※本ページ内の情報は2026年5月時点のものです。

キーコーヒー株式会社で広告宣伝や商品開発、経営企画などクリエイティブかつ戦略的な部門を40年以上歩んできた安藤昌也氏。現在は同社の取締役 専務執行役員を務めつつ、グループ会社であるhonu加藤珈琲店株式会社の代表取締役を兼任する。アラビカ種100%のスペシャルティコーヒーにこだわり、ECを中心としたD2Cモデルを展開するhonu加藤珈琲店。大手とD2Cベンチャーの双方を知る安藤氏が見据える、AI時代における「デジタル」戦略と「アナログ」な顧客対応の真髄に迫った。

独自の視点で歩んだ40年とM&Aから始まった新たな挑戦

ーーこれまでのキャリアについて教えていただけますでしょうか。

安藤昌也:
1984年にキーコーヒーに入社し、40年以上にわたり広告宣伝や商品開発、経営企画などに携わってきました。コーヒー会社に入社したとはいえ、当時はコーヒーの知識が皆無で、入社試験でジャマイカ産のコーヒーとして名高い「ブルーマウンテン」の産地を「イギリス」と答えたほどです。キーコーヒーには周囲とは多少異なる視点や発想、スタイルを持って仕事に向き合う私を受け入れてくれた懐の深い環境がありました。コーヒーは情緒的な要素が強い商材です。だからこそ、気持ちを込めて世界観を構築するやりがいを感じ、クリエイティブな仕事に深くのめり込みました。

ーーhonu加藤珈琲店の社長に就任された経緯をお聞かせください。

安藤昌也:
honu加藤珈琲店との関わりは、私が経営企画部長時代に手掛けたM&Aが契機です。「アラビカ種」という香味特性に優れた品種のコーヒー豆を100%使用した高品質なコーヒーを通販で手頃な価格でお届けする、当時のキーコーヒーにはない独自のビジネスモデルでした。その後、同社の監査役を経て、2023年に代表取締役に就任しました。

効率化の時代にあえて残す「アナログ」の顧客接点

ーー貴社ならではの強みはどのような点にありますか。

安藤昌也:
最大の強みは、EC事業が主軸でありながら、アナログな顧客接点を徹底して重んじている点です。お客様からの電話やメールには一人ひとり丁寧に対応することはもちろん、お問い合わせをいただいたお客様と真摯に向き合い、最終的に弊社のファンになっていただくよう努めています。これは容易ではありませんが、顧客との結びつき、つまりロイヤルティを高める最優先事項として取り組んでいるのです。デジタル化が加速する現代だからこそ、こうしたアナログの対応が他社にはない強固な価値を生みます。

ーー組織体制にはどのような特徴があるのでしょうか。

安藤昌也:
正社員の平均年齢は約30歳と非常に若く、少数精鋭のチームが製造から事務対応までローテーションを組んでマルチタスクで働いています。特定の業務に縛られず、事業の一連の流れを全員が網羅できる柔軟性が、盤石なチームワークを醸成しているのです。

「検索」から「回答」の時代へ 全社員マーケター化計画

ーー今後のビジネス環境の変化について、どのようにお考えですか。

安藤昌也:
近い将来、お客様が自ら情報を探す「検索」の時代から、AIが最適な選択肢を提示する「回答」の時代へよりシフトしていくでしょう。「どんなコーヒーがあるか」ではなく、「あなたに最適なコーヒーはこれです」とAIが推薦する世界です。すぐにでもそれが日常になるのではと考えています。だからこそ、デジタル空間でいかにAIからリコメンドされる存在になるかが、今後の至上命題となります。

ーーその変化を見据え、今後はどのような会社を目指しますか。

安藤昌也:
ビジネスは常にギャップがあるところに生まれます。たとえば、お客様が求める理想のコーヒー体験と、今の現実。その差をどう埋めるか。もしギャップがなければ新たにつくり出せばよい。これを特定の社員に依存せず実行するため、全社員が「マーケティングマインド」を持ち、自ら考え主張できるECマーケティングカンパニーへと組織を進化させています。デジタルとアナログの両面から理想の体験を提供し、お客様との絆を深めていく。そんな活気ある会社を目指します。

編集後記

効率性を追求しがちなEC事業において、顧客の声を一つひとつ拾い上げる姿勢には、老舗ブランドで培われた深い矜持を感じた。AIによる最適化が進む未来においても、人の手によって紡がれる「アナログな絆」こそが、他社には模倣できない最強の武器になるのだと確信させられる取材であった。

安藤昌也/honu加藤珈琲店株式会社 代表取締役社長とキーコーヒー株式会社の取締役 専務執行役員を兼務。1984年キーコーヒー株式会社入社。財務・経営企画・マーケティングを幅広く統括し、グループのブランド戦略を主導。加藤珈琲店のEC知見とキーコーヒーの長年にわたるノウハウを融合させ、データに基づいたマーケティング推進による収益基盤の強化を指揮している。