
「再生可能エネルギーを、フル活用する」というミッションを掲げ、企業の脱炭素化を支援する株式会社アスソラ。代表取締役の山崎智広氏は、日本銀行でのキャリアを経てスタートアップの世界へ飛び込んだ異色の経歴を持つ。再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)に頼らず、純粋な経済活動の中で再生可能エネルギー(再エネ)を普及させる「本番」の時代を見据え、同社は独自のビジネスモデルを展開している。さらなる事業拡大に向けて、新たなメンバーの採用も強化中だ。遊休地という「眠った資産」に新たな価値を与えながら、日本の再エネ市場を牽引する同社の戦略に迫る。
日本銀行からスタートアップへ 市場の力で環境問題の解決を目指す
ーーまずは、起業までのご経歴を教えてください。
山崎智広:
もともと大学時代に環境サークルに所属しており、環境問題に関心がありました。ただ、規制だけで問題を解決するのではなく、経済活動や市場の中に環境という要素を組み込み、自然と行動が広がっていくようなアプローチが必要だと考えていたのです。そこで、経済や市場を深く理解するために日本銀行へ入行し、約8年間、国債の制度設計などに携わりました。
ーーそこからなぜ、スタートアップや再エネの分野へシフトされたのですか。
山崎智広:
日銀在籍時に留学する機会があり、そこで多くの起業家と出会ったことが大きな転機です。それまでは大企業志向でしたが、GoogleやAmazonのように、何もないところから会社を立ち上げ、圧倒的なスピード感で世の中を変えていくスタートアップの力に強く惹かれました。自分も環境と経済の両立を事業として実現したいと考え、再エネベンチャーへ転職して新規事業開発を経験した後に、アスソラを起業しました。最初はシェアオフィスからのスタートで、何もないところから信用を積み重ねていくことには苦労しましたね。
補助金頼みは終わり 経済活動の中で再エネが選ばれる時代こそ「本番」

ーー改めて、貴社の主力事業について教えてください。
山崎智広:
大企業向けに「コーポレートPPA」という仕組みを提供しています。これは、企業専用の再エネ発電所を新たに開発し、長期にわたって電力を直接供給するモデルです。弊社の強みは、発電所をつくるための土地探しから、設計、行政との協議、そして電力の供給までを一貫して自社で手がけている点にあります。
ーーなぜ、その仕組みに注力されているのでしょうか。
山崎智広:
これまでの再エネ普及は、国が電気を高く買い取るFIT(固定価格買取制度)という政策によってつくり出された需要によって支えられてきました。しかし、これからは補助金があるからやるのではなく、企業が自らの経済的合理性や社会的責任に基づき、純粋な「需要」として再エネを選んでいく時代です。私としては、ここからが再エネ普及の「本番」だと思っています。だからこそ、企業が本当に求めている「新しい発電所をつくり、再エネを世の中に増やす」というニーズに直接応える事業を展開しているのです。
土地活用はネガティブじゃない 遊休地が新たな価値を生む
ーー発電所をつくるための土地は、どのように確保しているのでしょうか。
山崎智広:
私たちはまず、「ここなら事業ができそうだ」という土地を見つけるところから始めます。そして、土地のオーナー様に直接アプローチし、活用の提案を行います。大前提として、山の急傾斜面に設置したり森を大規模に伐採したりするような無理な開発は一切行いません。あくまで、十分に有効活用できていない場所で事業を行っています。
ーー太陽光発電の開発にはネガティブなイメージもありますが、実際はいかがですか。
山崎智広:
問題がある事例もあるので確かにそういったイメージを持たれることもありますが、実際にオーナー様とお話しすると、全く違う切実な声をお聞きします。たとえば、「先祖代々の農地を受け継いだが、家族の形も変わり、草が生い茂るばかりで管理ができない」といったケースが非常に多いのです。手放すに手放せず悩んでいたところに私たちが提案に行くと、「役に立つならぜひ何とかして使ってほしい」と喜ばれることが多々あります。私たちは、そうしたオーナー様に「土地の有効活用」という前向きな選択肢を提供できていると自負しています。
スピード感と裁量を持った働き方 さらなる飛躍へ
ーー貴社で働く魅力についてお聞かせください。
山崎智広:
弊社の開発メンバーは、全国各地に居住し、基本的には自宅でのリモートワークと、週の半分ほどの現地出張を組み合わせたハイブリッドな働き方をしています。東京のオフィスに毎日出社する必要はありません。こうした自由度の高い環境にありながら、土地の選定段階から関わった場所が発電所となり、コーポレートPPAを通じて企業の脱炭素化を支える電源になる。その一連のプロセスを担える点が、アスソラで働くことの大きな魅力です。ゼロからイチを生み出す手触り感と、少人数組織ならではのスピード感を両立させながら、社会インフラを形にしていくやりがいがあります。
ーー今後の展望をお話いただけますか。
山崎智広:
アスソラが目指すのは、脱炭素を特別な取り組みにしないことです。企業活動の中で、再生可能エネルギーが自然と選ばれ、使われ、増えていく。その状態を、コーポレートPPAを通じて当たり前にしていきたいと考えています。
その実現に向けて、私たちの取り組みや事業モデルを社会に広く届けるとともに、企業、土地オーナー、投資家、そしてこの事業を担うメンバーを含むステークホルダーの皆さまと連携し、脱炭素を具体的な成果として実装していきます。
編集後記
固定価格買取制度という強力な補助輪が外れつつある再エネ市場を「ここからが本番」と言い切る山崎氏の言葉には、日銀出身ならではの深い経済洞察と、起業家としての強い覚悟が滲んでいた。環境保全という理想を、ビジネスという現実の枠組みの中でいかにスケールさせるか。土地オーナーの悩みに寄り添いながら、大企業の脱炭素ニーズに直結させる同社のビジネスモデルは極めて合理的だ。少数精鋭で全国を舞台に圧倒的なスピード感で躍動するアスソラが、日本のエネルギー事情にどのような新しい風を吹き込むのか。その挑戦から目が離せない。

山崎智広/日本銀行にて経済動向の分析などを担当。2014年より、再エネベンチャーにて再生可能エネルギー発電の新規事業を開発。国内最大級のバイオマス発電事業、国内で初めてプロジェクトファイナンスによる資金調達を行った地熱事業などをプロジェクトマネジメント。この間、日本貿易振興機構(JETRO)のプログラムにて、インドの現地資本のコンサルティング会社にてインターンを経験。東京大学法学部卒業、スタンフォード大学ロースクール修了。