのが現状です。

imatomeを使用することで、災害の発生をいち早く覚知し、安否や人的リソース、拠点などの事業リソースの状況を常に集約し可視化することができますので、BCP対応をスムーズにとり行うことができるようになると考えています。

「あったら良いな」を実現するため、とことんチャレンジする会社

ーー最後に、会社として大切にしている思いや文化をお聞かせください。

朝倉一昌:
弊社では、チャレンジ精神を大切にしています。鉄道の運行情報の配信や、地震など災害発生時の安否確認の自動実施、A4サイズのBOXに防災用品をパッケージングするなど、今では当たり前になっていることを生み出してきました。世の中に「あったら良いな」というニーズに応え、世の中になかったものを生み出し定着させてきた根本には、このチャレンジ精神があったからこそ実現したと思っています。

新たに入社した方でも、「やりたい」と思ったことには基本的に挑戦できる環境が整っている会社です。自分自身の考えをしっかりと持って、新しい防災や危機管理のあり方を切り開いていけるようなマインドを持った方と一緒に働ければ嬉しいです。

編集後記

「あったら良いなというものを世の中に提供して、役に立ったよとか、ありがとうと言われることが一番嬉しい」と語る朝倉氏。同氏の純粋な思いが、今では不可欠なサービスを発展させてきたのだろう。レスキューナウの活躍により、日本の、そして世界の防災の概念が変わっていくに違いない。

朝倉一昌/青山学院大学経営学部卒業後、北海道庁での勤務を経て、2006年株式会社レスキューナウに入社する。2010年取締役就任、2017年代表取締役社長就任、現在に至る。